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蔵のまち・松本

暮らし

映画「岳」。作品の中心になるのは、もちろん山ですが、街=松本のシーンも出てきます。街なかでも空気が澄んでて、それがフィルムにのっかってるのがまたステキ。実在のお店もロケで撮影され登場したりしています。
例えば、新人山岳救助隊員・椎名久実(長澤まさみ)の歓迎会が行なわれる居酒屋「萬来」。JR松本駅にほど近い、座敷とテーブル、カウンター席の4~50人くらい入るお店です。店内に入ると、「ああっ!ここにカメラを置いてお座敷に向かって撮ったんだ~」とか「ああ、ここにまさみちゃんと佐々木蔵之介さん(山岳救助隊長役)が来たのね…」なんて、すぐにわかります。「岳」宴会ごっこができますな。ふふ。大将の萬勝弘さんに撮影当日テーブルに出した料理を聞くと「松本の郷土料理中心ですね。岩魚の塩焼き、山賊焼、サラダ。馬刺し…も出したかな?」とのこと。ちなみに山賊焼とは、鶏肉をタレに漬け込んで大きいままから揚げにし、スライスして出される松本の料理です。店ごとにこだわりがあるのですが、萬来はにんにくやショウガをベースにした秘伝のタレと胸肉を使うのが特徴だそう。味そのものは薄めで、表面こんがり中がジューシーに仕上げるとか。ロケに日は、朝6時から夕方5時までぶっとおしで撮影が行なわれたそうで、料理を出す店のスタッフは厨房に固まって見てたそう。映画を見る時、チェックしてくださいね。さて、この「萬来」、登山客が多いお店なのだそう。登る前が登った後に必ず立ち寄るという人のいるとか。登山家の長谷川恒男さん(ヨーロッパアルプスの三大北壁の冬期単独登攀を世界初成功)も、山から下りるといつも飲みにいらしてたのだそうです。サインが店内にありました。居酒屋の前身は登山客向けの旅館だったので、その流れが今も続いているんですって。何となく山を感じられるような店内の雰囲気、ぜひ楽しんでください。

続いて街なかロケポイントは、女鳥羽川にかかる橋の上で右往左往する主人公・三歩(小栗旬)。この人、山の上ではスーパーマンなんだけど、街に下りると方向音痴になってしまうんですねえ。その右往左往の背後に見えるのが蔵の街並み。割とありこちで見られますが、一番雰囲気があるのが中町通り。360mほどの長さの通りに、蔵を活かした、また蔵風に建てたお店が並びます。和小物の店「三和」の庵谷陽子さんは、「お客様に『落ち着いた感じで昔みたいな雰囲気がいい』とか『小さいけれど独特の雰囲気だ』とか『個性の強いお店が多くておもしろい』とか言っていただくので、嬉しい」とおっしゃいます。女鳥羽川をはさんで武士の居住区と商人街が分かれてて、江戸時代から10代続く履物屋さんもあると教えてくれました。庵谷さんのお気に入りは、朝の山。「川のところまで出ると、きれいに見えるのよ。夕方もいいかなあ。」と、おっしゃいます。三歩がうろうろした橋の上から、山の姿を見上げましょう。
※ 中町通り → http://www.mcci.or.jp/www/nakamati/

そして、映画「岳」に出てくる美味しそう!なシーン。それが山頂で三歩がコーヒーを淹れて飲むシーン。おそらく雪を温めて淹れるんでしょう。標高2~3000mで飲むコーヒーの味…すばらしいだろうなあ…。…ん?んんん?ちょっと待った。気付いてしまったぞ、私。北アルプスの山々の雪解け水が地中深く浸みこんで、何千年~何万年の時を経て湧き出したのが松本の水ではないですか!ということは、三歩の飲んでるコーヒーにひけをとらないくらい美味しいコーヒーが、市内で飲めるということです。おすすめは、中町にある=女鳥羽川ほとりの喫茶店「まるも」。元々旅館からスタートして、そちらは100年以上。喫茶が加わって55年です。100年を超える建物、どっしりとした松本民芸家具が配された店内、そしていつもクラシック音楽が流れているのが「まるも」の特徴です。昨年90代半ばで亡くなられたマスターの後を継いでいるのがお孫さんの三浦文博さん。10年ほど前に神戸から松本に移ってきました。店内にクラッシック音楽が流れているのは、先代の「皆さんにクラッシックを聴いてほしい」という思いからだそう。先代は戦争に行って死にかけて、「生きて帰れたら、大好きな音楽を聴いていたい」と思ったそうです。おじいちゃんの思いを引き継ぎ「まるも」を続けていく中で、三浦さんが大切にしていることは“変えないこと”だそう。クラシック音楽も民芸家具も、建物も、そしてコーヒーの味も…。「何十年かぶりに、ここで青春時代を過ごした人が帰ってくるので、『変わってないね』って、『何年経って来ても懐かしいね』って言ってもらえるようにって思うんです。『街並みが変わっちゃってわかんない』ということが多いから、せめてココだけでも残るように、って思ってやってます」と、おっしゃいます。なるほど。その思いがあるゆえに、初めて来た私にとっても“懐かしい”店と感じられるのかもしれません。三浦さんが信州に来てびっくりしたのは「難しい話が好き」な人が多いことだったそう。政治の話とか熱心に話すお客様が、特に昔からのお客さんには多いそうです。ほかにも、一人で来て手紙書いたり、本を読んだり、友達とゆっくり時間を気にせず話しこんだり、みなさん思い思いに過ごされるようです。「観光客の方は、来てぱっとコーヒー飲んで、すぐ出られる…というのが多いんですけど、ぜひ、ゆっくり過ごしてほしいし、ぼーっとできる時間を提供するお役にたちたい」ともおっしゃってました。松本街なか散歩のひと休みには「まるも」、オススメです。

○ FDA → http://www.fujidreamairlines.com/

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