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どこで潮目が変わったのか? 政治家の「言葉」を追いかけた北九州市長選挙

諸刃の剣? SNSで晩節を汚した北橋市長


違った意味でSNSの影響を感じさせられた選挙でもあった。選挙戦最終日に、津森氏を応援する北橋市長が「武内氏が自民党に推薦願を提出したものの、それが叶わなかった」「その頃から武内氏による北橋市政への批判が激しさを増す」と投稿。翌朝、削除した。自民党福岡県連は、武内氏から推薦願は出ていないと表明。武内氏の陣営は「この内容は事実無根で公職選挙法違反の疑いがある」として警察に相談している。
RKBが選挙後、初めて北九州市役所に登庁した北橋市長に確認したところ、「表現の仕方が適切ではなかったと遺憾に思っている」と回答。事実誤認を認めたが、武内氏に選挙戦で批判されたことに対する反論だと主張していた。ただ、反論と事実誤認は全く別の問題だ。選挙期間中に現職の市長が虚偽の内容をメッセージとして発するのはどうなのか? これまでの北橋市長のイメージを自ら壊す行為で、「晩節を汚した」と話す北九州市民もいた。

地元出身のアピールは有効なのか?


今回の選挙戦でも、「地元出身」を強調する候補がいた。ただ、生まれた場所がどれほど重要なのだろうか? 去年行われた福岡市長選でも新人の候補が選挙カーの目立つところに「福岡市出身」と書いていた。福岡市のような人口流入が多い自治体で「市外出身」の市民に対して、何を訴えたかったのだろうか? 外からの目線を持つ人がその地域のさらなる発展につなげることもある。地元出身であることをことさら強調する候補は、他にアピールする点がないのかと疑問に感じた。

新市長はどのような「言葉」を発信するのか?


武内氏はこれから単身、巨大組織に乗り込む。さらに、今回の選挙で敵対した与野党の市議らと相見えることになる。ミイラ取りがミイラになる事例も多い。批判してきた北橋市政が直面してきた人口減や財政難、街の活性化などの難題に当事者として取り組むことになる。
成否を握る鍵となるのは、選挙戦の際に繰り返してきた「市民の声を聞く姿勢」と「発する言葉」にある。この姿勢を貫くことができるのか、厳しくチェックしていきたい。

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この記事を書いたひと

今林隆史

1976年生まれ 福岡市出身 政治・経済などのニュース取材に加え、ドキュメンタリー番組の制作にも携わる。第58次南極観測隊に同行。JNNソウル特派員として韓国の大統領選挙(2022)などを取材。気象予報士・潜水士の資格を有し、環境問題や防災、水中考古学などをライフワークとして取材する。 番組「黒い樹氷~自然からの警告~」で科学技術映像祭 内閣総理大臣賞(2009)、「甦る元寇の船~神風の正体に迫る~」同映像祭 文部科学大臣賞(2013)など受賞。