田畑竜介Grooooow Up

月~木曜 6:30
没後18年の作家・松下竜一に「改めて光を当てたい」情報提供呼びかけ

没後18年の作家・松下竜一に「改めて光を当てたい」情報提供呼びかけ

RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』のコメンテーター、神戸金史(かんべ・かねぶみ)解説委員のもとに、リスナーから段ボール3箱もの本が届いた。生まれ育った九州にこだわり、在野で鋭い筆を執ったノンフィクション作家・松下竜一の全集や初版本だった。命日(6月17日)を前に、松下が住んでいた大分県中津市を訪ねた神戸解説委員は「彼のドキュメンタリー作品を作ってみたい」と意欲を示し、松下に関するエピソードや映像・音声を持つ人たちに向けて情報の提供を呼びかけた。

 

社会活動で冷たい目が向けられた「模範青年」

松下竜一さん(1937~2004年)は作家であり、反原発などの社会運動にも取り組んで、「環境権」という言葉を使って戦った方です。亡くなって18年が経とうとしています。6月11日に大分県中津市のお墓に行って、松下さんをよく知る人と会ってきました。

 

松下さんは、中津市の豆腐屋さんに生まれ、体を悪くして進学を諦めて豆腐屋を継いでいます。いろいろな家庭問題がある中で、自分の気持ちを短歌にして表現を始めていきます。

泥のごとできそこないし豆腐投げ 怒れる夜のまだ明けざらん

青年の心の中に溜まっている、希望が叶わない悲しさを語っています。一方で、11歳年下の洋子さんに惚れ込んで、洋子さんが高校を卒業すると同時に結婚しています。

婚約の成りし部屋昏(く)れ 亡き母の針箱君に継がせんとす

相聞歌ですね。短歌、そして日常を淡々と紡いでいく「豆腐屋の四季」という本が大評判になった。テレビドラマ化され、緒方拳さんが演じています。松下さんとともに活動を続けてきた、梶原得三郎さんにお話を聞いてみました。

『豆腐屋の四季』がテレビドラマになったころは、「貧しさに耐えて、世の中にも文句を言うこともなく、黙々と真面目に働いている模範青年だ」と持ち上げられたんです。あちこちから「豆腐屋の歌人」として講演を頼まれたりして、「だんだん自分で嫌になった」と言っていました。世の中全体に目を向けることなく、要するに「分をわきまえて、置かれた立場で黙々と文句を言わずに働く、おとなしい青年」。これこそ国民の見本であるという見方・言い方が自分の周囲にいっぱい立ち込めているのを感じて、「つくづく嫌になった」と。

梶原さんは松下竜一さんと同年生まれで、いろいろな社会活動を共に進めてきた方です。福岡県豊前市の海を埋め立てて火力発電所を造る計画に反対した運動から、活動は大きく広がっていきます。模範青年だったはずが、「なんだ、お前は」と冷たい目にさらされていきます。

全集刊行のチラシに挙げられた3つの特徴

全集「松下竜一 その仕事」(河出書房新社、全30巻)のチラシで、刊行委員会が松下さんの3つの特徴を挙げていました。1つめは、「生活者の視点にこだわり続けている――」。2つめは「ノンフィクションというジャンルを拠点にしている――」。

彼の視線は、もっぱら、国家権力の持つ冷酷さ・陰惨さ、人間のエゴイズムの闇、自然と人間の共生のための戦いなど社会の最も本質的な部分に据えられている。(中略)国家権力に犯人としてレッテルを貼られた容疑者の無実の叫びなどを、純なまま再構築してみせるのだ。(全集刊行を知らせるチラシより)

なかなか採り上げにくいようなテーマも真正面から取り上げていたのが、松下竜一さんです。梶原さんはこうおっしゃっています。

松下さんがやってきたこと、考えてきたことの根底には、やっぱり人権というものがあるんです。「民主主義」と言われる中で、虐げられて、苦しめられて、人権を無視されている人たちがたくさんいるわけですから、「人権が侵されていることには黙っていないぞ」、と。全て通底していると思うんです、松下さんはいろいろなことをやりましたけど。

松下さんは先頭に立って運動を展開していたので、「強い男」「強硬な主張をする人」と後年は捉えられるようになったかもしれませんが、実際には弱い人たちへの共感の眼差しが強くあります。

全集のチラシにあった、3つめの特徴は「松下は、時代の傷を癒し、未来のへの希望を築くための『物語』を紡ぐ試みを続けている――」。松下さんは、1人1人に寄り添った主張を続けています。

 

現地でお会いした、もう1人の方は、市民運動を一緒に長く続けてこられた新木安利さん。松下さんの特徴の一つとして「小さくて弱い“あえか”なものへの眼差し」を挙げていました。「あえか」という言葉がよくわからなくて、辞書を引いてみると、「光や音など自然のものや、夢や希望などが、はかなげで美しいさま」。例文に「あえかに咲く花」が挙がっていて、「いい言葉だなー」と思いました。

ドキュメンタリー作品制作に向け情報提供呼びかけ

松下さんは、すごく誹謗中傷を受けてきた人です。まっすぐに社会に対して主張してきたので、真っ直ぐに批判を受ける。筋を曲げることなく、走った。そのことの善し悪しにはいろいろな意見があっていいと思っていますが、なぜ虐げられている人たちの立場に立とうとしたのか。なぜ嫌われてもあえてやろうとしたのか。改めて、見てみてもいいんじゃないでしょうか。

 

実は、「何らかのドキュメンタリー作品ができないかな」と思って、行ったんです。松下さんが生きてきた気持ちに、少しでも寄り添ってみたいな、と。18年前に亡くなっているので「番組にするのはなかなか難しいかな」とも思っているんですが、もしラジオを聴いてらっしゃる方で、「松下さんが映っている映像があるよ」とか、「こんな話を松下さんから聞いたことがある」というような情報があったら、教えていただけると非常にありがたいです。

 

情報提供は『田畑竜介 Grooooow Up』のメールgu@rkbr.jpまで。

SHARE
  • Twitter
  • Facebook
  • LINE

過去の放送内容

2022.11.24
  • 暮らし
  • ラジオ

番組SNS

  • Radiko
  • Twitter
  • Instagram
番組
SNS
  • Radiko
  • Twitter
  • Instagram