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子供ひとりで公共トイレは“危険”?犯罪者が狙いやすいトイレ「入り口」のレイアウトが関係

外で子供を遊ばせる機会が増える夏休み。「ひとりで行っておいで」と子供だけで公共トイレに行かせてはいないだろうか。犯罪者は、子供が性暴力だと気づかない程度にとどめて解放することも少なくなく、親も子も被害に気づかないこともあるという。専門家は、公共トイレが「性犯罪の温床」になっているのではと危惧している。それにはトイレのデザインが関係していた―。

7分の1は“沈黙”、自覚のない子供の被害者も

「入りやすく、見えにくい」、犯罪者が狙う場所には共通点があると犯罪学に詳しい立正大学の小宮信夫教授(ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科修了)は話す。まさしく公共トイレがそれだ。トイレで起きる犯罪の典型に性犯罪がある。法務省が16歳以上の3500人を対象に行った調査(2019年)によると「過去5年間に性被害に遭ったことがあるか」という問いに対して35人(1%)が「はい」と答えた。そのうち「捜査機関に被害を届けた」のは5人。「被害を届けるほどではないと思った」と考える人もいて、性犯罪は顕在化しにくい傾向がある。

 

子供の場合は、実態の把握がより難しくなる。小宮教授は「子供を狙ったほとんどの性犯罪は、性犯罪だと子供にバレない程度に事を済ませ、解放するからだ」と言う。過去には「虫歯を治してあげる」と言いながらキスをした事件もあった。防犯カメラがあるから安心だと思う保護者もいるかもしれないが、被害者本人に自覚がなければ“証拠”も埋もれたままだ。子供は被害に気づかないこともあることを前提に、大人がトイレに付き添うことが現時点で最も有効な対策とされている。思春期が近づき嫌がる子供もいるかもしれないが、小宮教授は「せめて小学校高学年までは親が一緒について行くべき」とすすめる。

男女の入り口が近い公共トイレに潜む“危険”

スペインのトイレ設置例

 

小宮教授が世界100か国ほどのトイレを独自に調査したところ、日本には構造的に犯罪が起きやすい“危険なトイレ”が多いという。男女の入り口が近いトイレが多いことが主な理由だ。入り口が遠く離れた場所にあるレイアウトと比べると、直前まで異性が一緒にいても不自然ではない。

 

殺人事件の起きた熊本県のトイレ(小宮教授提供)

 

熊本県内のスーパーでは、2011年に多目的トイレで女児(3)が男(20)に殺害される痛ましい事件が起きている。このトイレは男女と多目的の3つの入り口が直線上に配置されていた。小宮教授の言う“危険なトイレ”だ。犯行前、男は近くで女の子を物色していたとされているが、周囲は異変に気づかなかった。

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この記事を書いたひと

大北瑞季

1994年生まれ 愛知県出身 主に福岡・佐賀での裁判についてのニュース記事を担当。 プライベートでは1児の母であり、出産や育児の話題についても精力的に取材を行う。

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