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天然素材「い草」文化を後世に~創業170年の畳店が端材をアップサイクル 福岡

ニュース
マンション暮らしなどで和室がない世帯が増え、畳の需要は減る傾向にあります。こうした中、畳表やござの製造を手がける福岡県筑後市の老舗企業が、暮らしに「い草」がある文化を後世に残そうと、製造の過程で余る端材を活用した独自の商品を開発しました。
福岡県筑後市の「山万」。畳表や、色鮮やかな花ござなど、い草を使った商品の製造、卸などを手がけています。創業約170年の老舗企業が、いま直面する深刻な問題が「畳離れ」です。

山万 下川詳男顧問「需要は減ってきているんですよ。お座敷(和室)が今の家はないですから、それに対応できるように自分達も、今のライフスタイルにあったニーズにあったものを、工夫しながら変えていっているというのが現状です」
農林水産省の調査によると、畳表の生産は減少傾向が続き、2005年の782万枚に対し、去年は195万枚とほぼ4分の1に落ち込んでいます。
こうした環境の変化に対応するため、山万では去年、若手の社員3人が新しい自社ブランド「FURTE.U(フレッテ)」をスタートさせました。新ブランドのテーマは「未来にもっていけるもの」。土に帰る天然素材で、自然にも人にも優しい「い草」を使って、消費者のニーズに合った身近な商品の開発に挑戦しています。
最初に取り組んだのは、製造の過程でどうしても余ってしまう端材の活用でした。
山万 森田江里加管理本部長「廃棄予定のい草がありましたので、それを使って何かできないかとまず考えた時に、い草の消臭効果とか調湿効果とかそういった部分を考えて、使いやすい靴の消臭剤を考えました」

天然の靴専用消臭剤は、その名も「KUTSU KUSAITTE」。製造には、い草を扱って55年のベテラン職人も携わります。

ベテラン職人「これまでは処分していたんです。生き残るにはいろいろ開発をしながらという感じで、研究の積み重ねをしながら考えているんですよ」
細かく切った「い草」を乾燥させて、においや湿気を通す袋に入れると完成です。発売を前に、商品を地元の女性たちに試してもらい、座談会で出た意見も取り入れました。

座談会に出席した人「もらった時に香りがいいなと思って、癒やされました」「本来ならば捨てられてあったんですよね、それを消臭剤として使ってあるというのは、すごくいい取り組みだと思います」
商品の包装材も環境に配慮し、プラスチックではなく紙にしました。

山万 森田江里加管理本部長「い草を使っているところ、農家さんも減っていますし、未来にもっていけるものというコンセプトをもとに、まずい草を知ってほしいということと、い草を使ってほしい気持ちで作っています」
先週末に開かれた地元のイベントで、1年かけて開発した靴の消臭材の販売がついに始まりました。

接客の様子「捨てるものを、うまくやって考えていこうとしている」

訪れた人には、捨てられるはずだった端材を活用していることや、「い草」の魅力を伝えます。

購入した人「いいですよね、無駄がなくて」「いいことだと思いますよ、捨てるのはもったいない。今まで備長炭で消臭していたけど変わっているところがいいなと思って」
山万 森田江里加管理本部長「結構反応があってよかったです、い草のことをちょっと知ってもらえたなと思って、とても嬉しいです。社会とか環境を良くするような取り組みとフレッテ(自社ブランド)のコンセプトを大事にして、皆さんに手に取っていただけるような商品を考えていきたいと思っています」

新しいブランドでは今後も、い草とオーガニックコットンを組み合わせたベビーカーシートやマットなど、天然素材にこだわった商品を開発し、暮らしの中に「い草」がある文化を後世に残すことを目指します。

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