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地球温暖化を映す海 越冬するクマノミ・玄界灘に定着

亜熱帯に生息するクマノミが九州北部の玄界灘で越冬し、住み着いているという驚きの事実をカメラが捉えました。原因は『地球温暖化』。毎年のように発生する豪雨も温暖化の影響と指摘されていますが、その変化はなかなか目に見えません。地球の面積の70%を占め、温暖化の影響を受けやすい海が、その深刻さを映し出しています。
佐賀県唐津市の玄界灘に、ぽつんと浮かぶ離島・馬渡島(まだらしま)。広い海を自由に泳ぐ魚たち‥玄界灘は豊かな漁場として知られています。海の中を進んで行くと、そこには亜熱帯で生息するクマノミの姿がありました。かわいらしい姿で私達を癒してくれるクマノミですが、この時期にクマノミが玄界灘で見られるということは、海の中で大きな異変が起きていることを示しています。それも、良くない異変...。

唐津市の玄界灘で、ダイビングショップを経営する浪口さん。10年ほど前から亜熱帯の海に生息するクマノミが、南から日本海側に流れ込む暖かい海流「対馬暖流」に乗り、玄界灘に辿り着くことはあったと言います。ただ、海が冷たくなる冬になると死んでいたそうです。ところが、5~6年前から、玄界灘に辿り着いたクマノミが冬を乗り越えるようになり、さらに去年は大きな変化が見られました。

これは(4枚目)去年の夏、唐津市の玄界灘で撮影された写真。画面左上に映っているのはオレンジ色はクマノミです。下には赤い粒のようなものが見えます。これは、ふ化したばかりのクマノミの赤ちゃん。ダイバーの浪口さんによると、去年、クマノミのペアは子供を2回産んだそうです。子供を産んだということが意味するものとは...?「最低水温が上がってクマノミが子供を産める環境だと判断した。玄界灘の海の質が大きく変わっているように思う。」と浪口さんは語ります。
去年12月に、国が発表した地球温暖化に関する報告書によると、世界で工業化が始まった120年ほど前から現在までの気温上昇はおよそ1℃。国の報告書の策定に関わった九州大学の竹村教授は、その1℃の一番大きな現象は『豪雨が増えていること』だと言います。気温が1℃上がると、空気中に含むことができる水蒸気の量は7%増加。たった1℃...そう感じる変化ですが、この気温上昇が私たちの暮らしに計り知れない影響を与えているのです。

私たちの暮らしに、暗い影を落とす温暖化。その変化は目に見えづらいですが、地球の面積の70%を占め、太陽の熱エネルギーを受け止めている海は、温暖化がもたらす影響を色濃く映しています。5年前は、岩場にワカメが群生していた海も、現在はそこにワカメはいなくなり、比較的暖かい地域に生息する別の海藻や柔らかいサンゴで覆われていました。さらに、熱帯や亜熱帯地域に生息する南方系のサンゴも定着していました。

温暖化の影響は漁業にも...!唐津市の漁師さんたちの話では、近年、毒をもった魚や、5月くらいから長い期間サメが網にかかるようになったと言います。サメがとれている時はサメが他の魚を食べてしまうため、他の魚がいなくなってしまう...。1℃の気温上昇が、海の生態系を大きく変えているのです。
地球規模で工業化が進む中、2015年に締結されたパリ協定では、まだ産業革命が始まっていなかった120年以上前と比べて、「気温上昇を2℃未満に抑える」という目標が掲げられました。温暖化を最小限に食い止めるのが目的ですが、すでに1℃ほど上がっている気温を、あと1℃程度の上昇におさえることが前提となっています。

しかし、各国が出している2030年や2050年の目標を足し算していく予測によると、「世界の平均気温は3℃高くなる」と竹村教授は言います。竹村教授らは、世界の平均気温の上がり方が、パリ協定が目標に掲げる水準にとどまり、今後、1℃ほどしか上昇しなかった場合と、対策を怠り、さらに3℃上昇した場合に国内で何が起こるかを予測しました。20世紀の終わり頃と、21世紀の終わり頃とを比較。その結果、水害をもたらす非常に激しい雨の回数はさらに1℃上昇した場合は1・6倍。3℃上昇した場合は2・3倍に増加。また、沿岸部の水面の高さは、1℃上昇の場合、およそ40センチ。3℃上昇の場合、70センチ上がる予測となりました。今後、一人ひとりが意識をもって行動をしないと、私たちの子供や孫たちは地球に暮らせなくなると言います。

海が映す地球温暖化。玄界灘に定着したクマノミは、私たちの暮らしに警鐘を鳴らしているのかもしれません。

2021年3月26日放送


タダイマ!  毎週月~金曜 ごご3時40分

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