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「死にたい」の裏には「助けて」が… 増える子供たちの自殺“声なき叫び”に気づけるか

9月10日~16日は、国の「自殺予防週間」です。新型コロナの感染拡大は、子供たちの生活リズムにも影響を与えています。今、子供たちは何に悩んでいるのか。心の治療を続ける、福岡県久留米市の精神科病院を取材しました。

◆友人関係がうまくいかず孤立し、自傷行為繰り返す

のぞえの丘病院 堀川直希院長「何かあったの?」
中学2年「今日は、嫌な夢見た」
堀川院長「どんな夢だったか、お話しできる?」
中学2年「学校に行って教室に入ったら、悪口言われる夢」

福岡県久留米市にある「のぞえの丘病院」。県内で初めて「児童思春期病棟」を持つ精神科病院として3年前に開院しました。診察を受けているのは、この病院に入院する中学2年の女子生徒です。友人との関係がうまくいかず、周りから孤立し自傷行為を繰り返していました。

中学2年女子生徒「成長してるって自分は感じるのに、どうしても頭の中で『自傷(行為)したら楽になるのに』とか考えちゃうから、不安になる」
堀川直希院長「前のがささやくんだろうな……前ずっと頼ってたりとか、傷つけることでなんとかギリギリ保ったりしてるところもあったもんね」

◆「児童思春期病棟」に約60人が入院

不安を抱える少女の話に優しく耳を傾けるのは、堀川直希院長です。

堀川院長「何が本人にとっての苦しみだったのかとか、家族面談を繰り返して、こういう時どうすればいいか、家族からの不安も出してもらって、本人と一緒に家族面談の中で介入していく」

「のぞえの丘病院」には現在、20歳未満の男女約60人が入院しています。
堀川院長「さっき、『誰も頼れる人がいなかった』って言ってたじゃない? どうやってあなたの場合は乗り越えて来たの?」

中学3年生「ダメだけど、オーバードーズ(薬物過剰摂取)とか、自傷行為とかして」

堀川院長「自傷行為したり、たくさん薬飲むことは、どんな意味があったの?」
中学3年生「逃げ道」

 

◆未成年の自殺増加にコロナ禍が影響か

国の統計によりますと、福岡県内で自殺した人は1998年のピーク時には1369人に上りました。その後しばらく減少傾向が続いていましたが、2020年から再び増加。2021年は39人の未成年者が自ら命を絶っていて、過去5年間で最も多くなっています。
堀川院長によると、新型コロナの影響で子供たちの生活環境が変わったことも影響していると言います。

堀川院長「コロナで、いろんなものが分断された。関わりが少なくなったり、さらにステイホームということになって、家に閉じこもったり。家が安心できる場所ならいいんだけども、安心できない場所である子どもたちも、たくさんいるんですよね。そうするとなおさら追い詰められちゃうなんてところもあるんですね」

◆新学期スタートは、子供たちの不安定さが増す

新学期が始まった今の時期は、子供たちの心も不安定です。9月から入院している男子中学生は、夏休み中に新型コロナに感染したため、学校に行くことができなくなったといいます。

堀川院長「その子は1学期から学校は行けなくなっていたので、本人の気持ちとしては『2学期になったら再スタートで頑張るぞ』という気持ちだったんだけれども(自宅)待機になって休まざるをえなくなって、行こうと思ったけど行けなかった。彼自身も、今すぐ死にたいと思っているわけではなくて、『死にたい、死にたい』とずっと続いていて、その裏には、『助けて』『不安でしょうがない』『寂しい』という気持ちだったり、『死にたいの裏にある思い』に、僕らも思いを馳せてあげることは大事なのかなと思います」

2006年に日本で施行された自殺対策基本法では、自殺を「社会問題」と捉え、国や自治体が対策を進めるように定めました。さらに2016年には改正法が施行され、自治体に自殺対策の計画作りが義務づけられました。福岡大学病院の衛藤医師は、「日本は若い世代に対する自殺予防の教育が遅れている」と指摘します。
福岡大学病院精神科 衞藤暢明医師「特に欧米では、若い世代で小学5年生とか6年生くらいからメンタルヘルスの問題について学んで、自傷したりメンタルヘルスの問題を抱えていると思った時は『必ず専門家に相談しましょう』という教育があるんですけど、(日本では)そのことを話題にしていいということは、教育として行われることがなかった」

◆アプリ窓口の相談員には大学生が

一方、福岡県は子供たちの自殺を防ぐため、今年から新たな取り組みを始めました。無料通信アプリの「LINE」を使った相談窓口の開設です。
RKB吉松真希「実際に相談窓口のアカウントにメッセージを送ってみます。中学生という設定でメッセージを送ると、大学生が相談員として返信してくれています。中高生にとっては年齢も近いので相談しやすいですね」 福岡県こころの健康づくり推進室 猪股祐子室長「若者は、対面の相談とか電話の相談というのがなかなか難しくて、通常からよく使っているSNSを活用した相談が効果的ではないかと」

福岡県によりますと、相談窓口のアカウントには、9月1日時点で約2000人が登録。すでに660件近くの相談が寄せられているということです。LINEの相談相手となるのは、公認心理師やカウンセリングの資格を持った大学生です。 福岡県こころの健康づくり推進室 猪股祐子室長「『こういうことを相談していいのかな』と思わないで、ちょっと話したいか、ちょっと嫌なことがあったというようなことでも、どんどん活用してもらいたいと思います」

◆大人はSOSに気づけるか

では、身近にいる大人が子供たちからのSOSに気づくためには、どうしたらいいのでしょうか。
のぞえの丘病院 堀川直希院長「この頃塞ぎ込んで最近よく部屋にこもってるなとか、いつもよくしゃべってたけどなんか全然学校のこと話さなくなったなとか、そういうちょっとしたとこだと思うんだけど、親にしか分からないと思うけど、そういうところがきっかけになって、実は…とようやく言えるお子さんもいる。身近で味方になってくれる人をたくさん作っておくこと」

◆まずは連絡を!

相談窓口「ふくおか自殺予防ホットライン」の電話番号です。
092-592-0783
=24時間 365日対応

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