まずは問題。「満員の映画館。話題沸騰の感動作が上映されている。心震える作品に、私は号泣した」。この文章の中に、使い方が適さない言葉がある。その言葉とは?
先日放送の中で、言葉の誤用について語り合う時間があった。そこで、間違った意味で使われている言葉が多いことを痛感。ちなみに問題の正解は「号泣」。「大きな声を出して泣き叫ぶ」というのが本来の意味である。想像してほしい。静かな映画館。物語の世界に浸り、涙が込み上げてきたそのとき、隣の人が号泣――。一瞬で現実に引き戻されるだろう。少々、いや、かなり残念である。がっかりして失笑してしまうかもしれない。
……と、ここでストップ! 今、間違った使い方をされがちな言葉がまた出てきた。お気づきだろうか。そう、「失笑」も本来の意味で使われていないことが多い言葉なのだ。「失笑」は、「笑いも出ないくらいあきれる」ではなく「おかしさに堪えきれずふき出して笑うこと」である。あぁ、間違えて使ったことがあったなぁ……。反省。
常々言葉には敏感でいたいと思っているが、完璧に使いこなせている自信はない。言葉は生き物なので、いずれ辞書に載る意味が変わるかもしれない。それも踏まえた上で、正しい言葉が使える大人でありたいと思っている。
11月2日(土)毎日新聞掲載
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