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有田発、飲食店から支持される器店の実店舗がオープン

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料理と切っても切れない関係の器。お気に入りの器があるだけで、料理をすることや誰かをもてなすことがより一層楽しくなるものです。作家ものや民芸、アンティーク、世界各国の器まで、収納場所に困るほど器を集めてしまうライターの森脇美奈さんが、こだわりのセレクトが光るお店を紹介していきます。

すっかり年末も押し迫り、みなさん忙しい時期を過ごしていることかと思います。そんな時こそゆっくりとお気に入りの器で食事やお茶の時間を楽しみたいものですね。今回、一年の締めくくりに訪れたのは、10月にオープンしたばかりの注目店「TOKITOIRO」です。佐賀県有田町にある飲食店御用達の器専門店「田代陶器店」が手がけていて、一般向け、飲食店向け両方の器が販売されています。浄水通り沿いのマンションの1階に位置する店舗はスタイリッシュな外観が目を引きますね。

扉を開くと現れるのは、独創的な装飾が施されたまるでアートギャラリーのような空間。店内は2つのゾーンに分かれ、入ってすぐのスペースには一般向けの器が集められています。

店舗の奥は飲食店向けのプロフェッショナルゾーン。料理もおもてなしもワンランクアップしそうな素敵な器がずらりと並んでいます。飲食店を営んでいなくても美しい器の数々を見るだけでも心が満たされますね。一般の人も、1つの商品を5点以上まとめると購入できるそうです。

明るい笑顔で迎えてくれたのは「田代陶器店」の代表・田代憲督さん。有田町で美術品店を営む家に生まれ、有田焼の作家である叔父さまの作品に触れて育った田代さんは、幼い頃から自然と器に関わる仕事をすると思っていたそうです。高校時代をイギリスで過ごし、東京で働いたのち有田へ戻り、24歳で器の道へ。器の商社での勤務を経て2011年に「田代陶器店」を開きました。多くの逸品を見てきた経験を存分に生かした器選びは飲食店から支持され、数々の有名店の器を手がけるように。さらに器の販売に加え、飲食店のアドバイザーとしても活躍し、厚い信頼を得ています。

そんなふうに飲食店へと提案していた器選びを一般の人にも広げたのが「TOKITOIRO」です。店名は、十人いれば十色の個性があるように、器にもそれぞれの魅力があることを表現した“十器十色”という造語に由来しています。また、「時」と「彩(いろ)」という意味もあり、時を重ねていくうちに愛着がわき、生活に彩りを添えるものになればという思いも込められているそうです。

「TOKITOIRO」が誕生したきっかけは田代さんの奥様・典子さんがSNSなどを見て「うちの器をもっと多くの人に使ってもらいたい」と思ったこと。器のセレクトも、有田町の陶器店に生まれ育った奥様を中心に行っています。「有田では高い技術をもつ作り手がだんだん減ってきています。多くの方の目にふれ、よさを感じてもらうことで、伝統産業である有田のやきもの文化を守ることにつなげていくことができればと思っています」と田代さん。ゆくゆくは自社で生産体制を整えることも視野に入れているそうです。

店内には、有田焼を中心とする器をはじめ、九州はもとより全国から厳選した作家の器が並んでいます。磁器や陶器、ガラス、そして絵付けがあるものからシンプルなものまで素材も作風もさまざま。田代さんが陶磁器メーカーと共に開発したオリジナルプロダクトもあり、右の写真の赤い釜「贅沢二重丸」は、飲食店で使われているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。

個人で窯をもつ作家の作品も揃っています。なかでも唐津市「天平窯」の岡晋吾さん、さつきさん夫妻の作品(写真左)の充実ぶりはファンなら見逃せません。また愛知県瀬戸市で制作を行う片瀬和宏さんの作品(写真右 手前)のようにポップな作風のものあり、一つひとつをじっくり吟味したくなります。

店内に張り巡らされた漆喰塗りの木も独創的でアーティスティック。大阪にある設計事務所「KURU」の建築士・水谷光宏さんが「TOKITOIRO」をイメージしてデザインしたそうです。

今回も気になった器を紹介します。日本酒をおいしく飲むためにつくられた「kidate(器だて)」シリーズは、店舗設計を手がけた水谷光宏さんと一緒に作り上げたもの。有田の原点ともいえる白磁にこだわり、シンプルかつミニマルでありながら緻密にデザインされた酒器です。左から「そこ丸 ロックグラス」(3,960円)、「そこ丸 こぼしちょこ」(4,840円)、「クキ MARU」(17,600円)。ころんと丸い「そこ丸」シリーズとステム付きグラスの「クキ」シリーズがあり、どちらも手に触れる部分は素地を感じる無釉薬、口に触れる部分には繊細な釉薬を施しなめらかな口当たりに仕上げたものです。有田を深く知る田代さんならではの器ですね。

こちらもオリジナルプロダクトの「美思ノ理(みことのり)」シリーズ。奥様の典子さんがプロデュースを手がけるもので、有田で活躍する絵付師・MIKOTOさんとのコラボレーション作品です。MIKOTOさんと典子さんの名前をかけ合わせたネーミングも素敵です。古い有田焼の形や絵付けを取り入れた、クラシックでありながら現代の感覚にフィットする器です。左から時計回りに「梅蔦鳥文 隅切角皿」(6,600円)、「草花蔦唐草文 木甲小鉢」(7,500円)、「魚藻海老蟹文 隅入角皿」(7,370円)。

そして「天平窯」の岡晋吾さん、さつきさんの作品。全国的に人気が高く、どのお店でも品薄なことが多いのですが「TOKITOIRO」には店内のいたるところに岡さん夫妻の作品があり、静かに興奮しながら素敵な作品の数々に見入ってしまいました。どこか時を経た趣を感じる形状や染付に独特の魅力があり、手に取らずにはいられない作品たち。出会う度に1つずつ揃えていきたいものです。左から時計回りに「色輪花文 オーバル皿」(6,050円)、「染付蔦紋 四葉向鉢」(7,700円)、「呉須色絵 よろけ文様 輪花」(17,600円)。

スタイリッシュな店構えでありながら、代表の田代さんをはじめスタッフさんのみなさんもとてもフレンドリーで、器談義を楽しんでいたらあっという間に時間が過ぎて行きました。福岡にまたひとつ素敵な器のお店が増えてうれしい限りです。

店舗名:TOKITOIRO
ジャンル:物販店
住所:福岡県福岡市中央区浄水通3-37 浄水グランドコーポ1F
電話番号:092-600-9686
営業時間:11:00~18:00
定休日:月・火曜
URL:https://tokitoiro.com/

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この記事を書いたひと

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