JR黒崎駅前の街並みは、メインストリートの「ふれあい通り」を中心にした放射線上に広がっている。昭和初期の都市開発計画においてフランスのパリなどヨーロッパの街区をお手本にしたといわれ、戦後から高度成長期にかけて駅前商店街は大いに賑わった。その後、「鉄冷え」といわれる経済不況によって商店の多くがシャッターを閉めたが、近年は飲食店を中心に徐々に活気を取り戻しつつある。そんな黒崎駅前で、安くて旨い寿司を食べさせる店として地元客の人気を呼んでいるのが、「鮨屋台 握り屋」だ。

店は駅前アーケードからやや離れた場所にあるビルの2階。30代のはじめに脱サラして開業した大将の松枝景太さんは、「なるべく家賃を抑えて、その分いいネタを提供したかった」と、あえてこの物件を選んだという。屋号に「鮨屋台」を付けたのも、屋台並みのリーズナブルな価格で寿司を提供したいという心意気の表れだ。

階段を上ってカウンターに座ると、目の前のガラスケースには新鮮なネタがズラリ。新鮮な魚を少しでも安く提供するために、松枝さん自ら魚市場に足を運んで品定めをしているという。北九州沖の響灘で獲れる地魚はもちろんのこと、国産の本マグロやウニ、クジラといった高級食材も並んでいる。刺身や握り、一品料理は単品でもオーダーできるが、ここは迷わず大将イチオシという「豪華十点刺盛りと十二貫握りコース」(6,600円)を注文した。

コースの内容は、小鉢とサラダに、刺盛り10点、握り12貫、汁物の構成。まずは、魚の煮付けをつまみにビールを飲みながら、しばし刺盛りを待つことに。

大皿に盛られた刺盛りは、「これが1人前?」と目を疑うほどのボリューム感。しかも、あろうことか本マグロの大トロの上にはウニが鎮座し、大ぶりに切られたクジラのベーコンといった高級素材が惜しげもなく並んでいる。他にもタイラギ、シマアジ、赤エビ、ヒラメ、マダイ、ヒラマサ、サーモン等など、魚好きには堪らない旬魚のオンパレード! 鮮度もバツグンで、それぞれの持ち味が存分に楽しめる。これだけ多彩な種類の魚を一度に食べ比べできるのも、なかなか得がたい経験だ。

ビールから日本酒にチェンジしてひと息つくと、いよいよ真打ちである寿司の登場だ。刺盛りと同じく大皿に盛られた握りは、小ぶりなシャリにやや大きめのネタという組み合わせで、日本酒を飲みながら食べるのにちょうどいいサイズ感。刺盛りと共通のネタのほかにアオリイカ、ホタテ、車エビ、穴子、玉子などが加わり、食べ応えも十分だ。

そして極めつけが、別皿で提供されるスペシャリテの「大トロ・ウニ・イクラのせ」。この日は山口県萩産のウニが入荷しており、3つの特選素材が渾然一体となった味は何とも筆舌に尽くしがたく、いつまでも記憶に残るであろう一貫だった。

刺盛りは1人前(7点)1,650円からで、刺盛りと握りのコースは3,300円から。酒のアテになる一品料理も豊富に揃っているので、その日の腹具合や懐具合によってオーダーの仕方も自由自在。まさに屋台感覚で使える、駅前の大衆寿司屋だ。
ジャンル:寿司、海鮮料理
住所:北九州市八幡西区黒崎2-9-15 ミルクビル2F
電話番号:093-645-4356
営業時間:17:00~OS21:30
定休日:日祝日
席数:カウンター8席、テーブル16席
個室:なし
メニュー:おつまみ3点セット1,320円、刺盛り1人前1,650円~、七貫握り2,200円、刺盛りと握りのコース3,300円~、手巻き寿司660円。出汁玉子焼き660円
URL:https://tabelog.com/fukuoka/A4004/A400404/40024365/
この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう