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未曾有の豪雨か、行政の不作為か 「浸水から3年、床は今もぶよぶよしたまま」 住民たちは裁判に踏み切った

全国で相次ぐ大雨による被害。自宅が浸水した住民たちは、その後どのような暮らしを送っているのでしょうか。3年前の豪雨で甚大な被害を受けた住民たちは、行政の責任を問う裁判に踏み切りました。

住民69人が市に5億4000万円の損害賠償を請求


裁判に踏み切ったのは、2020年7月の豪雨で約800世帯が浸水し2人が死亡した福岡県大牟田市の三川地区の住民など69人です。「事前の対策を怠り、当日の対応も誤った」として大牟田市に5億4000万円あまりの損害賠償を求めています。

「裁判で明らかにするしか・・・」原告住民の訴え


22日、福岡地裁久留米市部で開かれた初弁論。原告のひとり原口順至さん(80代)は、意見陳述書を読み上げ、裁判官に訴えました。


「浸水した雨水は、たまったままで流れていきません。何もかもが一緒になって、糞尿混じりでかなり臭い、すごい匂いです。耐えられないので2階に上がりました。翌日2階の物干し場から眺めると異様な光景に呆然としました。一面の水、湖でした。こんなにひどいとは思っていませんでした」「それからが大変です。冷蔵庫、洗濯機、クーラーの室外機、机、書庫、畳などの重いものは息子たちに頼み処分しました。高価な着物類、衣類、押し入れの下三段分、床のカーペットなどもすべて捨てました」「浸水から3年経った今でも、畳、クロス、扉は剥がれたままです。床も、ぶよぶよしたままです。国からの支援金では到底足りません」「今回の被害では、足の悪い80代の弱者を真っ先に救助しなければならないのに、残念ながらお二人が亡くなられました。それぞれ大変な被害にあっています。大家さんから浸水した建物を壊すから出ていってくれ、と言われた人もいます。引越し先のあっせんもなく行くあてもありません。濡れた畳は廃棄され、床の上にブルーシートを敷いて生活しているのです。裁判官の皆さん、ぜひほかの原告の話も直接聞いてください」「私は被害にあった方々の話を聞いているうちに、私が先頭に立って動いていかなければならないと思いました。大牟田市の責任を明らかにするために、裁判するしかないと思いました」

鍋底状の地形 住民は浸水対策を求めていた


訴状によると、三川地区は、周囲よりも標高が2~3メートル低い窪地状・鍋底状の地形で、大量に雨が降った場合は、周囲の雨水が三川内区に流入し、これまでも道路の冠水や床上浸水が度々発生していました。このため、今回の訴えの対象となっている2020年の豪雨の3年前(2017年)にも、地元の住民が大牟田市に豪雨対策の要望書を提出していました。

排水ポンプ「無防備な状態で放置されていた」


しかし、原告によると、「その後大牟田市が対策をとることはなかった」といいます。
三川地区には、雨水を、隣接する川に流す排水ポンプが設置されています。しかし、1977を最後に、40年以上大規模な設備更新や改築工事は行われておらず、その排水能力は、市の整備計画の43%しかなかったということです。

「最大2メートルの浸水が46時間続いた」


住民が訴えている2020年の豪雨では、三川地区の排水ポンプ自体が浸水し、浸水は46時間あまり続きました。
原告は、「大牟田市は、効果的な対策を講じる必要があったにもかかわらずこれを怠った。人災だと言っても過言ではない」と訴えています。

大牟田市「未曾有雨の雨だった」


一方、大牟田市は、22日の初弁論で、請求の棄却を求めました。大牟田市は、「亡くなられたお二人のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様にお見舞い申し上げます」とした上で、裁判については「未曽有の雨で水害が起きているので争わざるを得ない」などと話しています。

浸水対策どこまで


大雨で被災したあとも、完全には以前の生活に戻れない住民の現状が浮き彫りになっています。温暖化による異常気象で今後も予想される集中豪雨。浸水リスクの高い土地は全国に点在しています。国や行政に求められる役割が増す中で、今回の裁判の行方が注目されています。

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