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「元寇の船」3隻目の発見か 海底で船体の一部とみられる木材を撮影 “海の遺産”保存が課題に

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今林隆史

鎌倉時代に九州北部に襲来した「元寇の船」がこれまで2隻見つかっている伊万里湾で、新たに船体の一部とみられる木材などが見つかりました。3隻目の発見となる可能性があるということです。海底に眠る遺跡の歴史的発見は、同時に保存という課題も突きつけています。
 

佐賀県と長崎県の県境に位置する伊万里湾

佐賀県と長崎県の県境に位置する伊万里湾。その湾口にある長崎県松浦市の鷹島沖で10月14日から始まった発掘調査。木材などが見つかった現場は、音波探査などで国学院大学 の池田栄史教授のグループがこれまで2隻の「元寇の船」を発見した際と同じような反応があった場所です。

国学院大学 池田栄史教授
「継続的に調査を入れていって、もっとこういうものもありそうだとか。アクティブな情報を出し続けていくということが、多くの国民の皆さんの関心を高めていくことにつながっていくだろう」

水深約15メートルの海底に

RKB今林隆史記者
「今回海の底からいったいどういったものが見つかったのか、これから潜って撮影してきます」

水深約15メートルの海底で、泥の中から見えてきたのは3隻目となる可能性がある船体の一部です。

RKB今林隆史記者
「海底面から1メートル掘り下げたところに木材が並んでいます。板材のほか丸太のような木も見えますが、そのさらに先にも多くの木材が残されています」

中国船の特徴的な構造を確認

船内を仕切る隔壁など中国の船の特徴的な構造が確認されたほか陶磁器なども見つかっていて、蒙古襲来=元寇の船の一部とみられます。

国学院大学 池田栄史教授
「板材が出てきた、その板材は南北方向に出ていたんですよ。南北方向に板材がずっと並ぶのかなと思ったら、今度はその底に2本の下に今度は東西方向に並ぶ板が出てきた」

「継続調査し元寇船の引き揚げめざす」

今年の調査で発掘できたのは、南北4メートル東西7メートルの範囲だけで、松浦市は来年度以降の調査継続を検討しています。
 


松浦市文化財課 内野義課長
「将来的に松浦市としては元寇船の引き揚げを目指したいというふうな大きな目標を掲げております。その中でどの船を引き揚げるといいますか、選択肢を増やすことも一つ大きな課題だと思っています」

今回の調査は文化庁から委託された松浦市が実施したパイロット事業で、福岡市や宗像市などの自治体の担当者が水中での調査の様子を視察しました。
 


福岡市 埋蔵文化財課 松村祐奈さん
「福岡市にも海があり、元寇ゆかりの地でもありますので、いつか機会があれば、水中考古学にも携わってみたい」

水中考古学への関心は高まるが

今年8月に、松浦市の鷹島で開かれた水中考古学の講座には全国各地から学生が集まるなど、関心は高まっています。ただ、歴史的な発見の先に必要とされる保存や活用の方法については危機感を強めています。
 


国学院大学 池田栄史教授
「学問的な調査研究のレベルの課題から次第にこれを保存活用していくという行政としての文化財の取り扱いの問題へと今移行しつつあります」

引き揚げたあと保存する場所がない

遺物を保存する技術の研究は進んでいます。水槽に浸けられているのは元寇の船の碇です。去年10月に引き揚げられたもので、約1年半におよぶ塩分を取り除く処理がこの夏終わり、糖類の一種トレハロースをしみこませて木材を補強する作業が進んでいます。トレハロースを使うことで、従来の方法よりも時間を短縮できるうえに、湿度や温度を管理しやすくなります。将来の元寇船の引き揚げも見据えた作業ですが、肝心の問題が解決されていません。
 


松浦市文化財課 安木由美さん
「海にあるものを引き揚げようとすると、処理の装置もないですし、揚げた後どこに保管するのかという問題もあります」

現在の施設は市町村合併前の旧鷹島町が建設したものです。すでにこれまで引き揚げた遺物だけで手狭になっていて、これより大きな船そのものを引き揚げても処理や展示する施設がありません。

松浦市文化財課 安木由美さん
「次に大きいものを引き揚げたら、別の施設とかを作らないと最終的にはできないんじゃないかな」

先を行く韓国の文化財保護行政

水中から見つかった遺物をどう保存していくのか。池田教授が11年前に視察した韓国では、南西部の木浦に沈没船の発見をきっかけとして博物館が建設されました。

さらに、韓国・中部の泰安には池田教授が視察した後の2018年、水中遺跡に関する2つ目の博物館も開設され引き揚げられた船などが展示されています。

「海の遺産」後世に残して

トップダウンで進む韓国とは違い、自治体から積み上げていくボトムアップの形を取る日本。これまでの2隻の「元寇の船」は池田教授が獲得した科学研究費を用いた調査で発見されたもので、調査の継続性と体制が問題となっています。
 


国学院大学 池田栄史教授
「こうした日本で初めての海底遺跡としての国指定史跡ですから、国の文化庁でどのように保護活用していくのかという方針をしっかり定めてその方向で動いていただきたい」

周りを海に囲まれ海洋国家を標榜する日本ですが、海の遺産に対する取り組みは寂しい状況にあると言わざるを得ません。歴史的な発見の成果をどう生かし後世に残していくのか、大きな課題が突き付けられています。

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この記事を書いたひと

今林隆史

1976年生まれ 福岡市出身 政治・経済などのニュース取材に加え、ドキュメンタリー番組の制作にも携わる。第58次南極観測隊に同行。JNNソウル特派員として韓国の大統領選挙(2022)などを取材。気象予報士・潜水士の資格を有し、環境問題や防災、水中考古学などをライフワークとして取材する。 番組「黒い樹氷~自然からの警告~」で科学技術映像祭 内閣総理大臣賞(2009)、「甦る元寇の船~神風の正体に迫る~」同映像祭 文部科学大臣賞(2013)など受賞。

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