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すべては11年前、 15歳の春に始まった
「皿洗いから始めて、ホールの仕事を覚えると、少しずつ調理させてもらえるようになりました。自分では作業が遅いから毎日怒られてばかり。でも当時の店には同世代の仲間が多くて、『よし、やるぜ!』って気運がものすごく高かった。途中で辞めたら男として情けない。だから気持ちだけで続けていましたね」。
「あいつは仕事がちゃんとしとるし、根性もある」。上司や先輩から認められ、アルバイト2年目には正社員に。
「若い人が成長し、成功するチャンスを」という『博多一幸舎』の理念の下、10代のうちから店長も任された。
「転機になったのは、県外の店の立上げや運営に携わった時期です。周りに頼れる人がいないので、自分の判断や責任で店の味を守り、広め、数字やスタッフの管理もしなくてはなりません。結果が出るまでは厳しかったけれど、ここで人間としてすごく鍛えられた。達成感もありました」。
20代半ばになると、同世代の社員が次々と独立。当然焦りも感じていた。「自分もここを辞めて店を持つべき時期なんだろうか?」。
そう考えていた西村さんに、『博多一幸舎』から暖簾わけの話が持ちかけられた。
「個人事業主として一幸舎の中洲店を切り盛りしてみないか、というありがたいお話しでした。一幸舎というブランドのクォリティを守りつつ、中洲という繁華街でさらに成長させる。このミッションは僕にとって集大成的な仕事になりました」。
【幸ちゃんラーメン 代表 西村 勇弥さん】2009年、中学卒業後に『博多一幸舎』にアルバイトとして入社。2年後に正社員となり2018年まで勤務。同年、暖簾わけの形で個人事業主として『一幸舎 中洲店』を開業。2020年には株式会社西村商店を設立し、同年4月に『幸ちゃんラーメン』を開業。「スタッフも売上もたくましく伸びる経営」をめざす。
そしてこの中洲店の経営が軌道に乗った2018年、西村さんは師匠である創業者の吉村幸助さんにこう切り出した。「大将、何か新しいこと、やりませんか?」----弟子から師匠へのこの何気ないひと言から生まれたのが、ここに紹介する『幸ちゃんラーメン』。ラーメン好きによる、ラーメン好きのための、魂の一杯だ。
【ラーメン(600円)】継ぎ足しをしない取り切り製法で作るスープの軽やかな旨みが絶品。しっとりしたチャーシューとネギ以外には何も乗せないシンプルさにも、昔の博多ラーメンの魅力を思い出す
【ワンタンメン(6個入り)820円】基本のラーメンをベースに毎日仕込む特製ワンタンを6個トッピング。1個ずつスタッフが丁寧に手包みして仕上げるワンタンは人気が高く、単品でもオーダーできる
【チャーハン(300円)】パラパラッとお米がほぐれる食感がさすが!料理人の腕の確かさを物語るチャーハンは、豚ミンチ、チャーシュー、玉子を使い、特製タレで調味したシンプルなおいしさ
【餃子(5個)300円】ラーメンのサイドメニューといえばこちら!1個ずつスタッフが手で包む特製餃子は、表の皮はパリッと、中はジューシーな仕上がり。特製の柚子胡椒をアクセントに
ラーメン好きが毎日でも 食べ飽きない一杯を
吉村さんと西村さんは偶然にも同じ地域で幼少期を過ごし、子どもの頃から慣れ親しんできたラーメン店の味も同じ。めざす味に迷いはなかった。

のど越しのいい麺は『製麺屋慶史』特製の細麺。しっとりとしたチャーシューは煮汁を沸騰させ過ぎないよう温度管理を徹底し、時間をかけて仕上げる自信作だ。

客の反応やその日の天候や気温を見ながら、『幸ちゃんラーメン』の味は少しずつ変化している。
コロナ禍での開業。 "勝負はここから!"
西村さんの熱い想いを込めた『幸ちゃんラーメン』は2020年4月、博多駅近くのオフィス街に開業した。
ところが、新型コロナウイルスの影響で開業2日目には福岡県も非常事態宣言を発出。
オフィス街から人が消え、当然、店に客が1人も訪れず、売り上げゼロという日が何日も続いたという。
「先行きが全く見えず、あまりにも不安で気持ちが折れそうになりました。でも、いつも思い出していたのは吉村大将の言葉----どんな時でも気持ちひとつで何とかなる。がんばろうや、と」。
非常事態宣言解除後、街に少しずつ人の姿が戻ると、『幸ちゃんラーメン』の客足も伸びてきた。早くも週に5日のペースで食べに来るファンもいるという。
「スタートがどん底だったので、ここからが勝負です!」。西村さんの表情は明るく輝いている。
【師弟対談】食べる人に夢と希望と感動を与える一杯を!
左:【幸ちゃんラーメン 代表】西村 勇弥さん 右:【博多一幸舎 創業者】吉村 幸助さん
------西村さんは一幸舎の中で、初めて暖簾分けを許されたスタッフですね。
吉村さん そうですね。当時、彼が独立したいという気持ちは重々分かっていましたが、何の後ろ盾もなく独立して自分の店を持つっていうのは口で言うほど簡単やない。少しでも苦労を減らして、店を構えたいという気持ちを応援してあげたかったんですよね。 西村さん 独立はしたかったけど、どんなラーメンを出したいか、明確にイメージがあったわけじゃなかった。だから暖簾分けのお話しはありがたかったです。
------西村さんから新しいラーメンを作りましょうと言われたとき、吉村さんの頭の中には、もうある程度の構想ができていたそうですね。 吉村さん ええ、この『幸ちゃんラーメン』で出している、昔ながらの懐かしい博多ラーメンですね。西村さんの仕事ぶりはよく知ってましたから、きっといいラーメンができると思えた。彼だから託せた一杯と言ってもいい。 西村さん 僕は僕で「ものすごいチャンスをもらってるんだ、これはもうやるしかないぞ」腹が決まったというか。いい緊張感がありました。大将にはこうやっていつも助けてもらってばかりで。コロナ禍の最中も、大正のプラス思考にずいぶん元気づけられました。 吉村さん この店がオープンしてからすぐに非常事態宣言やもんね、そりゃ落ち込みますよ。でもコロナのことばかりも言うとられんでしょう。自分で自分を高めるのも、技術のうちだから。 西村さん リーダーとして必要な素質なんでしょうね。 吉村さん 西村さんにはこれから博多のラーメン業界の若手のリーダーとして、まだまだたくましく伸びていってほしいですもんね。彼ならもっと下の世代の若者にも、ラーメン店はたくさんの人に夢と希望を与えながら、世界にも挑戦ができるんだってことを伝えてくれると期待しています!
------吉村さんは『幸ちゃんラーメン』にどのような店になってほしいですか? 吉村さん お客様を感動させられる店であってほしいですね。「西村さんが作るラーメンがうまい!」と言ってくれるファンがたくさんついて、そこから感動の輪が広がる、みたいな。あと、今はまだ僕と西村さんは上司と部下みたいな関係でしょう。だけど僕は西村さんと1人の男と男として、上も下もない五分で付き合える関係になりたいね。まあほら、僕はすでに世界が舞台やけん、五分五分の関係になれるのはまだまだ先かもしれんね(笑)! 西村さん いやいや大将(笑)、待っとってください。僕も世界を目標にやっていきますから。世界の舞台で、待っとってくださいね!
店舗情報

住所 | 福岡市博多区博多駅前3-18-1 |
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電話番号 | 092-292-9655 |
営業時間 | 11:00~23:00、土日祝11:00~15:00 |
定休日 | なし |
座席数 | 24席 |
カード | 不可 |
@kouchan_hakata |
幸ちゃんラーメン 西月隈店
住所 | 福岡市博多区西月隈1-16-15 |
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電話番号 | 092-710-4770 |
営業時間 | 8:00~16:00 |
定休日 | なし |
座席数 | 20席 |
カード | 不可 |
博多一幸舎 中洲店
住所 | 福岡市博多区中洲1-4-17 |
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電話番号 | 092-262-8399 |
営業時間 | 月~土 19:00~翌1:00 |
定休日 | 日曜 |
座席数 | 10席 |
カード | 不可 |
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