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新生児集中治療室から在宅へ 孤立する親子が「これが息子の世界」と思えるまで 

1月、全国各地で行われた成人式。この日を、「これまでよく生きてくれた」と特別な思いで迎えた家族がいる。障害のある息子と歩んだ20年は決して平坦な道のりではなかった。何が、悲しみの中にあった家族を笑顔に変えたのか。

20歳のお祝い 祖母は涙ぐんだ


成人式のあと、由美さんと学さんは、親族に声をかけてホテルで食事会を開いた。

村岡学さん
「気づいたら20年という月日があっという間に過ぎて、自分たち夫婦だけではここまで来れなかった。みんなに色々支えてもらいながらここまで来れて嬉しい。きょうは友喜を囲んで飲みながら食べながらたくさん話してほしい」

由美さんは、袴姿の友喜さんに、スプーンで大好きなコーラを飲ませた。

祖母 香月陽子さん(81)
「涙が出ます。よく頑張ったなって思いますね。友喜もですけど、由美と学くんで。みんな明るくなったでしょう。友さんのおかげで家族が一つになった気がします」

学さんの両親も、息子夫婦を案じてきた。

村岡カツエさん(81)
「まさかきょうの日が迎えられるとは思いませんでした。何より、由美さんと学、ふたりの努力といいますか、いつも『ふたりに足をむけて寝られないね』と言うんでうよ」

先が見えなかった30代 50代の今は


由美さんにとってはどんな20年だったのだろうか。

村岡由美さん(50)
「友喜が生まれてすぐの頃、何もかもが大変で先が見えなくて、一歩踏み出そうとするたびにうまくいかないことが多くて。毎日が苦しくて。でも弟の大生が生まれたあたりから普通の暮らしができるようになった気がします。ちょうど友喜が気管切開して呼吸器をつけたころから笑顔が増えて。『うちの子はどうしてこうなんだろう』ってその気持がある間はずっとつらかったけど、『友喜は友喜なんだ。友喜が楽しければこれが友喜の世界なんだ』って切り替えスイッチが入ったころから楽しくなった。これからも、みんなに愛されながら、皆に笑顔を届けながら友喜らしく生きてくれたら嬉しい。それから、わたしたち親も、自分らしくあるためにはやっぱり働きたい。私が働くようになってからずいぶん切り替えができるようになったんですよ。そういう機会に恵まれたからすごく幸せだったと思います」

ニーズ高い「医療型ショートステイ」


こども家庭庁によると、医療的ケアが必要な子供の数は、2万385人(2023年)。人工呼吸器の管理を必要とする子供の数は、2022年までの10年間で、2・3倍に増えた。
介護する家族の負担は大きい一方で、サポートする「医療型ショートステイ」は足りていないという国の調査もある。2018年1月時点で、地域に医療型ショートステイが不足している、と回答した事業者は84・2%にのぼっている。親子が孤立しないよう社会全体で支える仕組みが必要だ。(こども家庭庁・厚生労働省の調査)
 

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