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SDGs 化学の力で排水溝を清潔に~福岡の大学院生


<リード>

6月はRKB70周年を記念した「カラフルマンス」として、SDGs=持続可能な開発目標への様々な取り組みを紹介しています。

今回は6番「安全な水とトイレを世界中に」です。

飲食店などの近くを通りかかった際、排水溝から鼻をつく悪臭が漂っていたという経験がある人も多いのではないでしょうか?

北九州市に住む大学院生が、大がかりな装置を組むことなく化学の力で匂いを消し、水をきれいにしようとしています。

<VTR>

インタビュー

「水担当」と名乗りながら私たちを出迎えてくれたのは、九州工業大学の大学院に通う山手健矢さんです。

去年まで通っていた北九州市立大学の食堂に向かいました。

インタビュー

山手さんは、この食堂で食器洗いのアルバイトをしていました。

その時、悪臭が床から上がってくることに気づいたといいます。

床を開けると・・・・。

現れたのは、ひざ下ぐらいの深さのある排水溝です。

インタビュー

食堂の利用者は、1日に約400人。

専門の会社が2か月に一度清掃するまでに、大量の油がたまり、匂いの元となっていました。

そこで山手さんが目を付けたのは、「光触媒」です。

インタビュー

光触媒の一つ、酸化チタンは、光を受けると強い酸化作用を発揮し、匂いの成分や油を分解します。

小規模な飲食店などでも、この作用を取り入れることはできるのでしょうか?

高価で大がかりな装置は使えません。

山手さんが考えたのは、酸化チタンをまぶした球を使う方法です。

球が回転しながら油をとらえ、油面の上に出た時に光にあたり、油や匂いの成分を分解します。

2か月間、紫外線を当て続けました。

その結果・・・、微生物は目に見えて減りました。

しかし、分解しきれなかった油が残り、匂いは消えませんでした。

実験の最中、ある不安が山手さんの脳裏をよぎります。

飲食店などの厨房には通常、「グリストラップ」と呼ばれる油受けが設けられています。

3つの層からなり、1つ目の層で食べかすを回収。

2つ目で油を除去。

ある程度きれいになった水が、3層目を通って下水に流れる仕組みです。

大学の食堂では、油が最後の3層目まで達し、水を赤く染めていました。

山手さんは去年、カンボジアの飲食店を視察しています。

河川には、排水溝からの油がそのまま流れ、虫がわき悪臭を放っていました。

大学の食堂の匂いもさることながら、カンボジアのように下水に油を垂れ流すわけにはいきません。

地元の企業の力を借りることにしました。

インタビュー

15分で大量の油が取れました。

インタビュー

自分が考えた球の光触媒と組み合わせれば、ほとんどの油を取り除けることになります。

悪臭を解決できる道筋がつきました。

山手さんの取り組みは、国土交通省が主催する大会で「学生ながらに自主的で未来を見据えた活動」と評価され、「未来開拓賞」を受賞しました。

山手さんはいま、油と匂いの成分を分解し、水をきれいにするための安価な仕組み作りを目指しています。回収した油を堆肥にするなどの新しい利用方法も探しています。

インタビュー

SDGsの水担当として「安心安全な水を世界に」。

山手さんの研究は続きます。

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