2005年頃、大楠にあった「Goh助」というカジュアルなバーに通っていました。この店は今や国内外で人気を博す「Goh」の福山剛シェフが、親しかった鮨店「忠助」の松本忠助さんと共同でやっていた店で、それまで大名のレストランで働いていた佳奈さんが一人で店を切り盛りしていました。
佳奈さんのお酒好きで明るく、いい意味でざっくりとした人柄により多くの常連がつき、近所に住む佳奈さんと同世代の人たちや福山さんや松本さんをはじめとした飲食関係の人たちなど、様々な方々でいつも遅い時間まで賑わっていました。
ところが開店して2年ほどで「Goh助」は閉店します。理由は佳奈さんが結婚して渡仏することになったから。店のオーナーだった福山さんと松本さんも、「この店は佳奈ありきの店だから」と、佳奈さんの退店とともに潔く店も閉じることにしたのです。
その後、佳奈さんたち夫婦は南仏のレストランで働きながら2人のお子さんを育て、7年間をフランスで過ごします。
2014年頃、帰国したのですが、福岡には戻らず湯布院に居を構え、2年後の2016年に自分たちの店「La Verveine(ラ ヴェルヴェンヌ)」を開きました。
ぼくは年に一度湯布院に行く用事があるので、そのたびにそこで食事をし彼女たちとは会っていたし、たまにイベントなどで福岡に来たときに会ったりすることはあったものの、「Goh助」という場を懐かしむ気持ちがなくなることはありませんでした。
そんな気持ちは佳奈さんも同じで、またいつか福岡で「Goh助」みたいな店をやりたいという気持ちを密かに温めていたそうです。
そうしたところ、「Goh助」の常連でもあり、ずっと髪を切ってもらっていた美容室のオーナーから、「警固の古民家に移転するんだけど、そこの一部で店をやったらいいんじゃない」という話が舞い込みます。
個人的には「福岡で店をやるとしても2人の子供が高校を出た後かなぁ」なんて漠然と思っていたそうですが、そんな好条件の話があったことに加え、下の子供が進学のため福岡に住むことになったこともあって、「福岡でまたバーをやる」という夢が急に現実味を帯びたものになってきました。
警固本通りにあるサニーの真裏にある真っ白な一軒家が美容室の「ladder flat」。そして4月、その店の前面で営業を始めたのが佳奈さんの新しい店「yuta(ユタ)」です。佳奈さんはほぼ毎週湯布院に戻り「La Verveine」を手伝ったり、季節によっては「ななつ星」で料理を提供したりしているので、店の営業はイレギュラーで週に2、3日といったところ(インスタで要チェック)。
カウンターのみの立ち飲みで、目線の先には美容室がみえます。「yuta」の営業は14時から21時までなのですが、中には「yuta」の営業日に美容室の予約を入れて、髪を切った後、「yuta」に移動してお酒を飲んで帰るという人もいるようです。
ぼくをはじめ「Goh助」の常連だった人にとっては「Goh助リターンズ」といった気持ちが強いものの、経営も違うし、出してるものも違うし、店舗の雰囲気も前とは対極のような感じで、20年前と変わらないのはカウンターに立っている佳奈さんくらい。でも、これが一番嬉しいことで、店にとっても一番大事なことです。
店に入るとワインのおつまみプレートと好きなドリンクが1杯出てきますので(1,500円)、あとは好きなもの(主にワイン)をグラスやボトルでオーダーします。
その他のおつまみはナッツやチーズやシャルキュトリーくらいと思っていたのですが、実はパスタもあるらしいし、「La Verveine」で作った煮込み料理などを出せることもあるそうなので、小腹が空いているときは尋ねてみるとよさそうです。「Goh助」ファンの間では当時人気だったカレーの復活を待ち望んでいると思いますが、素人目に考えても、カレーの匂いが立ちこめる美容室はちょっと迷惑だろうから、これはおそらく実現しないんじゃないかな。
看板もないし、告知もほとんどしていないので、まだまだお客さんはそんなに多くないけれど、かつての「Goh助」がそうだったように、彼女の人柄で新しいお客さんが増えていくのは間違いないでしょう。
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