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すごい!九州大学カイコ!

シルクは古代、同じ重さの「金」に交換されたと言われクレオパトラや楊貴妃も愛したという『繊維の女王』だ。「シルクロード」で世界に広がり数千年の品種改良の末、人が手を加えないと死んでしまう完全に家畜化された唯一の生き物となった。九州大学では100年以上前からカイコの飼育や研究を続け世界をリードする存在なった。

九州大学大学院農学研究院の日下部 宜宏教授(53)が目指しているのは、カイコに感染するウイルスにヒトの遺伝子を組み込み、さらに組換えウイルスをカイコに感染させることで遺伝子組み換えワクチンを生産することだ。このワクチンは国内ですぐに作れて安全、コストもかからない。カイコを使った、「昆虫工場」を稼働させれば、遺伝子組み換えワクチンがすぐにでき、パンデミックを防げるという大きな可能性を持っている。

日下部教授はカイコの「昆虫工場」を、去年4月、九大発「昆虫」ベンチャー1号として『KAICO株式会社』を設立した。九州大学は突然変異したカイコ500系統を毎年育てており量・質ともに世界一だ。その中からワクチンやタンパク質源としての昆虫食にも適するカイコを選び改良して世界を救う研究が進んでいる。
■取材先
会社名:九州大学
担当者:日下部 宜宏
九州大学大学院・農学研究院・教授 / 昆虫科学・新産業創生研究センター長
住所:福岡市西区元岡744 九州大学伊都キャンパス
電話:092-642-2111(代表)

取材後記

九州大学が昆虫学に強いとは聞いていましたが、そのすごさの一端に触れることができました。

日本では1909年にカイコの繭生産量が世界一になるなど、絹糸で外貨の半分を稼いたようです。

しかし養蚕業は海外の安い絹糸や化学繊維に敗れ、いまや壊滅に近い状態です。そうした中でカイコの糸を良く出す系統だけでなく突然変異体のさまざまな能力を持つカイコを450系統も大事に生体維持してきた九州大学の長い研究の成果が今、羽ばたこうとしています。日下部宜宏教授がめざすカイコ由来のワクチンなどバイオ医薬品の優秀性が九州大学発の第一号ベンチャーKAICO社で現実のものになる日が待ち遠しいです。
担当:RKB毎日放送 山田尚

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