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たんこどん~たった一人の木樽職人~

鹿児島県曽於市大隅町の岩川地区に、今年も木づちの乾いた音がこだまする。
津留安郎さん(63)が制作するのは、焼酎づくりに欠かせない蒸留の工程で使われる木樽蒸留器だ。

 

蒸留器は、丈夫で熱伝導率が高いステンレス製が主流だが、100度の高温と1トンの重さがかかる木樽は、使い続けると傷みや漏れが発生して定期的な交換が必要になる。それでも、県内におよそ110ある藏元の1割ほどが木樽を導入するのは、焼酎の味に口当たりの良さやまろやかさが出るからと関係者は口をそろえる。

 

その木樽蒸留器を作ることができるのは、津留さんただ一人。

釘や接着剤を使わず、設計図もなし。1年で3つ作るのが精いっぱいだ。

そんな木樽づくりは、祖父の代から始まり、時代の流れで一度は途絶えたものの、父親が復活させた。

津留さんは脱サラして47歳のときに、父親に弟子入り。

「技術を習得するのに10年はかかる」と言われる中、父親ががんで他界した。

制作をともにできたのは、およそ4年半だった。

 

「現代の名工」に選ばれた父親の背中を追いかけ、鹿児島の焼酎文化の一端を担う木樽蒸留器の伝統を守ろうと、ひとり奮闘する津留さんの思いと制作の日々を見つめた。

 

( MBC南日本放送/小川直樹 )     

 

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