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前進の先に|アナウンサーコラム

今月5日で、九州北部豪雨から4年が経った。当日は朝倉市の杷木松末ますえ地区、東林田地区で現状を取材、テレビのリポートを担当した。

頑丈な橋が建設中で、治水対策の護岸工事も進んでいた。護岸は無機質なコンクリート製ではなく、清らかな元の姿を連想させる自然石を使った造り。完全には戻らない故郷の風景を、少しでも自分たちの記憶の限り元に近づけよう、という住民の思いが反映されていた。

一方で、「元々その場所にどんな光景が広がっていたか、4年も経つと忘れてしまった」という言葉も聞かれた。環境の変化に様々な思いが交錯するが、それがなされるのは言わずもがな、そこに住む人のためだ。しかし、その"人"がいなくなる懸念は、住民の焦りにもつながっている。

元々高齢化が進むエリアを襲った豪雨。今も同じ高齢者が復興をも担っている。松末、東林田で異口同音に聞かれた"次の担い手"という言葉は、「災害を乗り越えていく町をもっと知ってほしい」という思いとセットで語られていた。

ボランティアや支援を通して生まれる定着もあるかもしれない。「このままでは、橋と川だけが残る」。今さら私がここで記すには遅すぎたかもしれないが、メッセージとして残しておきたいと改めて思った。

7月17日(土)毎日新聞掲載




佐藤巧
RKBアナウンサー。 大分県別府市出身。
担当番組:タダイマ!たべごころ など。

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