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五島発!くんせいの挑戦

2017年創業の「五島くんせい工房」。創業したのは林利則(としのり)さん(68)と息子の洋睦(ひろのぶ)さん(39)の親子。五島の魚種の豊富さと新鮮さを活かし、仕上げに五島特産の椿油を使用するなど、五島ならでは「くんせい」商品を製造し、現在では五島の新たな特産品として観光客や都市部の消費者にも好評を得ている。


元々、五島市役所の水産課に勤めていた利則さんは、退職後、地元の漁業を応援する仕事ができないかと考えた。そこで趣味の「くんせい」を活かすことを思いつく。創業にあたって利則さんは、息子の洋睦さんに声をかけた。洋睦さんも「五島の漁業の応援ができるのなら」と承諾した。


だが五島の魚の良さを活かそうと、その日に獲れた鮮魚をくんせいにするという方針を取ったため、最初のうちはどんな魚が入るかもわからず試行錯誤の連続だった。それでなくとも「身が柔らかく水分の多い鮮魚はくんせいが難しい」とされ、本格的に取り組んでいる業者も少ない。

 

創業当初は失敗の連続で「とても苦くて食えたものではなかった」と洋睦さんは笑う。年々厳しくなる漁業を少しでも応援をするため、そして島外に五島をアピールするため、林さん親子の挑戦は続く。

企業名:合同会社 五島くんせい工房
住 所:〒853-0013 長崎県五島市上大津町940-9
電 話:0959-72-1826 
ホームページ:https://www.goto-kunsei.com/?srsltid=AfmBOoqnjWFEUfWy81n5f3qfRZfwRdrtgUUv98zV4KNYgSTro-UK4qPw
 

取材後記

正直言って、最近まで私自身、水産加工品としてのくん製品には馴染みが無かった。本編内でも触れているように、水産加工品としてはとても珍しいのが「くん製品」だからそれも仕方ない。水産王国の長崎県でも、ほとんど目にしないものなのだ。

 

「五島くんせい」の味は素晴らしい。試食すれば誰もがおいしいと言う。しかし「くん製」といえば酒のおつまみというイメージが強く、その意味では、味は良くとも、このままでは、なかなか一般家庭には広がらないのではないかという思いも持った。

 

すると取材を進める中で「料理に使ってもらえるものを作りたい」という洋睦さんの気持ちが、とても切実なものであることがわかってきた。そしてそれこそが「五島くんせい工房」の商品が世界に向かってブレイクするポイントではないかと思えてきた。

 

そこで最初の構想では新商品として開発中の「くん製塩、くん製醤油、五島くんせい」のセットだけを「世界一への鍵」として取り上げるつもりだったが、急遽路線変更し、「熟成生ハム」もそこに加えることにした。熟成生ハムは、くん製の工程の中で作られる商品で、「五島くんせい」のいわば兄弟のような存在だ。

 

素材の魚は「五島くんせい」と同じく、父の利則さんが魚市場で直接仕入れたもの。それを、くん製工程の中で、最後まで煙で燻さずに、生の食感を残している段階でくん製機から取り出すと生ハムになる。(「五島くんせい」とは違い、くん製機に入れる前に魚をブロックのまま熟成させるという工程も加わるが…)

 

たしかに、この商品ならばくん製の個性が強すぎず、様々な料理の素材として活用できそうだった。そこで五島の若手料理人の貞方店長に「お店で出せるものかどうか」、商品の評価をしてもらった。番組を見てもらえばわかるが、その流れで貞方店長は見事に一品ものの料理として「真鯛の生ハム」をアレンジしてくれた。


その創作料理を目の前にした時の洋睦さんの嬉しそうな笑顔は今も忘れられない。どこまで林さん親子の強い思いが描けたか心もとなくはあるが、この番組を機に、もっともっと「五島くんせい」と「熟成生ハム」が全国に広がっていくことを願っている。
 

(NBC長崎放送/柴山 公海)

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