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訪問看護スタッフへのセクハラや暴力 半数が経験 身を守るアプリ大学が開発へ

高齢化がすすむ中、「住み慣れた自宅で療養したい」と在宅で医療や介護を受ける人が増えていますが、在宅ケアに関わるスタッフへのハラスメントが問題となっています。訪問看護スタッフを守ろうと、福岡大学がアプリケーションの開発に取り組んでいます。

「行ったらパンツ一枚で待っていた」


福岡県久留米市にある「訪問看護ステーションReafくるめ」は精神障害の人などを中心に生活や心のサポートを行っています。看護師で、スタッフの管理者でもある永野孝さんは、訪問看護スタッフへのハラスメントをこう訴えます。

訪問看護ステーションReafくるめ 管理者永野孝さん
「うちでもあるんですよ実際、若い男性と二人きりになったりするじゃないですかそしたら電気を真っ暗にされたとか、何も無かったんですけどどきっとしますよね。行ったらパンツ一枚で男性が待ってたとか。『ラブホテル行けないのかそういうサービスはないのか』と言われたこともありますし、女性を触る男性利用者がいるっていうこともありますね」

半数が暴力やセクハラを経験との調査結果も


「住み慣れた自宅で暮らしたい」という人が増え、訪問看護など在宅ケアスタッフの需要が高まる一方で、問題となっているハラスメント。全国訪問看護事業協会の調査によりますと、訪問看護師の半数が、「業務中に暴力やハラスメントを受けたことがある」と回答しています。
【2018年調査】
身体的暴力45.1%
精神的暴力52.7%
セクハラ 48.4%

埼玉県では2022年、訪問診療先の住宅で医師が散弾銃で殺害され、理学療法士など2人がけがをする事件が発生しました。

福岡大学で開発が進むアプリとは


福岡大学医学部看護学科の池田智助教は、訪問看護スタッフをハラスメントから守るアプリケーションの開発に取り組んでいます。

福岡大学医学部看護学科 池田智助教
「こちらが在宅ケアスタッフの安全を守る在宅スタッフ間連携アプリ『クルサ』になります」

GPSで各スタッフがお互いの位置情報を共有し、緊急時にはボタンひとつで支援を要請できます。支援に向かう人には、現場への行き方を示した地図が即座に表示され、すぐに駆けつけられる仕組みです。

試作品が完成

「クルサ」の試作版


福岡大学医学部看護学科 池田智助教
「訪問看護スタッフを対象にしたメンタルヘルスの研究をしていました。訪問看護スタッフは利用者だったりそのご家族から暴力であったりハラスメントの被害を受けやすいということが分かり、そういう方たちを支援したいという思いでアプリ開発に着手しました」

工学部の教授や学生が2020年から開発を始めた「クルサ」の試作版が10月、完成しました。試作版を製作した福岡市のネットワーク応用技術研究所の担当者もこのアプリの必要性を強く認識していました。

ネットワーク応用技術研究所 富永浩之代表取締役
「私の妻がケアマネージャーをやっていて、いろいろ危険な目にあったりということを妻から聞いていました。ケアマネージャーのみなさん、介護士のみなさん含めて使っていただいてお役に立てるようなものにどんどんしていきたいという思いは強く持っています。手の届くところにもっていけたらと思っております」

実際に使ってみると


福岡大学の池田助教はこの日、Reafくるめを訪れました。看護師たちに、実際にアプリの試作版を使ってもらうためです。

ピコン「今諸隈さんから救援要請がありましたと、近くにいる土原さんに救援に向かってもらっていいですか?」

ピコン「救援に向かいますね」

一連の流れを体験してもらいましたが、評価は上々です。

訪問看護師
「何かあったときにすぐ応援が呼べてSOSを発信できるのはすごく安心できるなと思います」

訪問看護師
「訪問看護は一人でまわることが多いから、つながることが看護師として安心」

訪問看護ステーションReafくるめ 永野孝さん
「いつどこで何をしているか分からないのが訪問看護なので、安心してまわってもらうのが利用者にも関係してくると思う」

販売担う企業を募る予定


アプリ「クルサ」については、今年度中に実証実験を行ったあと、メンテナンスや販売を担当する企業を募り、本格的なリリースを目指します。

福岡大学医学部看護学科 池田智助教
「訪問看護の方たちが抱えている問題を絶対に解決していこうという気持ちがさらに高まりました。今回の機能以外にもこういった機能があったらいいなという情報も獲得できたので今後の開発につなげていきたいと思っています」

訪問看護スタッフを守ろうと開発されたこのアプリ。一人で回ることが多い訪問看護スタッフが、不安を抱えずケアに集中できるようになれば、利用者にとってもプラスに働きそうです。

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