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4年ぶり「川渡り神幸祭」にキャスター参加 日本最大級の「神輿」きつさとすばらしさ体感

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福岡県で「5大祭り」の一つに数えられる、田川市の「川渡り神幸祭(じんこうさい)」。高さ10メートルもの大きな山笠が大挙して彦山川を渡っていく、伝統ある祭りです。山笠は、川を渡る御神輿のお供です。体当たりで神輿をかつぎ、祭りのきつさと素晴らしさを体感しました。(RKB『タダイマ!』宮脇憲一キャスター)


◆福岡のいわゆる「5大祭り」とは?
田川市の「川渡り神幸祭」。川を渡る祭りは、全国でも珍しいじゃないか、と。福岡では有名ですけど、実際に見たことはないです。イメージとしては、祭りに命をかけている、激しいイメージがあります。大丈夫でしょうか、私が行って……。福岡には季節ごとに勇壮なお祭りがたくさんありますが、祭りに参加したことは、実は私一度もありません。

(1)博多祇園山笠(福岡市、7月)
(2)小倉祇園太鼓(北九州市、7月)
(3)戸畑祇園大山笠(北九州市、7月)
(4)鬼夜(久留米市、12月)
(5)川渡り神幸祭(田川市、5月)

福岡県5大祭りの中で最も早く行われる田川市の「川渡り神幸祭」。コロナ禍で中止が続いていましたが、4年ぶりの開催となります。
参加することはかなり不安ですが、今までは外から伝えてきたので、中に入って「髄のところ」を体験したことがない。皆さんの思いは中に入らないと分からないと思うんです。5月20日に開催された、川渡り神幸祭。4年ぶりの祭りに集まった人は、過去最多の25万人。470年の伝統ある神事に、体当たりで挑んできました。


◆背が高い宮脇「足が伸ばせることはない」
祭りが開催される10日前。福岡県の北東部にある、田川市へ。全国有数の炭鉱の街は、日本の近代化を支えてきました。「月がー、出た出たー」の歌詞で知られる「炭坑節」発祥の地としても有名です。
川渡り神幸祭が行われるのが風治八幡宮です。470年ほど前に流行した疫病が早く終息するように祈願し、成就したお礼として始まった、と伝えられています。4年ぶりの祭り開催に、地元の人たちは――。

「鉦(かね)の音を聞くと、胸が騒ぐ」「みんなの気持ちが一つになる祭りだと思います」「それはもう、壮大です」「最高の祭りです。これがないと田川じゃない」

祭りのメイン会場となるのが、こちらの「彦山川」です。

みこしをかつぐ会理事 竹野州洋さん「待ちに待った、本当に長かった4年間。生まれてからずっとあるお祭り。人生の半分、18年間お神輿を担いできた。“第2の正月”のような、かけがえのないもの」
宮脇「どれくらいの重さが肩にかかるんですか?」
竹野「神輿の総重量が約2トン。僕は、肩にコブができています。宮脇さんは身長が高いので(181センチ)、荷重がかかると思いますよ。足が伸ばせることはないと思います」
宮脇「中腰? うわー! でも頑張ります…」


◆未来を担う子供たちも「初めてなんです」
夕方になると、街の至るところから、太鼓や鉦の音が聞こえ始めます。山笠のおはやしは、地元の子供たちが担当。祭りには欠かせない存在です。各町内で曲調が違うため、1か月以上前からほぼ毎日練習を重ねます。

井上太一君(中学1年生)「4年ぶりなので、神幸祭のこと、あまり覚えていないんですよ。今年、山笠の中に入るのが中学2年生と1年生、小学6年生なんですけど、全員初めて」
「練習もなかなかできなかったけど、練習したらうまくなる。自分が祭りのためにうまくなれると考えると、うれしい」
下魚町 井上耕佑さん「大人と違って吸収が早くて、みるみる成長しとるとですよ。親としては応援するしかない。何とかやってくれるんじゃないかと」


◆4年ぶりの祭り当日は好天に恵まれ
宮脇「川渡り神幸祭、当日を迎えました。私も、こういう衣装を着させていただいて、身も心も引き締まります」
みこしをかつぐ会理事 竹野州洋さん「やっと来たな、という感じです。すごく興奮しています」

神輿に携わるのは総勢100人。地元の人たちだけではなく、他の地域からの一般の参加者もいます。

福岡市在住・初参加「初めて参加です。友人が神輿を担いでいると4年前から聞いていたので、身体作りをしっかりやってきた」
田川市在住・3回目「すごいきついんですけど、終わった後は達成感がありますね」
福智町在住・6回目「北九州市で、デスクワークの仕事を。運動を全くしないので。足がつらないように頑張ります」


◆神輿をかつぐ宮脇キャスター
神輿は日本最大級の大きさです。改修を行いながら100年受け継がれてきました。神輿のお供を務めるのが「幟(のぼり)山笠」。11基が各町内から風治八幡宮の元に集まり、ここでしかできない最後の準備がはじまります。稲穂を模した「バレン」を、山笠の上に垂直に立てるのです。ロープで引いたり、長い竹でバランスを取りながらの慎重な作業。周りの見物客たちも思わず声が出ます。

「行け行け行けー、上がれ上がれ-」

高さは、電柱より高い約10メートル。バレンが立ち上がるたびに、見物客から大きな声援が送られます。

「声出していくぞー」「よっしゃー!」「わっしょい!」

神輿が境内を3周回っただけで、肩はパンパン。気合いがすごい。やるしかない、と覚悟を決めました。予定されているルートは――。
風治八幡宮の階段を降り、11の山笠前を往復。田川伊田駅の前を通り、彦山川へ向かいます。メイン会場の川の中で、1時間半ほど駆け回り、向こう岸へ。そして、神様の旅の目的地の「御旅所」に到着。総距離は約2.5キロです。

「わっしょい!」

階段を降りた広場でも3周回ります。その後300mに渡って並んでいる11の山笠の横を往復。神輿を、山笠が鉦の音で迎えています。

宮脇「無理かも……想像を遙かに超えてきました」
福岡市在住・初参加の男性「みんな魂で持っているので、きょう一日、最後までやりきりましょう」

神輿を先頭に幟山笠も出発。彦山川を目指します。豪快に山笠を激しく揺らす「がぶり」。開催を待ちわびた男たちの4年分の気持ちが入ります。今年は露店も復活し、人出は過去最多の25万人。大勢の人でにぎわいました。


◆祭りを待ち望んでいた父に代わって
祭りが中止されていた4年間で大きな出来事があった人もいます。小峠貴彬さん(26)と弟の脩貴(22)さんです。

「ずっと父は(神幸祭に)出たい、出たいと言っていて、そのまま他界しちゃったので…。コロナが始まって担げず…父が見ていると思うので、喜んでもらえる神輿にしたいですね」

御神輿は進みます。

「めちゃきついです。(父のように)あの年までできる自信がないです」

新しい命も誕生していました。

汐音ちゃん(3)を抱く東條学さん「コロナが流行った年にできた子供で
やっと祭りを見られたんですよ。無事に開催できて本当にうれしいですよ」


◆メインの「川渡り」会場に……宮脇キャスターは限界に
川渡り神幸祭のメイン会場、彦山川に到着。すでに私は疲労困ぱいです。

宮脇「もう、足がパンパン。それより、(足袋を履いていても)足の裏の皮がむけているんです。重さを一カ所にかけているから」

いよいよ彦山川へ入ります。上流から流れてくる川の水は、かなり冷たかったです。一年の汚れを払い、新しい御神威をいただくための、祭りのみそぎの一つが川の中で水をかけるという現在の形になったと伝わっています。

宮脇「すごい気持ちいい! 生き返った!」

しかし…。

宮脇「重さが全然違う…。足が全然進まないし、川に入った瞬間に別世界」

巨大な幟山笠も続々と彦山川に入り、身を清めます。

山笠の上にあるバレンは5つの色で構成、五穀豊穣の願いが込められています。

福智町在住・6回目「もうヘロヘロです。肩が痛いです」
福岡市在住・初参加「最初はみんな知らない人なんですけど、一つのきずなが、結束力ができた。心が気持ちいい」


◆最大の見せ場 山笠11基の「がぶり」競演
11の山笠が川に集結。最大の見せ場・山笠競演会が始まりました。一斉に激しく山笠を揺らす、がぶりの競演会です。

宮脇「がぶりがすごい。見上げる角度がすごい。バレンがゆれて、圧巻です」

幟山笠が一直線に並ぶ、川渡り神幸祭一番の見せ場。曳き子たちも力を尽くしてかじ棒を上下に何度も何度もがぶります。神様に喜んでいただくため、激しく水飛沫をあげ続けます。神輿の担ぎ手も力を振り絞って、向こう岸の御旅所を目指します。


◆川を渡った神は「御旅所」に
神様の旅の終着点、御旅所「武徳殿」に神輿が奉納されます。

宮脇「ありとあらゆるものを、すべて出し切ってやっているということが分かりました。仲間でずっと声をかけ合いながら、3時間という行程を一緒に過ごせ、幸せでした。私、無事役目を果たすことができました?」
みこしをかつぐ会理事 竹野州洋さん「はい、とても力になりました。きつそうだなと思いつつ……すみません」
宮脇「心と体はきついんですけど、頑張る力をもらいました。470年以上続いていて、伝統を継承していく、どういう思いですか?」
みこしをかつぐ会理事 竹野州洋さん「4年ぶりなんですが、今回が新たな幕開けだと思います。これからも盛り上げていけたら」

祭りを未来へ受け継ぐ地元の中学生は――。

井上太一君(中学1年生)「大人になっても、おじいちゃんになっても、続けていきたいと思います。470年ではなく、1000年とか、長くなるようにしていきたい」

肩を出してみると真っ赤に腫れていました。「こんなに肩が赤くなる人はそんなにいないですよ。相当がんばってもらったんですね」と言われたのが、今日何よりも「頑張ってよかったな」と思った瞬間でした。もう、ほめられてよかった……。

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