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魚・酒・スパイス好きのツボをぐいぐい刺激!平尾の隠れ家的な居酒屋へ

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肴と魚を愛し、日本酒を愛で、おまけにスパイスも大好き。そんな私のツボをぐいぐいと押しまくる、魅惑的な居酒屋に出合ってしまいました。

住所は平尾……といっても、お店の場所はやや薬院寄り。西鉄大牟田線・薬院駅から高架沿いを歩くこと5分、路地先にひっそりと「酒香(しゅこう)じでん」はあります。和食×香辛料の組み合わせで魅せる、今年4月にオープンした大注目の一軒です。

店を営む寺田亘佑さんと紘子さん夫妻が、温かく迎えてくれました。福岡や東京の割烹で日本料理を、酒販店でお酒のことを、海鮮居酒屋の店長を務めるなかで魚介の扱いを学んだという寺田さん。やがて東京の三軒茶屋でスパイスを組み合わせた創作イタリアンの店に出合い、そこでスパイスの自由な使い方に開眼したと言います。

「カレーじゃないスパイス料理。辛味でなく、香りや風味で素材を引き立てる、アレンジを効かせるのが楽しいと思ったんです。例えば和食ではワサビ、生姜、大葉、柑橘といった薬味・香味を使いますが、これをスパイスで表現したら面白いなって。
18歳でこの道に入ったものの、一時は音楽活動をしていたこともあり、僕は生粋の日本料理の職人とはちょっと違う。でもだからこそ自由な発想で、培ってきた技術や繋がったご縁も総動員して、個性が光るお店を出したいと考えたんです」と寺田さんは笑顔で話します。

店内はカウンターを主体に、奥には掘りごたつ式の小上がり席もあり、一見するとしっぽりできる和食居酒屋の佇まい。しかし、壁に飾る紘子さんの妹さんが手掛けた絵画や流れる音楽には、ひと味違うセンスが光っていて、空間からすでに絶妙な“スパイス使い”を感じられます。

寺田さん夫妻は20代の頃、東京で互いにバンド活動をしていて、それをきっかけに出会い結婚。地元・福岡での独立を決めてからは、バイクを二人乗りして、新潟や石川県の能登半島、三重県の伊勢にいる友達の元を巡りながら帰ってきたと言います。おしゃれなメニュー表や軒先に吊るされた杉玉は2人の友人が作ってくれたものだとか。

また、妻の紘子さんはタイ料理店に長らく務めていた経験があり、開業前は「ちょいさぼ」にも立っていたそう。メニューには「トムヤム唐揚げ」といった、紘子さんのアイディアを元に作る一品もそろっています。

インスタグラムでお店を見つけた時から、私の良店レーダーがビビッと反応していましたが、それはお通しの時点で確信に変わりました。お通しは2、3種類から選べるようになっていて、いただいたのは「鯛の骨味噌海苔巻き」。鯛のアラに残った身をほぐして……というのはあっても、頭を圧力鍋で炊き、丸ごとすり潰して作っている味噌ははじめてで唸りました。秋田をはじめ、全国各地から選りすぐる日本酒のラインナップも素敵で至福~。

それでは、気になる料理を注文していきましょう。

旬の魚介は長浜の鮮魚店に自ら出向いて目利きし、仕入れ。驚いたのはスパイスを絶妙に組み合わせる煮魚と蒸魚です。魚の種類は仕入れにより変わり、この日の蒸魚は「イサキのハーブ蒸し」(1,950円)でした。イサキの表面に「カピ」というタイ料理で使われるエビペーストをサッと塗り、レモングラス、こぶみかんの葉と共に酒蒸しにしているのですが、これがうまい! ナンプラーは使わず、仕上げの香草は三つ葉なので、東南アジア料理に寄りすぎることなく、イサキの香りや味わいがしっかりと生きています。お皿の上に残ったスープまで絶品で飲み干してしまいました。

煮魚は醤油ベースですが、アクセントに加えるスパイスをマーガオ・ホアジャオ・ティムールペッパーの3種類から1つ選ぶことができるそう。次はこちらも食べてみたいです。

さらに「魚にはこのスパイスを少し乗せてもおいしいですよ」と出してくれたオリジナルの調合スパイスセットにも感激しました。
ココナッツファインに唐辛子を合わせた「ポルサンボル」や、ナッツとゴマが主体の「デュカスパイス」、トマトを乾燥させるところから手作りの「自家製イタリアンスパイス」、オレガノとコリアンダーが効いた「ローマスパイス」など、どれもすごくおいしい。これ、ぜひ商品化してほしいです!

記事のタイトルには「魚」と入れましたが、肉料理だって負けてはいません。スパイスを効かせたマリネ液に漬け込んで焼いた「じでんの豚バラ串」(400円・写真上)や、紘子さん秘伝の「トムヤム唐揚げ」(750円)は一度食べるとヤミツキに。

低温調理でしっとり仕上げた鴨のモモ肉に、自家製のチュミチュリと香味麹を合わせたソースを添える「鴨たたき」(800円)も格別のおいしさでした。

そして、極めつきは締めの逸品、自家製ラー油香る「魚介 坦々麺」(850円)と「濃厚あら出汁みそ汁」「スパイスおにぎり」(各250円)です。先に言います、これもすごくうまいです!

担々麺と味噌汁のベースは同じ、鯛などの魚のアラを煮出してとった濃厚な魚介出汁。丁寧に下処理し、きっちりと裏漉してあるので臭みやざらつきはなく、寺田さんの腕の良さと魚愛、気配りが伝わります。スパイスおにぎりのほわっと優しい握り加減、自家製のキュウリの辛子漬けにもグッときました。(キュウリに調合スパイスをかけても最高!)

気になる料理やお酒は、今回ご紹介した以外にもまだまだたくさん。「カラカラオレンジ×ティムールペッパー」や「キウイ×カルダモン」など、お店で漬け込んでいる「季節のフルーツとスパイスの焼酎」(850円)もおすすめです。

深夜1時半(日曜は24時)までの営業で、遅い時間のカウンターにはすでに常連になっている人気飲食店の方々の姿も。わかります、これは通っちゃいますよね。朗らかな寺田さん夫妻の接客にも居心地の良さを感じる「酒香 じでん」、ぜひ出かけてみてください。

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この記事を書いたひと

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