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「ごみ処理施設」の議論はタブー? 福岡・大任町長の不可解 議題にした田川市議「議員バッジ外せ、とどう喝された」

ニュース

今林隆史

田川地区で開かれた議員らの勉強会をめぐって、大任町の永原町長以下8自治体のトップが抗議文を出して、主催した田川市議らに謝罪を求める異例の事態が起きています。こうした中で、永原町長が、以前民主主義の根幹を揺るがしかねない「脅し」とも取れる発言を行っていたことがRKBの取材で明らかになりました。

 

◆「謝罪しなければ、事業遂行できなくなる恐れが」と抗議

「異常だと思いますね」「驚きしかない」「根本的な認識が違うんじゃないかな」

 

今年7月、田川市議会の議長と議員が福岡県庁で開いた会見。3人が「異常事態」だと批判したのは、「田川郡東部環境衛生施設組合」の組合長など役員から連名で届いた抗議文についてです。

 

村上卓哉・田川市議「抗議文につきまして、その内容が、表現の自由、言論弾圧、あるいは市民の知る権利の侵害とも言えるものであり、我々としてはとても容認できるものではありません」

 

田川郡東部環境衛生施設組合は、田川地区の8市町村が共同でごみ処理施設の建設事業などを行っている組織。8市町村のうち、大任町の永原譲二町長が組合長を、残る7市町村のトップが副組合長を務めています。

 

「謝罪を求めるものであります。さもなくば、この事業が遂行できなくなる恐れがあります」

 

 

◆異例の抗議は「ごみ処理施設」に関してだった

田川地区の自治体トップを兼ねる8人が、田川市議3人にあてた抗議と謝罪要求。事の発端は、田川市議ら有志が今年4月に開催した勉強会です。

 

市民オンブズマン福岡 児嶋研二代表幹事「情報公開は、皆さんご存じの通り、住民の信頼をどれだけ勝ち取るかに非常に大事なキーワード」

 

「情報公開」の成り立ちや意義を学ぶもので、市民オンブズマン福岡の児嶋研二代表幹事を講師に、田川地区の議員や住民が参加しました。この中で児嶋代表幹事が、大任町で情報公開の対象が「1年以上住む町民」に限定するよう変更されたことに触れたほか、田川市議が「田川郡東部環境衛生施設組合」によって建設中のごみ処理施設について言及しました。

 

香月隆一・田川市議「当初、総工費が300億円と言われていました。それがいつのまにか、最近聞いた市議会の報告では、394億円。本当に必要な予算だとしっかり説明がない。事業の透明化、情報公開が大事だし、その必要性が強く今問われているんじゃないかなと思います」

 

この勉強会について、組合長である大任町の永原町長らが、主催・質問をした田川市議3人に抗議文を送付したのです。

 

「大任町のみが単独でかつ不純な利益を得て、事業を進めているかのような誤った認識を住民に持たせた」などと主張。謝罪しない場合、ごみ処理施設について「事業が遂行できなくなる恐れがあります」として、文書での謝罪を要求しました。

 

◆「公文書での抗議=前代未聞のどう喝」と批判も

◆ごみ処理場建設で質問した議員にも「抗議」

実はごみ処理施設をめぐっては、同じようなことが起きていたと、別の議員も証言します。

 

梶原みつ子田川市議「わけのわからない、『またやってきたか』というような、戯れ言みたいなものですけど、やはりこういうことをして言論の自由を奪うということは絶対よくないと思うんですよ」

 

4年前の田川市議会。田川地区共同のごみ処理施設の建設について、3人の議員が事業内容の詳細を市の執行部に質問しました。すると後日、大任町の永原町長らから抗議文が届きました。「私や大任町議会に対する侮辱、人権侵害、印象操作などの発言がある」などとして謝罪を求める内容でした。当時、抗議を受けた議員は――。

 

佐藤俊一・田川市議「基本的に『透明性を求める』『資料がないということはいけないんじゃないか』というのが、主要な意見でしたね」

 

 

◆「議員バッジ」外せば収めてやる?


 

香月隆一・田川市議「何ら問題のある勉強会もしていないし、まっとうな勉強会ですし、必要な勉強会。まっとうな議員活動に対して、抗議文を出してくる。謝罪しなければ事業が立ち行かなくなる。私は読んだ瞬間に、強要罪にあたるんじゃないかと思いました」

 

勉強会で講師を務めた、市民オンブズマン福岡の児嶋代表幹事。26年の活動で自治体からクレームを受けたのは初めてで、「推測で書かれた公文書で抗議を行い、どう喝するという前代未聞の事態だ」と指摘します。

 

市民オンブズマン福岡 児嶋研二代表幹事「講演の内容について具体的に何も示さずに、『問題がある、嘘だ、誤った情報だ』とクレームをつけてきたのは初めてですし、市民が皆さんで勉強をして、情報公開について考えようという集会自体にクレームをつけるというのは、『表現の自由を保障すべき』という憲法に違反することだ」

RKBは、抗議文に名を連ねた8自治体のトップに「なぜ勉強会の開催によってごみ処理事業が遂行できなくなる恐れがあるのか」「ごみ処理事業の情報公開は十分なのか」などを尋ねました。これに対し8人からは、全く同じ文面で回答が届きました。

 

「個別具体の回答は差し控えさせていただきます」

 

◆ごみ処理場建設で質問した議員にも「抗議」

実はごみ処理施設をめぐっては、同じようなことが起きていたと、別の議員も証言します。

梶原みつ子田川市議「わけのわからない、『またやってきたか』というような、戯れ言みたいなものですけど、やはりこういうことをして言論の自由を奪うということは絶対よくないと思うんですよ」

 

4年前の田川市議会。田川地区共同のごみ処理施設の建設について、3人の議員が事業内容の詳細を市の執行部に質問しました。すると後日、大任町の永原町長らから抗議文が届きました。「私や大任町議会に対する侮辱、人権侵害、印象操作などの発言がある」などとして謝罪を求める内容でした。当時、抗議を受けた議員は――。

 

佐藤俊一・田川市議「基本的に『透明性を求める』『資料がないということはいけないんじゃないか』というのが、主要な意見でしたね」

 

 

◆「議員バッジ」外せば収めてやる?

佐藤市議によると、抗議文を出した大任町の永原町長は田川市議会を訪れ、佐藤市議らにこう述べたといいます。
佐藤俊一・田川市議「3人じゃなくて、『高瀬議員のバッジを持ってきたら収めようかな』みたいな感じで言いましたね。『バッジを外せ』ということは、『議員を辞めろ』ということと私は受けとめました」

 

その時の音声がこちらです。

「そこで言うたことは責任とらんか。一番いい落とし所は、3人が3人バッジ外すわけにはいかんけ、高瀬議員あんたが責任取って、どうせ来年4月は選挙やけんが。一回どこかでけじめをつけないかん。バッジもっていかな」

田川市議会は大任町の永原町長からの抗議を受け、議員3人の議場での質問を検証。「侮辱、人権侵害、印象操作などにあたる発言ではない」ことを確認し、「抗議文には事実誤認」もあるとして、議長名で永原町長に「反省」を求めました。

 

佐藤俊一・田川市議「なぜよその町の人から言われなければならないのか、というのが私のその当時の実感でした。基本的には脅迫ですよね。ゴミ処理施設等に関わればこういうのが来るでしょ」

RKBは永原町長に対し、バッジに関する発言について真意を尋ねましたが、期限までに回答はありませんでした。大任町に建設中のごみ処理施設。質問が出るたびに組合のトップである大任町の永原町長は、なぜ抗議を繰り返すのか。疑問は膨らむばかりです。

◆RKB記者がスタジオ解説

Q.なぜ大任町で建設中のごみ処理施設をめぐって田川市議らが声をあげているのでしょうか?

RKB今林隆史「このごみ処理施設は田川地区の8自治体が共同で使うもので、多額の税金が投入されていて、当然ですが大任町だけのものではありません。それにもかかわらず建設費などに関する詳細な情報が明らかになっていないとして田川市議らを始め不信の声が大きくなっているのです。

 

Q.そもそも抗議の対象とされた勉強会はどのような内容だったのでしょうか?

RKB今林隆史「私も、勉強会の様子は最初から最後まで取材していたのですが、内容は情報公開に関するごく一般的なものでしたので、8自治体のトップが出した抗議文を読んで驚きました。議員は、住民の代表として選挙で選ばれた非常に重い立場です。仮に進退を問うならば、公の場で根拠を示した上で考えを示すべきではないでしょうか。私が取材する限り、このごみ処理施設に関する議論そのものがタブーになっている印象があります。一体、背景に何があるのか、今後も取材を続けていきます。

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この記事を書いたひと

今林隆史

1976年生まれ 福岡市出身 政治・経済などのニュース取材に加え、ドキュメンタリー番組の制作にも携わる。第58次南極観測隊に同行。JNNソウル特派員として韓国の大統領選挙(2022)などを取材。気象予報士・潜水士の資格を有し、環境問題や防災、水中考古学などをライフワークとして取材する。 番組「黒い樹氷~自然からの警告~」で科学技術映像祭 内閣総理大臣賞(2009)、「甦る元寇の船~神風の正体に迫る~」同映像祭 文部科学大臣賞(2013)など受賞。