ときには荒々しく、ときには繊細にー。鹿児島のシンボル「桜島」を描き続ける画家がいる。福岡県出身の野添宗男さん(85)。中央画壇とは距離を置き、〝在野の画家″と呼ばれる存在だ。
野添さんの人生を変えた出会いは36歳のころ。武蔵野美術学校を卒業し、東京を拠点に日本画を描いていたが、納得のいく評価は得られなかった。
長いスランプを脱するきっかけになったのは、テレビで目にした桜島。「言葉にできない迫力」に心を揺さぶられ、家族を残して鹿児島へ単身移住。桜島は生涯をかけて描くテーマになった。
半世紀で描いた作品は1万点近く。「息絶えるまでお山とともに」と話す野添さんの創作活動は順調だったが、70代のころ、下半身が動かなくなる難病「黄色靱帯骨化症」を発症し、筆を手放すことを決意した。
本格的な創作から10年近く遠ざかっていた野添さんに再び転機が訪れたのは2024年。2026年春、桜島の小中学校が統合し、小学校が廃校になることを知った美大の後輩たちが野添さんの作品を展示する「ミュージアム」をつくろうと動き出したからだ。「野添さんの作品と生きざまを後世に伝えたい」と奔走する後輩たち。その思いに背中を押され、野添さんは再起を目指す。(MBC南日本放送/池田由紀子)
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