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難病の子供と家族が年に1度のキャンプで叶えること 「がんばれ共和国」 今年30回目に

難病や障害を抱えた子どもたちが集う年に1度のキャンプがあります。「がんばれ共和国」は今年で30回目を迎えました。ここでしか得られない体験や時間があすへの希望になっています。

130人が熊本・阿蘇に集まった


8月、熊本県阿蘇市に、難病や障害がある子供たちと家族がやってきました。
「がんばれ共和国」と名付けられたこのキャンプ、九州では1994年に初めて開催され、今年30回目です。新型コロナの影響で通常開催は4年ぶり。
「みんな4年間長かったね。こうやって顔を見ることができてうれしい」再会を喜ぶ声があちらこちらから聞こえます。

2泊3日のキャンプ期間中は、ボランティアが子供に付き添い家族の負担を減らします。今年は、19のキャンパー家族とスタッフ、ボランティアあわせて約130人が参加しました。

楽しみのひとつは「大きなお風呂」


参加者の楽しみのひとつが大浴場での入浴です。入浴に介助が必要な子供は、普段ゆっくりと湯船につかる機会があまりありません。この大浴場に22歳になる双子の兄弟の姿がありました。脳性麻痺がある兄の立花真也さんと、真也さんの入浴を介助する弟の紘也さんです。兄弟が初めて「がんばれ共和国」に参加したのは19年前、まだ3歳の頃でした。紘也さんは、「障害児の兄弟ならではの悩みを抱えていた時期もあった」と話します。

立花紘也さん(22)
「子供の頃、自分が熱を出してリビングの端で寝ている時にも、父と母は、障害のあるお兄ちゃんの方に行く、みたいなことがあって。『なんで真也ばっかり』と思ったこともありました。ただ、月に1~2回、兄を施設に預けて自分の日をつくってくれていたので、その部分はすごくありがたかったです」

兄弟が参加するグループも


紘也さんのように障害児の兄弟として参加する子供たちのために「がんばれ共和国」では、「ハイキッズ」というグループを設け、キャンプの運営サポートを任せています。初参加から約20年、大学4年になった紘也さんは、兄の真也さんと過ごす日常や「がんばれ共和国」での経験から、今後の進路を考えるようになりました。

立花紘也さん(22)
「幼稚園教諭、特に障害児を受け入れているところに就職できたらと考えています。兄とはけんかもほぼ毎日するし、蹴られるし轢かれるし、だけど、なんかまあ、双子っていうのもあるけど、兄弟がいてよかったなと思いますね」

夕食は「バイキング形式」で


お風呂が終わると夕食の時間。バイキング形式で、食べきれないほどの料理が並びます。ボランティアスタッフがいるキャンプでは、親や兄弟も、介助や世話が必要な子供のそばを離れて好きなもの自由に選び、ゆっくりと食事をすることができます。

キャンパーからお世話する側になった男性も


キャンパーたちが夕食を楽しんでいるころ、ハイキッズたちは家族同士の交流会に向けた準備をしていました。会場設営を行うのは、後藤乾太さん(26)です。乾太さんは、下半身に麻痺があり、小学3年からの9年間は、キャンパーとして、参加していました。

後藤乾太さん(26)
「もともと足と頭の病気を持っていて、下半身麻痺があるので歩き方がちょっと変だったりする感じですかね」

キャンパーとして参加していた乾太さんにとって、ハイキッズは特別な存在だったといいます。

後藤乾太さん(26)
「いろいろ助けてもらって自分たちが楽しめるようにしてもらえていたので、すごくありがたいというかお世話になったことが大きいです。参加するキャンパーが快適に過ごしてもらえるように、お手伝いができればなと思います」

乾太さんの母・薫さんは、お世話をする側として参加するようになった我が子の成長を心から喜んでいます。

乾太さんの母 後藤薫さん
「生まれてきた時はどうなるかなと思って過ごして。少しずつ経験を積んで、その中で責任とか色々なことを分かってきたのかな」

親も「本音」で語れる場所


このキャンプでは、親同士の交流会やボランティアの交流会も行っています。

参加した母親
「子どもが1か月入院して、この1か月の開放感というか、すごい『重し』だったんだなあって」

介助する日々の大変さを率直に語った母親に、話を聞いていた参加者は、こう声をかけました。

「お母さんが頑張りすぎなくていいと思う」

同じような悩みを抱えているからこそ、日頃の不安や不満を包み隠さず話すことができ打ち解けることができるのです。

メインイベントは熱気球


キャンプ2日目の楽しみは「熱気球」 心待ちにしていた子供たち、天気にも恵まれ阿蘇の絶景を満喫しました。

花火が彩る最後の夜


2日目の夜、「がんばれ共和国」の閉国式が行われ、花火がうちあがりました。

何度も参加者している家族
「ここは実家みたいなものだから、ここ来ると『ああなんか幸せ』と思います。親である私ではないボランティアの方と過ごす2日間は、娘もすごく凄く嬉しかったと思うんですよ」

初めて参加した家族
「今回初めてこのキャンプに参加できて、今、娘も興奮しているところです。楽しい思い出を十分につくることができてよかったなと思っています」

「苦しんでいる家族 参加してほしい」


「ばいばい」「なんかちょっとさみしいね」
最終日の朝、別れを惜しみながら、参加者たちが帰っていきました。中には泣き出す子供も。

第1回からキャンプ長を務めてきた高見俊雄さん(76)は、「がんばれ共和国」についてこう話します。

キャンプ長 高見俊雄さん(76)
「がんばれ共和国っていうのはどこにもバリアしていないんです。拒絶もしてない。難病や障害児を抱えた家族の方、苦しんでいる方々もおられると思いますから、そういう人たちが本当に一組でも二組でも参加してくれたらいいなと思います」

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この記事を書いたひと

奥田千里

2000年生まれ。福岡県北九州市出身。

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