『世界は贈与でできている ー世界は贈与でできている』
「結局、サンタクロースって誰?」
こう聞くと、多くの大人は「親」と答えるだろう。彼の存在を信じて疑わず、毎年手紙を書いては胸を躍らせ、クリスマスの朝を迎えた健気な子どもたち。彼らはいつの間にか、希望に満ちた夢から覚めてしまった。
いい子に贈り物を届けるサンタクロースは、親が子育てに利用するただのフィクションなのだろうか。なぜ親からのプレゼントではだめで、彼の存在は成長するまで秘密なのか。そんなサンタクロースの正体を、「贈与」で解き明かす。
本書は私たちの日常に、新たな視点をもたらす「贈与論」だ。
マルセル・モースを皮切りに、贈与はこれまで多くの関心を集めてきたテーマだ。なぜ贈るのか、なぜ返礼するのかといった様々な問いが、哲学、社会学、文化人類学などの分野で研究されてきた。
そのような中で、本書のもつ特徴は、私たちの日常を「贈与」で読み解くところにある。例えば、クリスマスに欠かせないサンタクロース。一年間良い子で過ごした子どもに贈り物をもたらすが、その正体は秘密にされている。そして、子どものころは信じていても、私たちは成長するにつれ、プレゼントの出所が大人たちであったことに気づいていくのだ。著者によれば、これは大人たちが「差出人を不明にし、贈与を純粋に成立させる」ための装置なのだという。詳細はぜひ読んで確認してもらいたい。
本書ではこれと同様に、贈与を切り口として、
◦親が「孫の顔を見せて」という心理
◦正直辞めたい年賀状へのモヤモヤ
◦『鶴の恩返し』、部屋を覗いてはいけない理由
◦勉強するのは何のためか
など、様々な事象が語られていく。贈与のシステムを解説するところから始まり、贈与という仕組みから、私たちの心情や行動を読み解く本なのだ。
読み終えて真っ先に感じたのは、哲学/倫理学と自分の日常との親しさだった。著者は哲学を学んでいたというし、タイトルの「倫理学」には難しそうな響きがある。しかし本書は、事前知識なしで誰でも読めるわかりやすさが魅力だ。登場する多くの具体例は、つい「わかる!」と言ってしまいそうな身近さ。取り上げられたテーマを自分事として理解しやすく、読者が議論に置いて行かれることがない。ハードカバーの重さにしりごみしても、あっという間に読み終えてしまう。「哲学の本を読んでいる」という印象ではなく、今までの経験や感情が説明されていく感覚は、本書の醍醐味といえるだろう。
また、本文で印象的だった言葉がある。
「つまり言葉や概念は、僕らが幸福に生きていくためのテクノロジー、生活の技なのです。」
言葉や概念を生み出す哲学は、新たな視点をインプットし、世界を見つめなおすための道具なのだ。そして本書は、ただ贈与について論じるのではなく、読んだ私たちが新たな認識を獲得し、生きていくことを意識して綴られている。など、様々な事象が語られていく。贈与のシステムを解説するところから始まり、贈与という仕組みから、私たちの心情や行動を読み解く本なのだ。
読み終えて真っ先に感じたのは、哲学/倫理学と自分の日常との親しさだった。著者は哲学を学んでいたというし、タイトルの「倫理学」には難しそうな響きがある。しかし本書は、事前知識なしで誰でも読めるわかりやすさが魅力だ。登場する多くの具体例は、つい「わかる!」と言ってしまいそうな身近さ。取り上げられたテーマを自分事として理解しやすく、読者が議論に置いて行かれることがない。ハードカバーの重さにしりごみしても、あっという間に読み終えてしまう。「哲学の本を読んでいる」という印象ではなく、今までの経験や感情が説明されていく感覚は、本書の醍醐味といえるだろう。
また、本文で印象的だった言葉がある。
「つまり言葉や概念は、僕らが幸福に生きていくためのテクノロジー、生活の技なのです。」
言葉や概念を生み出す哲学は、新たな視点をインプットし、世界を見つめなおすための道具なのだ。そして本書は、ただ贈与について論じるのではなく、読んだ私たちが新たな認識を獲得し、生きていくことを意識して綴られている。
著者プロフィール
近内悠太
1985年神奈川県生まれ。教育者。哲学研究者。慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業、日本大学大学院文学研究科修士課程修了。専門はウィトゲンシュタイン哲学。リベラルアーツを主軸にした統合型学習塾「知窓学舎」講師。教養と哲学を教育の現場から立ち上げ、学問分野を越境する「知のマッシュアップ」を実践している。『世界は贈与でできている』(NewsPicksパブリッシング刊)がデビュー著作となる。
INFORMATION
書名: 『世界は贈与でできている 資本主義の「すきま」を埋める倫理学』
著者: 近内悠太
出版社: NewsPicksパブリッシング
ISBN: 978-4-910063-05-8
価格: 1,980円(税込)
[テキスト/鈴木花那]
1993年大分生まれ。2023年より本屋「文喫 福岡天神」ディレクターとして企画や広報を担当。
大切にしている本は『急に具合が悪くなる』(宮野真生子・磯野真穂 著/晶文社)
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