「ご注文はこちらのQRコードから」という飲食店が増えてきた。客が自分のスマートフォンを利用してオーダーするシステムだ。客は履歴や合計金額などをいつでも確認できるし、店は注文のためにフロアを行き来しなくて済む。オーダーの行き違いもなくなる。
そんな居酒屋で、水が飲めないという事態に直面した。食事を進めるうちに水を飲みたくなったのだがメニューに水はない。アルバイトらしい若い店員をつかまえて水を頼むと、「お水ですね!」と元気よく答えてくれたのだが、その後いくら待っても水は来ないのだ。今度は厨房に向け「すみません!」と大きな声で呼び掛けた。3人が同時に「はぁい!」と元気に返事をした。これで一安心。ところが……なぜか誰もやってこない。理解に苦しんだが、恐らく理由はこうだ。厨房の皆が返事をしたので誰かが応対するだろうと、全員が人ごととして動かなかった。効率化とは無駄をそぎ落とすこと。多分その店にとってマニュアル以外の対応は眼中にないのだ。
最終的に3度目の声掛けでようやく水を飲めたのだが、その後味は悪かった。
人手不足を補うためにもデジタル化は必要だ。オーダーミスもなくなるだろう。だが、その店では客への目配りや気配りもなくなっていた。
10月17日(土)毎日新聞掲載
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