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どこで潮目が変わったのか? 政治家の「言葉」を追いかけた北九州市長選挙

テレビ討論会で見えてくるモノ


候補者が論じ合うテレビ討論会は、民主主義国家の選挙において重要な役割を果たしている。お隣の韓国では、大統領選挙などでテレビ各社が何度も討論会を開催する。画面を通じて候補者の政策だけでなく、その言葉や表情から人間性も感じることもできる。2022年の大統領選挙でもテレビ討論会が投票行動に影響しているのを目の当たりにした。
福岡市の高島市長が誕生した12年前の福岡市長選挙でRKBは討論会を開催した。今回の北九州市長選挙でも、構図が固まった頃から「討論を聞いてみたい」という市民の声が広がっていた。16年ぶりに新たなリーダーが決まる重要な選挙であり、RKBは今回も討論会を企画。毎日新聞との共催で準備を進めた。

津森氏「不参加」の真相


11月にまず津森氏本人に討論会への参加を打診し、「スケジュール次第」との回答を得た。ただ、津森陣営の幹部は、記者に「メリットがない」と発言、参加に消極的だった。
このため、忙しい日程をこなす他の3候補には大変申し訳ないが、開催日は一任してもらい、津森陣営に「スケジュールは全てあけている」として参加を正式に依頼した。だが、津森陣営は「時間がない」と回答するのみだった。改めて陣営に確認したところ「4つのテレビ局合同の討論会なら参加する」との返答があった。津森氏本人に他にやりたい社がなかったら参加するか尋ねたところ、「そういうことです」との回答を得た。
結局、他のテレビ局に討論会を開催する動きがなかったため、改めて依頼したが、「不参加」という答えは変わらなかった。津森氏本人は「詳細はちょっと事務所の方に聞いていただけたら」と発言。選対本部長を務めた大家敏志参議院議員の説明は、「日程が合わなかったと思うんですよね」だった。陣営幹部や支援団体関係者などにも繰り返し依頼したが、参加してもらうことはできなかった。


その津森氏本人が選挙戦の終盤で突然、討論会について「参加条件」を出していたと言い出し、非常に驚いた。「開催場所ややり方」についてあたかも条件提示をしていたかのように発言していたが、そのような提案はなかった。マイクを使った選挙活動が終わった後、津森氏に真意を尋ねようとしたが、ここでも言葉を発することは無く、見解を聞くことはできなかった。
討論会に参加するかしないかはもちろん自由だ。参加するつもりがないのであれば、そう伝えてもらえれば良い。ただ、津森氏側の言葉と対応が変遷していったことは、政治家の対応として非常に残念だった。

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この記事を書いたひと

今林隆史

1976年生まれ 福岡市出身 政治・経済などのニュース取材に加え、ドキュメンタリー番組の制作にも携わる。第58次南極観測隊に同行。JNNソウル特派員として韓国の大統領選挙(2022)などを取材。気象予報士・潜水士の資格を有し、環境問題や防災、水中考古学などをライフワークとして取材する。 番組「黒い樹氷~自然からの警告~」で科学技術映像祭 内閣総理大臣賞(2009)、「甦る元寇の船~神風の正体に迫る~」同映像祭 文部科学大臣賞(2013)など受賞。