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母から娘へ、またその娘へ。~江戸時代から続くぬか床のはなし~

少なくとも江戸時代末期から続くというぬか床がある。先人の知恵が詰まった「種菌」を使い、福岡市内でぬか床料理を提供する「千束(ちづか)」の店内は、どこか懐かしい香りが漂う。女将の下田敏子さん(71)は、ぬか床を「娘たち」と呼んで大切に育てている。戦時中、女将さんの母親はぬか床を枕元に置いて命懸けで守った、まさに「家宝」だ。
九州大学の研究チームは女将さんのぬか床から新しい菌を見つけ学会で発表した。その名も「千束菌」。旨味を引き出す特殊な発酵力が優しく深い味わいを生み出す。
古来より日本の台所にあったぬか床は、各家庭のアレンジで味を変えるおふくろの味。食習慣が変化し今では姿を消しつつあるが、その味は日本人の舌にしみついているのではないだろうか。
女将さんは「毎日かき混ぜなくてもよい。静かに静かに発酵させよ」と母の声が聞こえるという。「100年後、千束のぬか床は生き抜いていると思いますか?」の問いに「したたかな千束菌なので元気にやっているんじゃないですか」と笑った。母を感じ娘たちを育てる思いはひとつ、ご先祖がくれた宝物を守り後世に繋ぐこと。ぬか床と向き合い会話しながら、まるでわが子を育てるように・・・。
(製作:RKB毎日放送 / 両角 竜太郎)

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