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誰のための公共事業~宝の海の未来は~

2023年第12回 
制作:RKB毎日放送
ディレクター:里山 千恵美

 

悪名高い「ギロチン」が諫早湾奥部を閉め切った国営諫早湾干拓事業、通称「諫干(いさかん)」。閉め切りから早四半世紀が過ぎた。


かつて「宝の海」と呼ばれた有明海は、赤潮、貧酸素水塊が頻発するなどして漁船漁業、採貝漁業が深刻な打撃を受け、名物のノリ養殖も不安定な漁を強いられている。漁業者たちは「諫干」こそが原因であると、潮受け堤防排水門の「開門」を求め続けている。


研究者たちによって、これらの有明海の異変は「諫干」が原因であることが現在では明らかになっている。しかし国はその因果関係を否定し続け、また異変の原因を検証するための「開門」調査を強固に拒んでいる。有明海の再生を口先では謳いながら、その態度は真にそれを望んでいるとは思えない。そんな国の態度を後押しするかのように、かつて「開門」判決を出した司法も、自身が出した判断を反故にする「非開門」の姿勢に転じている。


一方、諫早湾の干拓地の営農者も、国や長崎県による「優良地」のうたい文句とはかけ離れた土地での厳しい農業を強いられた上、多額の投資をしても紙一枚で干拓地から追い出だされるケースも出ている。干拓地で営農が開始された時の入植者の4分の1がすでに撤退している。営農者も「諫干」に翻弄されている。


巨大公共事業「諫干」は誰を幸せにしたのか。国の姿勢は正当なのか。その是非を問う。

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