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唐臼が鳴く

2024年第3回 
制作:OBS大分放送
ディレクター:糸永 敦

 

大分県日田市の山あいで300年にわたり受け継がれてきた焼き物「小鹿田焼(おんたやき)」。現代では失われつつある、機械を使わない手仕事や一子相伝を守り続け、県内で唯一、国の重要無形文化財に指定されている。蹴ろくろを回して刻まれる「飛び鉋(とびかんな)」や「刷毛目(はけめ)」といった幾何学模様の文様が、多くの人を魅了してやまない。


小鹿田焼のシンボルとなっているのが「唐臼(からうす)」だ。川の流れを動力に、ししおどしの仕組みで杵を上下させて原料となる土をつくる。「ギーゴットン ギーゴットン」里では、昼夜を問わず唐臼の音が鳴り響き、住民の生きる糧となっている。


2023年7月、唐臼の音が止まった。記録的な豪雨が里を襲い、焼き物をつくる9軒全ての窯元が被災した。中でも6代続く窯元の柳瀬裕之(やなせ・ひろゆき)さんは、唐臼を流失したほか、焼き物の燃料となる薪を確保できず、作陶の危機に陥った。


小鹿田焼の里は2017年の九州北部豪雨をはじめ、これまでも大雨の被害にもがいてきた。しきりにやってくる災禍に翻弄されながらも、受け継いだ伝統を守るため、唐臼の音を絶やさぬため、たくましく作り続ける陶工の姿を追った。

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