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廃墟はかつての駐在所…800世帯を担う「ポリス橋本」が直面した災害

今年7月の豪雨によって福岡県南部では土石流が発生し、地域の安全安心の象徴でもある駐在所も巻き込まれました。それでも、駐在所の警察官は家族にも支えられて地域の人たちの救助に尽くしました。

廃墟のような建物は、かつて駐在所だった


子供たちに横断歩道の渡り方を教えているのはうきは警察署竹野駐在所の橋本直也巡査長です。駐在所は、交番とは違い、警察官が地元に住み込むこともあって去年の春に赴任してきましたがもうすっかり子供たちとも顔なじみです。

子供「かっこいい」「優しく教えてくれた」
担任の橋本麻南先生「子供たちも顔を覚えているので、何かあった時も言いやすい、頼りやすい」

廃墟のようになっている建物。ここが橋本さんと家族の住んでいた竹野駐在所です。正面玄関には泥がついていて、看板は取り外されています。裏に回ると、壁を突き破って木や土砂が流れ込んでいて、子供用の椅子やタンスが当時の状況そのままに残されています。今年7月10日、九州北部は記録的な大雨となり、竹野地区では土石流が発生しました。この時、橋本さんは、うきは警察署内で災害対応に当たっていて、妻の早紀さんと1歳と3歳の娘しかいない竹野駐在所を土石流が襲いました。
 


橋本早紀さん「がれきみたいになっていると思うんですけど、当時あそこにいたんですよ私たち」「地鳴りみたいなゴゴゴみたな音がしてここって本当は木が植えてあるんですよね。目隠しのように。その木が全くなくてはじめて土砂崩れが起きているって気づいて」

橋本巡査長「私の私物の携帯に『消防団の方から駐在所の裏が崩れて大変なことになっている』という風に電話がかかってきて」

既に駐在所の電話も早紀さんの携帯電話もつながらない状況でした。

「遊んでいる子供たちをすぐ両脇に抱えていたんですけど、一秒もしないうちにすごい太い丸太がこの窓を突き破ってきて土砂が一気に入ってきたんですけど」
「とてもまっすぐ通れるような所ではなった。室外機の上に子供を乗せて、丸太をよじ登ってなんとか脱出をそこまでしたという感じ」

住民が警察署に聞いたこと「駐在さんはどうやった?」


土石流発生で竹野校区に戻った橋本さんは、ようやく家族と再会できましたが家族はすぐに橋本さんを災害現場に送り出します。

橋本早紀さん「心の中では私たちのことが心配でたまらなかったかもしれない。だから会えた時は私たちのことは安心させて他の救助に当たらせることができると思ってすごくほっとした」

被災した駐在所の状況を地域の人たちも心配してくれていました。
 


今村保徳さん(76)「逆にこっちの方が心配して歩いて行って、がらんとなっているから心配してね、みんな署に電話して橋本さん、駐在さんどうやったですかってみんな心配して電話をしていた」

橋本さんが目にした現場は想像以上の被害を受けていました。

橋本巡査長「現場についたら想像を遙かに超えた土砂が流れていて」「逃げ遅れたり避難し遅れた世帯もあったので、道路はほぼ寸断されていたので、2階に逃げるように呼びかけました」

800世帯の家族構成を把握していた


橋本さんはまず、消防と連携して一人暮らしの高齢者や足に障害がある人の家に救助に向かいました。竹野校区約800世帯のほとんどの家族構成を把握していたことが役に立ちました。

橋本巡査長「日頃からの地域の行事に参加したりだとか、巡回連絡簿もありますのでそれを活用して」

橋本さんは日々、地域を巡回して、住民一人一人とのふれあいを大事にしてきました。

今村保徳さん(76)「駐在さんがそこにいてくれるだけで全然違いますよ」
中野督さん(73)「非常に頼りにしています。何かあれば携帯にポリス橋本と入れております。頼りになるどころじゃありませんね。歳は離れているけど友達ですよ」
 


うきは警察署・甲斐康裕地域課長「人付き合いが上手。みなさんが駐在さんというよりも橋本さんと呼ばれる。頑張ってほしい」

竹野駐在所は今、竹野校区コミュニティーセンターに間借りしています。少し環境は変わりましたが、橋本さんの思いは変わりません。

橋本巡査長「(地域住民が)家族のように受け入れてくれてすごく住みやすい、そして働きやすい環境を作ってくれたので、それの恩返しとして私は安心安全な竹野校区を守っていきたいと思っています」

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