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「高齢ドライバーが安心して生きられるように…」池袋暴走事故の遺族・松永拓也さんが願う社会

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2019年に東京・池袋で乗用車が暴走し11人が死傷した事故で、車を運転していた飯塚幸三受刑者が老衰のため死亡したことがわかりました。93歳でした。この事故では松永真菜さん(31)と娘の莉子ちゃん(3)が死亡したほか、9人が重軽傷を負いました。車を運転していた飯塚幸三受刑者は、法廷で「暴走の原因は車の故障」と主張しましたが、禁錮5年の実刑判決を言い渡され、刑務所で服役していました。それを受け、RKBラジオ『仲谷一志・下田文代のよなおし堂』に出演した死亡した松永真菜さんと莉子ちゃんの遺族で、関東交通犯罪遺族の会・あいの会、松永拓也さんが高齢ドライバーへの思いを語りました。

2人の命を無駄にしないために

仲谷一志(以下、仲谷):まず、今回飯塚受刑者が死亡したと聞いたとき、どんなお気持ちでしたか。

松永拓也さん(以下、松永さん):そうですね。正直少し複雑な気持ちで、ただご冥福をお祈りしようというふうに思ったのと、やっぱり妻と娘も非常に無念だったと思うんですが、飯塚氏は凶悪犯罪というよりも過失犯で、亡くなる前にですね大きな責任を背負いながら刑務所で亡くなる結果となったのは無念だっただろうという風に思うと、天国で妻と娘に一言謝ってほしいという思いはあるんですが、ただそれ以上の感情はもうあまり持たないようにしているというか…。正直、刑務所で最期を迎えたっていうことは胸が痛む思いがあったっていうのが正直な感想ですかね。

仲谷:そんなお気持ちになられたのは、やはり5年間の中でのいくつかの経緯の中でなられたのですか?それともやっぱり刑務所で最後亡くなったということがそのような思いに繋がったのでしょうか?

松永さん:彼と面会をしたりとか手紙のやり取りをしたりとか、そういった経緯の中で私が妻と娘の命を無駄にしないために、再発防止、同じような交通事故を少しでもこの社会から減らしていきたいんだっていう思いに彼は答えてくれたんですよね。そういった中で、その思いに応えてくれたそのことに関しては感謝していたので、そういったのも含めて少し複雑な気持ちになって冥福をお祈りしたいなというふうに思った次第ですね。

下田文代(以下、下田):でも、その冥福を祈るっていう言葉が出るそういう気持ちに自分を持っていこうってどうやったらそういう心境になれたのか…やっぱり憎さとか、どうしようもなさっていうのが心の中にあると思うのですが、どうしてそういう心境に至ることができたんでしょうか?

松永さん:憎しみはゼロかって言ったらそれは絶対嘘になってしまう。やっぱり妻と娘の命を奪われて以上、憎しみっていうのはもちろんあります。ただやっぱり、私は妻と娘の遺体と5日間共に過ごして、その中で葛藤した中で「2人の命を無駄にしない」と2人に約束したんです。なので、その5年間、思いを胸に活動してきましたから、やっぱりそれが私の心の芯にあって、そのために彼とも面会をしました。だから、やっぱりそれが第1目標であるので、そういう心境になるのかなというのはあります。憎しみは消えないけれども、やっぱり次に真菜と莉子のような被害者と私たちのような遺族を、もう誰にも体験して欲しくないっていうのが第一番にあるので、こういう感情になっているのかなとは思います。

誹謗中傷した中学生へ「他人の命も自分の命も大切に生きて」

仲谷:ニュースにもなりましたけれども、中学3年生の女子生徒・14歳から、非常にひどいメールとかが送られていたようですが、あのような誹謗中傷というのはこれまでもあったんですか?

松永さん:この5年間で数え切れないほどありました。ただ、なるべく自分の心を守るレイヤーと、具体的行動を起こすレイヤーで分けて考えているんですけど、自分の心を守るためには「この人はこういうふうに感じるんだな」と思うようにして、でも自分は「やるべきことをやればいいんだ」と自分に言い聞かせる。ただ、一定のラインを超えたものに関しては、毅然とした対応、法的措置はしっかりと取ると。この2つの使い分けるようにしていました。

下田:14歳の少女の未来を考えてあえて毅然とこの対応するっていう風におっしゃいました。松永さんは相手のことを考えて行動されていますよね。

松永さん:そうですね。未成年がこういった殺害予告まで至るというのが、本当に私も動揺して困惑して、悲しさというのもありましたし、自分もかつて娘がいた身でしたからすごく衝撃と悩みもしました。ただ、やっぱりこうやって毅然と対応して、社会的責任を求めるということによって、短期的に見れば「中学生相手にかわいそうだ」と思う方もきっといらっしゃると思うんですが、その子の人生を長い目で見たときに考えると、この先を生きていくためにはきっとプラスになるのではないかと思いました。彼女が私に対して、「殺す」とか「死ね」という言葉を使っていましたが、私はこの5年間「命」と向き合って活動してきましたので、そういう点も踏まえて「他人の命も自分の命も大切に生きていく」ということに繋がるといいなと思って、まずは毅然とした対応をとっていこうと考えた次第ですね。

飯塚受刑者にも伝わった「再発防止への思い」

仲谷:飯塚受刑者ともお会いになっているようですが、その時どんなふうに感じられましたか。

松永さん:お会いした時はもうほとんど言葉も出てこないような状態で、もう車椅子に寝たきりのような状態で、私としても驚きだったんですけれども、私が「世の中の高齢者の方に伝えたいことはありますか?」と聞いた時に、「免許返納について考えてほしい」とはっきりと述べられていたので、彼の強い意志だったのだろうな、向き合ってくれたんだなと感じました。

下田:最初の印象と、その最後に会ったときの印象っていうのは変わりましたか?

松永さん:最初はいろんな理由があって、彼も自分自身の身を守ろう、ご家族を守ろうと考えられて主張をしたのかなと思います。それは法治国家ですから、彼が自分の身を守ろうとするのは、私は否定しないんですけれども、ただ刑務所に収監された後に、多分彼は彼でいろいろ考えた結果、私の再発防止にかける思いに触れて、そういうふうに考えてくださるようになったのかなと感じました。

免許を返すに返せないという現状も…交通の足を整備へ

仲谷:これから交通法規はどうあるべきだと思われますか?

松永さん:私は高齢ドライバーの方々を「免許返納さえすればいいんだ」なんて全く思っていなくて、免許編をするにあたって、特に地方では生活の足がやっぱり充実していなくて、返すに返せないという事情があると思います。だから交通法規というよりも、そういった方々の交通の足というのを、どういうふうに社会が改善していくのかが、大事かなと思っています。免許制度については、適正な運転技術を担保するのが運転免許だと思いますので、高齢ドライバーに限らずそういったものをより改善していくことが必要かなと思います。また、同時に車の技術面がより今後向上していく中で、ありとあらゆる面で高齢ドライバーの方々が安心して生きていくことができる社会になっていくことっていうのが、私は大事かなと思っています。

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