PageTopButton

認知症と診断された場合、遺言書は無効なの?弁護士が教える相続に一番大切なこととは…

2025年には認知症患者は700万人を超え、65歳以上の5人に1人が認知症を発症すると言われています。今回は認知症になる前の相続の心得を、いかり法律事務所の弁護士、伊藤裕貴さんをスタジオに迎え、一緒に考えます!

65~69歳までの人の認知症は、全体で2,9%ですが、80歳以上で21.8%、85歳以上は41,4%、90歳以上で61.0%、95歳以上はなんと79.5%となっています。実は認知症になった人は25年ほど前から認知症が始まっていると言われています。80歳で認知症が発覚した人は55歳から少しずつ進行していることになります。
だからこそ、認知症になる前に、親が元気なうちに財産などの話をすることが大切です。
医師から認知症と診断され、意思能力がないと判断された場合、それ以降に書いた遺言書は無効となります。認知症と診断される前であれば基本的には有効とされます。但し、認知症と診断される前日では意思能力がなく無効であると判断される可能性が高くなります。遺言書は何度でも書くことが出来、日付が一番新しいものが有効となります。思いがある場合には、早めに書くことをお勧めします。

しかし!相続をした家に残債があった場合はどうでしょうか?実は通常住宅ローンの場合は加入時に団体信用生命保険が掛けられ、所有者がなくなった場合には全額保険から出ますので残債は完済になり、相続人が払うことは無くなります。

では、遺言書に名前が書かれていない実の子供はなにももらえないのでしょうか?
その場合は”遺留分”という「一定の相続人に保障されている最低限の相続分」をもらえるという制度があります。書状がある場合は、家庭裁判所に訴え、遺留分を請求することができます。自宅の価値が2000万円の場合、裁判で勝てばおよそ250万円程度の遺留分がもらえます!が!そのことで勃発する身内の争いのほうが面倒です。ですので、親が元気なうちに家族できちんと話し合いをすることが円満のポイントとなります。
皆さんは、成年後見人制度をご存じでしょうか?「成年後見人」とは認知症などが原因で判断能力が低下した人のために法的な手続きを代理補助し、財産の管理を行う、という制度です。成年後見人の対象者は、認知症のため自分でお金の計算や入院・介護契約ができない、知的障害があり何度も借金を繰り返してしまう、精神障害があるため妄想状態になり正常な判断が困難…などの方が対象となります。

弁護士がすることもありますが、多くのケースは親族や友人などがなる場合もあります。成年後見人になるためには、家庭裁判所に申請が必要となり、家庭裁判所の決定がないと成年後見人になることはできません。
父に4000万の資産があり、遺言書に基づき、子供たちに2000万円ずつを渡す、と書かれてあった場合でも、妻の遺留分として成年後見人が主張した場合、妻にも相続が渡ることになります。今回、父からの相続分は3人とも非課税の対象ですが、数年後、母が亡くなった時には、基礎控除を超える5000万円の相続となるため、基礎控除額を上回る800万円に相続税が徴収されます。
実は、母親が夫からの相続を受け取らなければ、母からの相続も非課税で受け取ることができたのですが、母の成年後見人は、母の財産を守らなければならないいう責任があり、このようなことがことが起きることもしっかりと理解することが大切になってきます。

また、認知症になる前であれば「家族信託制度」というものもあります。これは、地域の公証役場に行き、手続きを行うことで不動産や財産ごとに管理をしてくれる制度。受託者の意向に沿って進められるため、成年後見人のようなトラブルが起きにくいとされています。
認知症は電話では気づきにくく、久しぶりにあった時には認知症を発症していた!というケースは少なくはありません。

ですので、認知症になる前に、親子間でしておくべきチェック項目を抑えておきましょう。

□印鑑や通帳の保管場所を共有
□不動産の情報を共有
□借金を含む財産目録を作成(住宅や自動車ローンの情報も確認)
□自筆証書遺言を書くか、事前に決めておく(手書きは費用が安く、家庭裁判所で形式を確認)
□エンディングノートを書く(自分の気持ちや様々な保管場所を記入。パソコンやスマホのパスワードも記入)

なかなか話しづらい事柄でもありますが、お盆やお正月など帰省をする時期に、親子で確認することが大切になりますね。

この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう