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「塾に行きたくても通えない子供がたくさんいる」無料塾を支える小さな先生たち

家庭の事情や経済的な貧困が、子どもたちの教育格差を広げ貧困の連鎖につながっています。こうした状況を打破したいと1年半前にスタートした「無料の塾」があります。地域のボランティアに加えて、10代や20代の高校生や大学生が運営を支えています。

商店街の中にある「無料塾」


毎週土曜日の夕方、商店街にある建物の部屋で、小学1年から中学3年までの12人が対面かオンラインで授業を受けています。受講料は、世帯収入にもよりますがほとんどの子供たちが無料。この「無料塾」は、北九州市のNPO法人などが主に経済的な事情で塾に通えない子供たちに教育機会を提供しようと2022年4月に運営を始めました。
 

「先生」は高校生や大学生


教えるのは、年齢の近い地元の高校生や大学生。ボランティア講師です。

高校2年生
「まず7をルートに戻そう、ルートにもどしたら?」
中学3年生
「49」

約40人の高校や大学生が「ボランティア講師」に登録しています。NPOのスタッフが北九州市内の高校を回って募集したこともあり、運営スタート時から1年半で8倍ほどに増えました。

小学生も「分かりやすいな」


高校生のボランティア
「初めて『先生』をしに来ました。ちょっと難しいなと思うこともあるんですけれど楽しいです」

高校生のボランティア
「無料塾というのをコンセプトにしているんですけれど、経済的な理由だけではなくて、普通の塾が合わずに勉強がしたくても出来ない子たちもいることをここで知りました」

無料塾に通う小学5年生
「学校と違って楽しい。自分の好きなペースで進められるから」

中学3年生
「先生が実際にやってみせてくれるので分かりやすいなと思います」

学習のあとは手作りの食事も


無料塾では、食事も提供しています。これまではカップ麺や即席カレーでしたが、今年4月から地域人たちなどが子供たちの学習が終わる時間に合わせて手作りしています。こちらもボランティアです。

食事をつくるボランティアスタッフ
「できたらタンパク質と食物繊維は多めに出したいと思いますけれど。みんなで食べたらなんでも美味しいので誰か一緒に食べる場所を作るのが大事なんじゃないかと思っています」

「誰かと一緒に食べる場所」があること


この日はそうめんとお肉、トマトにオクラ、フルーツ。気持ちのこもった温かい食卓をみんなで囲みます。これも無料の支援です。

「いただきます!」

交通費がなくて来ることができない子供も


運営を始めて1年半。今では商店街に店を構えるスナックのママや飲食店の店主から差し入れが届くこともあるといいます。確実に支援の輪が広がっていますが、無料塾を運営する「NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン」理事長の原田昌樹さんは、ここに通いたくても通えない子供たちが、まだたくさんいると話します。
 

NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン 原田昌樹理事長
「私たちは、北九州市内で子供食堂やフードバンクなど様々な事業を行っていますが、こうした支援を受けるために登録している子育て世代が2300人います。このうち、毎月食糧支援が必要な世帯が100世帯以上あります。その世帯の多くの子供たちは、無料塾を行っているこの場所まで来ることができません。バスなどの交通費が出せない。親も仕事などで送ることができない。自宅からオンラインで参加しようにも、タブレットがない、Wi-Fi環境がない」

塾などにかける費用は年平均45万円


公立学校に通う子供を対象に文部科学省が行った調査では、学習塾や家庭教師などにかかった費用は中学3年時で年間平均45万円にのぼります。(出典:文部科学省 令和3年度子供の学習費調査)
前回2018年の調査時に比べ、約9万円増えました。

「無料塾」増やすには


塾に通える子供と通えない子供。原田さんは、教育格差が生む貧困の連鎖を断ち切るために、北九州市内に50か所ある子供食堂を新たな「無料塾」の拠点にできないか奔走しています。
課題のひとつはボランティア講師の確保。原田さんは「今の高校生を『誰1人残さない』と心を持つ人材として世の中に送り出したい。今後も高校をまわってボランティアを80人、100人に増やしていきたい」と話しています。

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この記事を書いたひと

下濱美有

1996年大阪府生まれ。2019年入社。本社報道部で事件取材担当後2020年~北九州市で警察・司法・市政を担当。得意分野は芸術。

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