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鳥山明ワールドが全開!アニメ『SAND LAND』 原作は“圧倒的完成度を誇る名作”との評

『ドラゴンボール』『Dr.スランプ』などで知られる漫画家・鳥山明さん原作のアニメ映画『SAND LAND』が話題だ。ジャーナリストとして硬派なドキュメンタリーを制作する一方、歴史やサブカルチャーにも造詣が深いRKB毎日放送の神戸金史解説委員長が、コメンテーターを務めるRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』でこの映画の魅力を熱く語った。

原作は“圧倒的完成度を誇る名作”


漫画家の鳥山明さん(68)と言えば。『ドラゴンボール』『Dr.スランプ』などで知られていますが、鳥山作品の中で“圧倒的完成度を誇る名作”と称される漫画が『SAND LAND(サンドランド)』なのだそうです。

私は鳥山さんの絵柄が好きなんですよね。と言っても、コミックをいっぱい本棚に並べているほどの熱烈なファンというわけではありません。この原作漫画も知りませんでした。ただ絵を見ると「あっ!」と反応して、この映画『SAND LAND』も公開されてすぐに観てきました。

物語の舞台は魔物と人間が共存する、摩訶不思議な砂の世界。水源である川が枯れてしまった砂漠です。そこに、ワルだけどピュアな全身ピンクの悪魔の王子「ベルゼブブ」が、人間の保安官・おっさんの「ラオ」と組んで、砂漠のどこかにある“幻の泉”を探す旅に出る、冒険ファンタジーです。まさに「鳥山さんの世界だな」という感じ。監督は横嶋俊久さんで、106分です。
 

(ベルゼブブ)
 

(ラオ)

鳥山さん自身、『SAND LAND』について「魔物と老人とミリタリーなど僕好みの渋いネタを詰め込んだ、個人的にもっとも大好きな漫画作品」と言っています。インターネットでも予告編が公開されています。

予告編(90秒)から
「オレは悪魔の王子、ベルゼブブ。勘違いしてもらっちゃ困るぜ、ワルなのは確かなんだからな。例えば、この間は夜ふかしした上に、歯も磨かずに寝てやった。どうだ、かなりのワルだろう?!」

こんな感じで、テンポよく楽しいストーリーが続いていきます。主題歌は、22歳のimase(イマセ)が歌う「ユートピア」です。

人間ぽいメカ 人なつこいキャラクター

ストーリーについてはあまり触れない方がいいと思うんですが、個性的でユーモアあふれるキャラクターがかわいくて人懐っこいんです。とくに僕が好きなのはメカ。戦車や自動車が丸っこくて、動きもなんとなく人間っぽいんです。

まさに「鳥山ワールド全開」という感じで、すっかり鳥山さんの世界に浸ることができました。キャラクターは鳥山さん独特の顔立ちで、特に、国王軍のアレ将軍は昔からの鳥山キャラの顔で、観ているだけで楽しくなってしまいます。
 

(アレ)

私が通っていた高校では、中学生たちが入学試験を受けに来る時、模造紙に「頑張れ」と応援メッセージを書いて受験会場に貼るという習慣がありました。私も絵心はないのですが、当時連載中の『ドラゴンボール』から、「かめはめ波」を放つ亀仙人と、セクシーポーズを取ったヒロインのブルマを見よう見まねで描いて「祈合格」と書いたことがあります。それくらい、鳥山さんの絵は大好きです。

原作コミックも買ってみた

映画を観てすぐ、原作コミックを買いました。映画のストーリーは、ほぼ原作に忠実でした。監督が鳥山さんの原作をリスペクトしていることがよくわかる感じでした。

原作は2000年に「週刊少年ジャンプ」で短期集中連載。11月に初版発行されました。私が買った本は2023年7月発行の23版。ロングセラーで、今回は映画に合わせてまた増刷されているんだろうと思います。初めて読みましたが、「これをよく映画にしてくれたなあ」と思いました。映画のTシャツも買ったので、きょうは着てきました。
 

物語の世界を決める「設定」

パンフレットには、国王軍の「軍用車」「飛行タンク船」などメカの設定がいっぱい載っています。104号戦車の主砲は若干短く、その分威力も低いが、砲弾は装甲に穴を開けるための徹甲弾で、弾自体は爆発しない。外をのぞくスコープは、操縦席上部にある開閉レバーを操作すると上に伸び、モニター近くのパネルで向きを変えられる――。

作品の中でほんの少しの時間しか出ないものでも、武器や乗り物のそういう細かな設定が、映画や漫画の「世界」を決めていくのだろうと思うんです。

パンフレットを見ると、一瞬しか出てこない魔物にも全部名前がついていて、どんな個性なのか書いてある。こういったことが、クリエートする人たちにとっては楽しいのでしょう。その成果が“編み物”のように総合されて、アニメ映画になっていっているんじゃないかなと思います。

映画の公式ホームページには、「キャラ、メカ、世界観、ストーリーが凝縮された『鳥山先生色』がとても強い作品と評されることをどう思いますか?」という質問があり、鳥山さんが「たしかにそうかもしれませんね。読者のことももっと考えなきゃいけないのに、好みを優先してしまった気がします。プロ失格かもしれません」と答えています。

だからこそ「鳥山ワールド全開」となっていて、ファンにとってはたまらないものになっているのだと思います。原作の漫画『SAND LAND』は全1巻しかないのに、凝縮されている鳥山さんの物語が106分の映画になった。漫画の世界が、ここまでアニメで展開できていることにうれしさを覚えました。

作品を生み出すということ

私はずっと、取材相手がいる「ニュース」の世界に生きてきました。誰かを採り上げる仕事です。その延長線上にドキュメンタリーがあります。全く一から創作するわけではありません。私は絵が描けないし、きれいな字も書けないし、楽器が使いこなせないし、ストーリーを紡ぐこともできません。

一方、ゼロから頭の中で考えた設定を組み立てていくのがコミックやアニメです。クリエーターと言われる人たちは、すごいなあと思います。

公式ホームページには、「23年経って映画化されることをどう思いますか?」という質問が出ています。鳥山さんは「これを楽しいって言ってくれる人って、まさに僕にとっては、わかってる神ファン! って感じじゃないでしょうか」と書いていました。

僕は全然「神ファン」じゃないんですが、久しぶりに鳥山ワールドに全身包まれた感じで、とても心地よく楽しめました。子供を連れて行っても喜ぶだろうと思います。福岡県内は19の映画館で、佐賀県内は2館で上映しています。

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この記事を書いたひと

神戸金史

報道局解説委員長

1967年、群馬県生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。東京報道部時代に「やまゆり園」障害者殺傷事件を取材してラジオドキュメンタリー『SCRATCH 差別と平成』やテレビ『イントレランスの時代』を制作した。現在、報道局で解説委員長。