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『母の味をいつまでも~売り切れ御免のいきなり団子~』

熊本市にある小さな饅頭屋。店頭にあるせいろから湯気が立ち上ると開店時間を待たずに常連さんがやってくる。おかげでいつも午前中には商品が売り切れる人気の店だ。看板商品は熊本名物のいきなり団子。一般的には輪切りのサツマイモを使うのだが、ここではふかしたサツマイモを杵でつき、なめらかにした芋餡と小豆餡を薄皮で包む。一口食べると芋の優しい甘さが口いっぱいに広がり、食べた人の心を鷲掴みにする。

 

客の姿が見えるとゆっくりと椅子から立ち上がり、嬉しそうに出迎えるのは島田輝子さん(83)。店に立って70年近くになる。この店は73年前に母親が立ち上げた。夫を早くに無くし、輝子さんたち7人の子どもを女手ひとつで育ててきた。輝子さんは学校から帰るといつも店で母親の手伝いをしていたという。しかし店がようやく軌道に乗ったころ、大雨による大水害で壊滅的な被害に。

 

休業を余儀なくされるも地域の人たちに助けてもらいながら店は再開。母親の味は長年地元に愛されてきた。母を見送り、店を継ぐことになった輝子さんは娘として母の味を守ることが地域への恩返しだと思っている。
きょうも湯気が立ち上ると店にお客さんが訪れる。笑顔で迎える輝子さん。小さな饅頭屋の何気ない日常を見つめた。(RKK熊本放送/上妻 卓実)

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