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屋久島の地杉を世界へ

世界自然遺産の島として知られる屋久島。樹齢千年を超える屋久杉は、森の象徴だ。しかし、屋久島では戦後、大規模な伐採が行われ林業が栄えた。 保護される森がある一方で戦後、植林された森がある。建築資材として使うことができる植林された杉は「地杉」と呼ばれている。土壌が薄く厳しい環境で育つ地杉は、油分を多く含む。固く耐久性があり、加えてリラクゼーション効果の成分も多く含むことが分かった。

この地杉を活用し、時代とともに衰退した林業を再生しようというプロジェクトが立ち上がった。名づけて「屋久島地杉プロジェクト」。建築資材を扱い、横浜に本社があるチャネルオリジナルの家山英宜さん(56)と、屋久島で山の仕事に携わっていた時寛之さん(46)を中心に、島の林業関係者が連携。島内での消費が限られる中、地杉を島外に“輸出”し販路拡大を目指す。すでに東京などで住宅や施設など100棟以上の建物に地杉が使われ、その数は増え続けている。「色の変化が楽しめる」「肌触りがいい」など好評だ。

プロジェクトは、単に屋久島の林業復興にとどまらず、保護される森と活用される森の「共存」も視野に入れている。家山さんと時さん、二人の熱い思いを聞き、その挑戦を追う。
■取材先
会社名:チャネルオリジナル株式会社
担当者:中山ゆりえ (広報担当)
住所:横浜市中区太田町2-23 横浜メディア・ビジネスセンター5F
電話:045-900-2753
HP:http://www.channel-o.co.jp/ その他:株式会社 屋久島地杉加工センター
時 寛之(事業統括マネージャー)
鹿児島県熊毛郡屋久島町小瀬田858-3
電話:0997-43-5497

取材後記

屋久島の木というと、屋久杉がすぐに出てきます。樹齢1000年を超える巨木たちで、中でも縄文杉は屋久島の象徴です。屋久杉をはじめ屋久島の木々は、かつて大規模に伐採され、島の林業を支えました。

しかし、自然保護の高まりとともに、屋久杉の伐採は中止されました。 保護の対象になっている屋久杉に対して、植林されて木材として利用できるのが、今回取り上げた「地杉」です。耳慣れない呼び名ですが、屋久島の人里近い森には、植林された多くの人工林があります。この人工林=地杉を活用して、衰退した島の林業を復興させようというのが、地杉プロジェクトの大きな柱です。また同時に、保護されている屋久杉の森と産業に使われる地杉の森の共存を図るという側面も持っています。 人口1万2000人余りの屋久島で、島内で「消費」される木材の量は限度があります。いかに地杉の魅力を屋久島の外の人たちにPRし、販路をつくっていくのか。そして、途絶えてしまった杉の苗木の育成を復活させ、植林と伐採をどう軌道に乗せるのか。屋久島の林業復興の鍵は、ここにあります。

島全体が花崗岩でできた屋久島は、土壌が薄く、杉が成長するには厳しい環境です。だからこそ、「苦労して育つ」地杉は、油分が豊富で固くなるといわれています。本土の杉にない特徴で、いまその価値が注目され、販路が広がりつつあります。 全国に販路を持つ企業と屋久島の林業関係者の連携は、大きな希望です。再び屋久島の林業を復活させ、そしていつかは、“世界がほしがる屋久島地杉へ”。十年単位あるいは、もっと先を見据えたプロジェクトですが、世代を超えた挑戦が続くことになります。
担当:MBC南日本放送 山下浩一郎

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