「夢はパリコレ」71歳の竹アート職人 不慮の事故で左目の視力を失った後に奮起

71歳の男性が竹を使って、滑らかな曲線が美しいアート作品を制作しています。男性は、50歳のときに不慮の事故で左目の視力を失いましたが、佐賀県多久市で制作を続けていて、国の内外で注目されています。

美しい曲線の竹アート

美しい曲線で形作られた、仲睦まじい夫婦鶴。リングのようなデザインのこの作品には、つなぎ目が一切ありません。実はすべての作品が、それぞれ1本の竹から作られています。

作品を見た人「竹一本でね、すごいですよね」

田辺良輝さん71歳

制作したのは、佐賀県多久市に住む田辺良輝さん71歳です。

田辺良輝さん「竹を見て作品をどんなふうに作るかを切る前に考えます。竹も生きもんだからですね、無駄にはしたくないからですね」

大まかなデザイン画は作るものの、素材の竹に下書きはしません。思い描いた形になるよう、切っていきます。

左目の視力を失う

28歳で板金塗装の会社を設立した田辺さん。当時は、依頼者の希望通りの色を出すのが得意でした。しかし、50歳のときに不慮の事故に遭い、左目の視力を失ってしまいました。

田辺良輝さん「左目を失って、もうこれは無理ばいと。色合いが合わんとですよね、車の繊細な色だから。お客さんに失礼で、なんかだましだまししよるような感じで」

きっかけはバーベキュー

竹の作品に取り組むようになったきっかけは、そのころ参加した行事でのある発見でした。

田辺良輝さん「竹炭を作って、その炭のできたのでバーベキューしようと、たまたま炭を見たら変わっていると思って、それをサンダーで磨いたら竹の色がきれいで、筋もきれいに入っとるし、こんなに竹はなるんだって」

ふんわり広がったドレスも、孫の姿をイメージしたというこの作品も、元々は1本の竹。一般的な竹細工の概念からは、かけ離れたものばかりです。

田辺良輝さん「すればするほど、どんどん竹にはまって、楽しくてワクワクして」

竹アートの工程

作品の魅力になっている美しい曲線を、どうやって作り出しているのでしょうか。工程の一部を見せてもらいました。

まずは、竹を炭にならない程度の熱でじっくり温め柔らかくします。その後、竹を曲げる工程にはいくつか方法があるそうですが、この作品の場合、何度も手で曲げて形を作っていきます。目指すのは、どの角度から見ても美しい作品です。

田辺良輝さん「自分のイメージに形を整えていく、なかなか竹は動いてくれんが、割れるときは割れます」

竹との「会話」「格闘」

真っ直ぐ伸びる性質がある竹は、曲げても強い復元力を持っています。そのため、形を作ったら固定して一年間乾燥させ、戻った場合はまた熱を加えて曲げ、さらに1年間、形を固定する作業を繰り返します。

田辺良輝さん「真っ直ぐのものを熱を加えて曲げるので、竹も必死でしょうね。会話じゃないけど、竹と格闘ですよ」

安定するまでには、最低でも2年から3年かかるそうです。

田辺良輝さん「がむしゃらに削りまくるじゃなくて、いいところ残したい」

板金塗装の経験をいかす

形が完成したら、作りたいものに応じて素材の模様を生かしながら、磨き加減を調整します。最後は仕上げの色づけです。いろいろ試した結果、使っているのは雨や高温に耐えうる自動車用の塗料。車の整備をしていた当時の技術や知恵がいかされています。

田辺良輝さん「車の仕事の延長線のような感じで、50年、100年残るようにしてやらんと竹もかわいそうですから」

インターネット販売も

何年もかけて完成した作品は、九州各地の飲食店などに売れて、店内を華やかに彩っています。

「旬風」岡本和夫オーナー「インパクトが強いんで、雰囲気は良くなりますね。他にない作品なので」

田辺さんの大きな夢

今年4月から、SNSでの情報発信やインターネット販売を始めたところ、海外からのアクセスも相次いでいます。視力を失って挫折した後に、もう一度ものづくりの楽しさを教えてくれた竹。制作に没頭する田辺さんには、叶えたい大きな夢があります。

田辺良輝さん「竹でドレスを作って、できるならパリに行ってファッションショーができたら、パリコレですね。まだまだやりたいです」

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