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島の宝は“野の草”

海に浮かぶ島々からなる熊本県天草地域。天草の地名は、古来に多くの人々の疫病を救った薬草を「天の草」と呼んだことに由来するとも言われており、昔から薬草とつながりが深い地域である。この島で薬草を栽培し、地域の人々の生活向上を目指す挑戦が始まった。

天草社はオリジナルのハミガキなどオーラルケア製品を全国に販売する会社。地元に若者の働く場所が少ないことから、高校教師だった橋本亜三生さん(73)が13年前に定年を機に興した会社である。企業の理念は雇用創出。雇用を増やすために、現在は弁当・惣菜の販売や耕作放棄地を借り受けての農業などの事業展開も行っている。

事業を展開する中で見えてきたのは、天草地域の高齢化の実情。急速に高齢化が進み、年金だけでは生活維持が困難な高齢者も多い。そこで天草社では薬草を使った新事業を始めることにした。薬草の苗を地域の高齢者に配布して育ててもらい、天草社が買い取る。少しでも現金収入を増やして生活向上に役立ててもらうという試みだ。

薬草は“野の草”として自生する島の宝。その島の宝を使って地域の課題に取り組もうとする小さな会社の挑戦を追う。

天草社
住所 熊本県天草市浄南町59-3
TEL:0969-24-3697(担当:ツグミ)

取材後記

取材中に天草社の橋本さんと雑談しているときのこと。「天草四郎が江戸幕府と戦ったときの軍資金はどこから出てきたか知っていますか?天草の薬草を全国に販売した利益が軍資金になったそうです。言い伝えですが…。」橋本さんの話には、あくまでも「言い伝え」という前置きはありましたが、そのような話が残っていること自体、天草に豊富な薬草があることを示すエピソードです。

私の取材メモには、畑に植え付けした植物はヤブカンゾウ以外にもコシアブラ・ヒメウコギ・ツボクサ・コゴミ・畑ワサビ・セリ・ウルイ・スイカズラ・ヤマニンジン・ボタンボウフウなどの名前が書いてあります。
種類が増えると天草社のスタッフが大変です。それだけの数の植物の名前を覚えなければなりません。「いつもは野菜を育てていますので、なかなか覚えられなくて困っています…。50種類にもなると、どれが何なのかわからなくなりそうです…。」

取材スタッフも大変でした。雑草を抜かないので、春になると、どこそこに雑草も生えていて、何が何だかわからないのです。立っていると、「そこは○○がありますので、踏まんでくださいね」と教育的指導を何度も受けました。

畑にいるときは、ほのぼのした気持ちになる取材でした。おそらく、この取り組みが本格的に動き始めるのは1年後です。天草の人々が、ここで生きていくための挑戦。大きく道が拓けていくことを願ってやみません。

担当 RKK 熊本放送 薛 力夫

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