立川生志 金サイト

金曜 6:30
国や自治体が打ち出す「少子化対策」「子育て支援の拡充」をチェック!

国や自治体が打ち出す「少子化対策」「子育て支援の拡充」をチェック!

今月4日、岸田首相が「異次元の少子化対策に挑戦する」と表明した。同じ日、東京都独自の給付金制度を発表した小池百合子知事。政府と都との間で、先陣を争って“さや当て合戦”の様相になっている。元サンデー毎日編集長・潟永秀一郎さんがRKBラジオ『立川生志 金サイト』に出演し、国や自治体の子育て支援策について解説した。

 

統一地方選を前に、政府・与党に先手を打った?

小池知事って、好き嫌いは別に、世間の風というか世論をつかむことに関しては、ある意味、天才的というか、うまいですよね。マクロミルが行った「2023年・新成人に関する調査」で、新成人が関心のあるニュースの1位は「少子化対策」でしたが、これを予期していたかのように矢継ぎ早に都独自の対策を打ち出して、注目を集めています。

小池知事は首相の年頭会見と同じ日、首相会見の前に「来年1月から、18歳以下の子ども全員に、親の所得制限なく月額5,000円を給付する」と表明して、そのあと岸田首相が言った「異次元の少子化対策に挑戦する」という抽象的な話はすっかり霞みました。

しかも小池知事はその後、この5,000円は1年分の6万円を一括給付すると表明し、さらに2人目の子どもについては、今年10月から2歳までの保育料を無償化すると畳みかけました。

会見に臨んだ報道陣は「区議会議員選挙もある4月の統一地方選を前に、政府・与党に先手を打った」と思ったのでしょう。「国より早く少子化対策をする狙いがあったのか?」という質問が出ました。これに対する知事の切り返しがまた“小池節”です。「そうではなくて、国が遅いだけの話です」と来ました(笑)「国民にささる、そういう政策を掲げ、かつ速やかに実行することが必要だ」とも述べ、首相をはじめ、政府・与党幹部は歯噛みしたでしょうね。

「異次元の少子化対策」首相表明の舞台裏

実は、この舞台裏を垣間見ることができる記事が、毎日新聞デジタルの名物コラム「14色のペン」にあったのでご紹介します。1月17日、くらし医療部・横田愛記者の記事で、タイトルは「霞が関をざわつかせた年頭の首相の一言」です。

毎日新聞デジタル「霞が関をざわつかせた年頭の首相の一言」
https://mainichi.jp/articles/20230116/k00/00m/040/103000c

何が、霞が関をざわつかせたのか――。先ほど、岸田首相は4日の年頭会見で「異次元の少子化対策に挑戦する」と表明したと言いましたが、何もメニューを示さなかったわけではなくて、その第一に「児童手当を中心とした経済的支援の強化」を挙げました。

ところが、これが厚生労働省をはじめとする霞が関の官僚たちには寝耳に水、想定外だったんです。記事には「テレビ中継でこの発言を聞いた事務方幹部は『びっくりした』と目を丸くし、別の政府関係者は『迷走している』と吐露した」とあります。

岸田政権の少子化対策はこれまで「全世代型社会保障構築会議」で議論を重ね、2022年末に公表された報告書で優先課題とされたのは、生まれてから2歳までの支援拡充や、育休を希望する自営業者・フリーランス向けの給付創設などでした。それが、年頭会見でいきなり、児童手当の拡充が最優先になったわけです。小池発言があったからかどうかは分かりませんが、「報告書のメニューでは地味だ」という官邸の判断だったようです。

まあ、有識者の意見は意見として政治判断することは、あっていいと思います。ただ、この件に関していえば、児童手当の拡充を後回しにせざるを得ない事情がありました。「財源」です。

児童手当は中学生までの子どもに1人あたり月5,000円~1万5,000円を支給するもので、2022年度の給付総額はおよそ2兆円。国と地方、事業主などが負担し、国の負担分だけでおよそ1兆1,000億円です。拡充となればさらに兆単位の財源が必要で、防衛費増額の財源もままならない中、見通しは立っていません。首相は否定しましたが、自民党の甘利前幹事長は消費増税の可能性に言及して、野党の反発を招きました。それくらい難しい話なんです。

また、横田記者は「そもそも自民党は、所得制限なくすべての子どもに現金を給付するとした旧民主党の『子ども手当』を真っ向から批判し、撤回させた政党」ではなかったか、と、その厚顔ぶりにも驚きます。だって、子ども手当撤回に際して自民党は「民主党の『子どもは社会で育てる』というイデオロギーを撤回させ、第一義的に子どもは家庭が育て、足らざる部分を社会がサポートする、という我が党のかねてからの主張が実現した」と、自慢していたのですから。凄い“宗旨替え”ですよね(笑)財源も含めて、首相がどういう説明をするのか、国会論議を見守りたいと思います。

こんなに違う保育料! 首都圏での子育て支援格差

一方、小池知事の少子化対策は、子育て世代にも大きな波紋を広げています。首都圏での子育て支援格差です。

実はそもそも、財政が豊かな東京都の子育て支援は充実しています。例えば医療費は23区全てで、所得制限なしに中学卒業まで無料。千代田区や武蔵野市などはさらに高校生まで無料で、今年4月からは都内全域で高校生まで無料になる方向です。認可保育園の保育料も、全国水準に比べて安く、首都圏で比べると特にそうです。

保育料は2019年に始まった「幼保無償化」で3歳から5歳は無料ですが、0歳から2歳は有料です。この額、自治体によってかなり開きがあって、保育園を考える親の会が発行する「100都市保育力充実度チェック 2022年度版」によると、都内で一番保育料が安い渋谷区は、モデル世帯で月額8,850円。23区内は最高でも3万2,500円で、ほとんどが1、2万円台です。

一方、横浜市は同じ比較で月額3万8,000円、さいたま市は4万4,000円ですから、ただでさえ差があるのに、さらに2人目は東京ならタダ。そのうえ月5,000円の給付もあるとなれば、「東京へ引っ越したい」という声が上がるのも、もっともです。だって、家賃が上がっても、その分ある程度は吸収できますから。

ちなみに、この「100都市保育力充実度チェック」によると、全国主要都市の0~2歳児の保育料は、安い順に名古屋市29,400円、堺市3万円、札幌市3万250円などで、残念ながら福岡市は3万9,300円、北九州市は3万9,900円と、高い方にランクされています。

ただ、保育園の入りやすさ=入園希望者が実際に入れた割合=で言えば、福岡市は主要都市で2番目に高い93.4%です。先ほど、保育料が都内一安いと紹介した渋谷区は73.9%ですから、いくら安くても入れなければ意味はないわけで、子育てのしやすさは、もちろん一つの指標だけで決まるものではありません。

それでも、支援策に関して「格差」があるのは事実で、国が一律で拡充しない限り、自治体間の格差はさらに広がると考えられます。若い世代の定着や流入を増やすための競争ともいえるもので、東京都が子育て支援を充実する背景にも、コロナ禍のリモート勤務などで住環境の良い周辺部や地方に人口が流出したことがあると考えられます。

各地の支援策や政治家の声をチェック

折しも、間もなく引っ越しシーズン。これから結婚や出産を考えている方や、子育て中の方はぜひ、候補地の子育て支援策も比べて探すことをお勧めします。特に、東京や大阪など大都市圏に就職したり転勤したりする方は、市や区をまたぐだけでずいぶん違うので、必須です。私が今回、データを引用させてもらった「100都市保育力充実度チェック」は1冊送料込み988円で買えますので、参考にしてください。

今年は統一地方選の年。そこに向けて各党・候補はおそらくこぞって子育て支援の拡充を打ち出すでしょうが、言うのは簡単、でも実現は財源問題などで厳しいのが現実でもあります。さて、どうするんでしょう? まずは国会で与野党が示すメニューに注目しています。

金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』

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2023.01.27
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