先月、福岡県や佐賀県の各地でまっすぐな虹が出現しました。虹なのかどうなのか。不思議に思った方も多いかもしれません。視聴者からも「これはなんですか⁉」とたくさんの写真が届きました。
このまっすぐな虹の正体は、「環水平アーク」という光学現象。太陽の下側に、水平線とほぼ平行に現れる光の帯で、太陽の高度が高いときでなければ現れません。そのため、観測チャンスが晩春から夏の正午前後に限られる珍しい現象です。
では、よく見る「虹」との違いはなんなのでしょうか。虹は水滴に太陽の光が屈折・反射して、太陽と反対の方向にできます。
一方、環水平アークは氷の粒で光が屈折し、太陽と同じ方向に現れます。氷の粒は気温の低い空高い所に浮かんでいて、うす雲(巻層雲)や、すじ雲(巻雲)を作っています。
これらの雲は、前線や低気圧が近づく際に現れやすいため、環水平アークは天気下り坂のサインとも言えるのです。雨上がりに見られる通常の虹とは逆ですね。実際、先月環水平アークが見られた翌日は雨が降りました。
夏にかけて観測チャンスのある環水平アーク。お昼ごろにうす雲やすじ雲が出た際は、空を観察してみてはいかがでしょうか。なお、観測できたら、翌日は雨具をお忘れなく。
横尾槙哉=RKB気象予報士・防災士
毎日新聞福岡版 2025年5月10日掲載
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