『にしやま』名店・中洲ちんやの味を継承…何が変わった?頼むべきメニューは?

『にしやま』名店・中洲ちんやの味を継承…何が変わった?頼むべきメニューは?

長くその地で愛され続けた飲食店の閉店は寂しくもあり、その街並みが変わるような印象さえ持つが、その食文化を受け継ぐ後継人がいるとすれば、どこか安堵を覚え、頼まれてもいないのに応援したくなるものだ。

福岡市博多区中洲に71年ものあいだ愛され続けていた“中洲ちんや”が2019年の夏、惜しまれつつも幕を下ろした。新聞やテレビ・ラジオのニュースでも報じられるほどの出来事で、最後に“アノ味”を求めて全国から人が訪れ真夏にもかかわらず大行列を作ったのは記憶に新しい。

その“中洲ちんや”で働いていた西山さんが屋号こそ変えたが、同じ建物で“アノ味”をそのまま引き継いで3年目。福岡を訪れる有名俳優や大相撲の力士、大物ミュージシャンからも「変わらずにいてくれてありがとう」という感謝の言葉がかけられた。

筆者はすぐ近くで4年ほどアルバイトをしていたので先代にとてもよくして貰っていたこともあり、引き継いだ想いなどを今回聞きに行ってきた。

有名人が訪れてもサインや写真は頂きません。

「先代の店の頃と変わった点はどこですか?」と西山さんにたずねると
“店の名前と器、あとはお客さんの要望で座布団の座敷席を椅子席に変えたぐらいですかね”とのこと。九州産黒毛和牛の仕入れや作り方も変えずにやっているそうだが、そこには西山さんの想いがあった。

“せっかく昔からのファンの方が来ても変わってたら残念に思うでしょ。だから店の雰囲気もなるべく変えたくなかったですし、味も配分も調理方法も当時のままにしています。前の店の時からたくさんの著名な方が来られていますが、あくまで食事に来ていらっしゃるのだからと、先代は写真もサインもねだることはありませんでした。その意思も引き継いで、今でもサインを頂くことはありませんよ”とのこと。

何度も来店している有名ギタリストとお話しする機会があった時に“実はずっと昔からファンでしたよ”と西山さんが漏らすと、“せっかくですから皆で写真を撮りましょう”と先方からの声かけで唯一写真に収まったことがあるそうだ。

割り下を使わない伝統のすきやき(一人前6400円)

今回は極上すき焼きを2人前注文(一人前6400円)。
若い頃に先輩に連れてきてもらったこの味を、自分の支払いで食べに来るという達成感もまた、歴史が長い故の感情なのだ。時を経て後輩を引き連れてくるという方が実際に多いというのも納得だ。

訪れた著名人達は口をそろえて“東京では食べられない味!!この質に対しての値段が安すぎる”と言うらしい。そりゃそうだ!ようこそ福岡へ。

九州産黒毛和牛(A5ランク)が放り込まれると、慣れた手つきで砂糖と醤油で味付けが始まる。
野菜から出る水分がとても重要らしく、この水分によって出汁が生まれ、全てのバランスで絶品料理を作り出すのだ。だからこそ割り下は一切使わない調理方法で、砂糖と醤油の配分もキッチリあることから、すきやきは全てお店の方がつきっきりで対応してくれる。

口に入った瞬間にあふれ出す至福。幸せすぎる味わい。
卵も“中洲ちんや”時代と全く同じこだわりの卵を使っているので口の中で歴史を味わって欲しい。

人気アイドルが食べに来てしばらく経つと、聖地巡礼と称してそのファン達が同じメニューを食べるという。
アリーナツアーの福岡公演で訪れた有名シンガーがこの味を食べているというのを想像しながら食べる味。もはや“言葉にできない”。皆がこの味の虜になるのだ。

人数が多いなら しゃぶしゃぶ(一人前6400円)もお勧め

とにもかくにも、間違いない仕入れで客人をもてなす最高の味。
すきやきが必須であるならば、余力のあるテーブルはしゃぶしゃぶにも手を出して欲しい。

極上しゃぶしゃぶ(一人前6400円)もまた、最高の味わい。
この店で食を楽しみながら食材の写真を撮れば、間違いなく思い出の数ページになるだろう。

是非オーダーして貰いたいのが白菜めんたい(650円)

若い人が食欲旺盛の中、きっと年配者はお腹が満たされお酒を嗜む時間が訪れるだろう。その時に是非オーダーして貰いたいのが白菜めんたい(650円)だ。

ちびちび呑みながらシャキシャキ食べる贅沢な酒の肴。一人で三回もおかわりする人がいるという唯一無二のアテ。“若い頃はすきやきがナンボでも食べられたのになぁ~”なんて老いトークをしながらつまんで欲しい。

ちなみに中洲という立地なだけに、大人の楽しみ方ばかり記してきたが、小さなお子様連れにも優しい畳の座敷は客室最上階に残してくれているという。店の味だけでなく、誰もに愛される店という面でも伝統を繋いでいくに違いない。

 

『にしやま』
定休日 日曜日 祝日
福岡県福岡市博多区中洲3-7-4
092-291-9121

 

THE WRITER

加藤淳也(カト淳)
加藤淳也(カト淳)
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ラジオパーソナリティー&リポーター&時々テレビ(笑)出演し、麺と音楽と野球と映画を探求するのが趣味の中年期おじさん。子供の頃から番組を編集したり文字におこして分析しながら観ていた変わり者。

日曜劇場『アトムの童』

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