昭和通りから親不孝通りに入ってすぐ舞鶴側に曲がった細い路地に築40、50年の大きなビンテージマンションがある。正面から見ると贅沢に植えられた植栽とエントランスしか見えないが、右奥に向かって建っているマンションの1階には5、6軒の飲食店やギャラリーが入っている。特に奥から2番目の「蕎麦切 はたゑ」と一番奥にあった「仏蘭西家庭料理 花むら」はかなりの老舗だったが、「花むら」は昨年末で55年ほどの歴史に幕を下ろし、その後に何が入るのか気になっていた人も多いはずだ。
そんな知る人ぞ知る物件に新たな息を吹き込んだのは中華料理店「Sibirelo FUKUOKA―中華翠樓―」だ。オープンしたのは5月25日でランチもやっている。
オーナーは国内はもとより海外にも中華料理店を出店している企業で現場や店舗開発などに長く携わり、そのうち9年間は台湾の現地法人で代表を務めていた山本誠治さん(写真左)。独立するにあたり台湾での立ち上げも考えたそうだが、福岡に帰省したとき、福岡が国際的にもグルメの街というブランドができていることを認識し、まずは福岡で立ち上げて、ここで土台を固めてから海外に展開しようと考えたという。驚いたのは2年後のオープンを見越して台湾の物件も押さえているらしく、漠然とした夢や目標ではない明確なビジネスビジョンをもっていることに驚かされた。
一方、今回料理を担当している村島友輔さんも、同じ会社で10年以上経験を積み台湾の店にも4年ほど在籍したが、山本さんの店舗を一緒にやるにあたり料理の技術やアイデアの幅を広げるために帰国して、フレンチ、イタリアン、さらには鮨店でも勉強させてもらったそうだ。
今回の物件は、マンションの入口から右手に植栽を臨みながら30mくらい歩いたところに店舗の入口があるという点もマンションのテナントらしくなく、まるで路地裏にある一軒家のようだ。店内に入ると以前の「花むら」の印象を残した落ち着いた内装で、大きく取られた窓からもきれいに手入れされた木々が街の喧騒を忘れさせてくれる。
店名の「sibirelo」は、スタッフもお客もシビレるように余韻の残る時間や空間を共有したいという意味を込めているそうで、決して辛い料理をテーマにしているわけではない。現在はメニューをみると四川料理が目につくが、あくまでも日本人の口に合う中華料理を、調理法や食材の組み合わせに工夫しながら提供していくということで、特に地方にはこだわっていない。
この日は夜にお邪魔し、まず最初は「前菜の盛り合わせ」(1,450円)をお願いした。クラゲの酢の物はキャノンボールクラゲを使っていてボリボリとした強い歯ごたえが楽しい。また、キュウリではなく細切りの大根を合わせさっぱりと食べられる棒々鶏、一般的な中華山椒とティムール山椒という2種の山椒を使ったポテトとマヨネーズの和えものなど、いずれも細部にオリジナルなアレンジがなされている。
2品目は「雲白肉(ウンパイロー)」(1,350円)。かなり薄く切られた豚肉は低温調理によりしっとりとしており、スパイスを効かせた自家製の甜醤油をかけた酒が進む一品だ。
その次は野菜もたっぷり使用した温菜の「宮保鶏丁(ゴンパオジーディン)」(1,650円)だ。山椒や唐辛子の辛みを効かせているが、食べたときに少し甘みも感じられる。
ホルモン(シマ腸)を入れているのが特徴的な「麻婆豆腐」(1,550円)は、ネギを大きくカットしていることもあって、一般的な麻婆豆腐よりかなり食感の変化がおもしろいうえに、調味料とは違うホルモンから出る甘みやコクがたまらない。
ランチは自慢の麻婆豆腐定食(1,700円)や黒酢酢豚定食(1,700円)や担々麺(単品1,200円)といった四川料理が多いが、この日は天津飯といった日本的な中華料理もオンメニューしていた。
町中華と高級中華の間に位置するお酒代込みで8,000~9,000円くらいの中華ダイニングという業態は、福岡にはあまり多くないので、ちょっとした大人のデートや会食に重宝しそう。7月からは6,600円から要予約のコース料理もスタートしたそうなのでこちらも楽しみだ。
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