醸造酒に様々な副材料を加え、味や香りをアレンジする〈クラフトサケ〉をご存知ですか? 昨今、この新たなジャンルに参入する造り手が全国的に増えています。
なかでも穴見峻平さんと柳生光人さんは、そのムーブメントを牽引する注目株。西日本初の〈クラフトサケ〉醸造所&バー「LIBROM Craft Sake Brewery」を高砂で営む、若手世代の杜氏です。
中学の旧友で、酒造りという夢を共有する穴見さんと柳生さんが「LIBROM」を構えたのは2021年のこと。各地の酒蔵で醸造を学び、28歳でオープンに漕ぎ着けました。
創業理由を柳生さんに尋ねると「海外留学中に日本文化の凄さを再認識する機会があり、その感動を海外に伝える仕事がしてみたいなって。僕の好きなイタリアが欧州屈指の米どころだったので、そこに醸造所を開き日本酒という伝統文化を広めようと思ったんです」。けれども当時はコロナ禍で世界中が混乱。そこで一旦福岡に留まり、技に磨きをかけつつ渡欧に備えることにしました。
その活動拠点たる「LIBROM」は、カウンター、テーブル、テラス席を持つ明るい雰囲気です。営業は15時(土曜は13時)からなので昼呑みも楽しめそうですね。
またカウンターの向かいには自前の醸造所が見え、リアルな生産現場の臨場感を伝えてくれます。原料は福岡産米で、麹もここで丹念に育てたもの。それらで仕込んだ酒に、フルーツやエディブルフラワーなどを加えると、呑み口軽やかな〈クラフトサケ〉の誕生です。
ここで、あらためて〈クラフトサケ〉について説明しましょう。実は、国内では長年「日本酒」への新規事業者の参入が認められていません。が、「LIBROM」のように日本酒の製造工程で副原料を加えれば「その他の醸造酒」というカテゴリーで販売でき、こうした酒を柳生さんたちは〈クラフトサケ〉と呼んでいるのです。
さて、こちらが完成した酒の一部で、バーベナ、ミント、梅、赤紫蘇など、常時10種類ほどのボトルを販売中。価格は2,600~2,900円(500ml)で、店内で飲食すれば10%OFFで購入可能です。
「僕らが目指すのは、日本酒が苦手な人にも好まれる低アルコールで呑みやすい酒。〈クラフトサケ〉なら副材料で無限にバリエーションも作れますしね」と柳生さん。親しみやすい美味しさに加え、オリジナルの酒を小ロットで造れる強みもあり、最近は県内外の自治体や異業種とのコラボ商品も増えたそうです。
そんな追い風の中、なんと今夏はイタリアで催されたコンペ「ミラノ酒チャレンジ/古酒・スパークリング部門」で最高賞を受賞。活動に弾みをつける、創業2年目の快挙でした。
この日は初訪問だったので、まずは「3種のみくらべ」(1,300円)を注文。定番のバーベナ、コーラ、ストロベリーを選びましたが、柳生さんの語った通り、どれも爽やかで浮遊感のある心地よさです。副材料の華やかな香りも、微発泡の舌触りも実にフレッシュ。毎月2種類は新商品を出す攻めのラインナップや、月額3,000円で来店時に酒が1杯無料になる“酒のサブスク”も常連から好評を博しています。
和食歴10年の西島光輝さんによる多彩なアテも存在感大です。例えば旬魚を使った「なめろう」(700円/写真右)は酒粕で旨味をアップさせ、「酒粕クリームコロッケ」(850円/同左)の自家製ベシャメルも奥深い味わい。いずれにも繊細な酒の味を損なわない優しみを感じました。前日までに予約すればコース(5,000円~)やペアリングコース(6,600円~)も頼めますよ。
創業からやや遅れて参加した西島さん(写真左)も、穴見さん(同中央)や柳生さん(同右)とは旧知の仲だとか。そんな仲良しチームの冒険は、まもなく大事な局面を迎えます。
「現地のワイナリーの協力で、ついに来春イタリア支店を開設するんです」と柳生さんがにっこり。彼らの夢を乗せた美酒がどんな旋風を巻き起こすのか、今から楽しみでなりません!
LIBROM Craft Sake Brewery (リブロム・クラフト・サケ・ブルワリー)
福岡市中央区高砂1-21-27ボンフル高砂1F
092-753-9298
ジャンル:バー、日本酒、食物販店
住所:福岡市中央区高砂1-21-27ボンフル高砂1F
電話番号:092-753-9298
営業時間:15:00~OS22:30(土曜13:00~)
定休日:月曜
席数:カウンター7席、テーブル3席、テラス4席
個室:なし
メニュー:クラフトサケ3種のみくらべ1,300円、45ml450円、90ml850円、酒粕クリームコロッケ850円、なめろう700円、雲仙ハム650円、油淋鶏900円、だしまき卵900円、コース(前日まで要予約)5,000円~
URL:https://librom.jp/
この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう