昨夏レコードにはまり、プレーヤーを購入。コツコツ集めたレコード盤は20枚ほどになった。回るレコード盤に針を落とすと、独特のかすれとあたたかい音が部屋を包み込む。この瞬間がたまらなく好きだ。20代を中心に広がりを見せているアナログへの逆行。レコードだけではない。スマホのカメラではなくインスタントカメラやデジカメを使い、電子書籍ではなく紙の本を選ぶ。
スマホで音楽を聴くのが当たり前だった私がレコードにはまったきっかけは、1日のスクリーンタイム(スマホの使用時間)が5時間を超えたことだった。1日24時間しかないのに、5時間もスマホに費やしていることにショックを受けた。最近では「ドパガキ」という言葉が注目を集めている。「ドーパミン中毒」の子どもが語源で、一瞬の退屈にも耐えられず、音楽や動画、SNSなどから常に強い刺激を求め続ける人を指す。常に自分の欲しい情報に触れられ、退屈を与えないスマホ。便利で恐ろしい手のひらサイズの四角い物体は、朝起きてから寝るまで私を支配し続けている。たった一つの道具に支配されている感覚が恐ろしく、アナログ製品を選んで使うことが増えた。「面倒くさい」を選ぶことで、過度な情報を減らし、余白の時間を確保できるアナログへの逆行は時代を象徴しているのかもしれない。
10月3日(土)毎日新聞掲載
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