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伊那食品工業(かんてんぱぱ)

ラジオ祭り「さわやか信州」ブースに登場する企業の中から3つを、放送では駆け足で紹介しましたが、ブログではひとつずつご紹介していきますね。
まずは、伊那食品工業株式会社。『かんてんぱぱ』ブランドで知られる寒天のトップメーカーです。その独特の社風や経営理念から「後世に残したい会社」として本に書かれたり、マスコミに取り上げられたりしています。この会社の本社・工場が長野県の南のほう、伊那市にあるのです。中央アルプスと中央アルプスにはさまれた伊那谷エリアの自然に恵まれた森の中に、会社の施設と併せて、寒天を使った料理がいただけるレストランやカフェ、ショップ、ベリーガーデンや山野草園、芝生広場、さらに多目的ホールやフォトギャラリーなどがあります。それが「かんてんぱぱガーデン」。誰でも自由に過ごせるのです。あ、おいしい水も汲めましたねえ。もともと、伊那食品で働いている人のための憩いの場として、テニスコートやゴルフ練習グリーン、庭があったところに工場などを作り、本社・研究所が作られたそう。社員のために作られた最初の頃から、一般の人が誰でも自由に入れるようになっていたそうで…。そのガーデン内のレストラン「さつき亭」で、伊那食品工業(株)営業推進部課長の太田和也さんにお話をうかがいました。

私の一番の疑問は「海草が原料の寒天なのに、海から離れた…ってか、海のない長野県の会社がなぜトップメーカーなのか?」ということ。その答えは、信州の気候にありました。今でこそ工場内で生産されますが、昔は全て露天干しで作られていた寒天。その際に冬の寒さを利用したのだそうです。今で言う“フリーズドライ”を天然で行えたのが信州なのです。冬の気温が、朝はマイナス10℃からマイナス12℃まで下がり、昼はプラス5℃まで上がるのが、工場のある伊那谷や、ほかに諏訪谷、茅野といったエリア。昼の温度が上がって寒天が溶けることが絶対条件なので、寒すぎても雪が降りすぎてもダメなのだそう。この伊那谷は最適地だとか。現在は機械化されているので他の土地でも生産できるのですが、「この地で始まった仕事だから、伊那谷の雇用を守らなくてはいけない。また、この自然環境は何ものにも代えがたい。」ということから「移転しても意味がない」ときっぱりおっしゃいます。代表取締役会長の塚越寛さんは、「会社を通じて社会に貢献しなくてはならない。仕事・会社を通じて幸せにならなくては。真っ先にやらねばならないのは社員の幸せ。それから社員の家族の幸せ。さらに地域の方々の、そして取引先の方々の…と、幸せを追い求めていくのが企業の使命」だと、創業時からおっしゃっていたそうです。社員一人から始まる幸せリレーの原点なのですねえ。そう考えると、緑豊かな本社・研究所・工場というのもうなずけます。太田さんがさらに教えてくれました。「社員一人一人が満足して働ける、一人一人の幸せ度が上がることが会社の成長だと考えているので、一日の中で一番多い時間を過ごす会社の環境が一番いいという状態にすることが一番会社の成長だと考えているんですよ」と。確かに、本当に居心地のいい場所なんですよ。ここ。こういう良さって伝染しますよねえ。で、このガーデンはすべて、全社員さんが自分たちで毎朝掃除して、木の剪定などのスペシャルケアまで全て自分たちでなさっているそうです。取材の翌朝、ガーデン前を通ったら、ほんとにみなさん総出でお掃除してらっしゃいました。
伊那食品はずっとプラス成長を続けている稀有な企業です。数年前に寒天ブームがありましたが、あのブームを“歓迎できない状況だった”と考えてるような企業です。本で読んだのですが、少しずつ成長していくのが理想であって、極端な伸びは長く緩やかな成長の妨げにしかならない、という内容のことが書かれていました。当時、需要が多く、「長年の取引先に迷惑がかからないように(品薄で商品が足りず、みなさん仕入れに苦労されていたそう)、仕方なく増産した」と、そのあおりが翌年以降に出た、というようなことも書いてありました。太田さんにプラス成長のことについて伺うと「社員も、今日より明日、明日よりあさって…と、だんだんいい暮らしがしたいし、生活したい。そのためには、本人が満足する仕事をしないとどうしても実現できない。実現するためには、いかに効率よく仕事をするかと、各々が考えるようになる。そうすると会社というのは、ギシギシと管理しなくてもしっかり成長していくし、その分人もたくさん必要じゃなくなるんです。特に管理部門はかなり人を少なくできる…楽になるんです」と、おっしゃってました。で、ばしばしリストラしてるのかと思うと「私が中途入社して19年。その間に社員のクビをきったということは、ほとんどないと思います。知る限り、ほかの事をやりたいからとか家業を継ぐという理由の退社しかないですねえ」とのお答え。さらにすごいのは、年長社員さんの働き方。60歳定年ですが、65歳までは“シニア”としてそのままの職場で働けます。65歳を過ぎると、付属の農園で野菜や米を作る仕事に従事できます。収穫された野菜や米は、かんてんぱぱガーデン内のレストランで提供されています。つまり、OBがOBじゃないんです。もちろん、リタイア希望者は好きなところでOB生活に入れますが。
ガーデンを含めた緑化だけでなく、産業廃棄物の100%リサイクルなど環境に対する活動でも高い評価を得ている企業ですが、それは「寒天にとって環境が大事だから、私たちも環境を大事にするんです」とのことでした。寒天の原料は、テングサ、オゴノリ(刺身のつまについてくる青いほうの海藻)、紅藻類などで、世界中の海からやってきます。しかし、きれいな海でとれたものでないと使えないのだそう。これらの海藻の外の皮をむくと出てくる、中の寒天質が原料になるのですが、きたない海でとれた海藻は外の皮が分厚くて中が少なく、効率が悪すぎて使えないのだそう。そうか。海を作るのは森って言いますもんねえ。納得。
ところで、食べる以外に寒天が使われるものとして、化粧品のファンデーションや口紅があるんですって!“落ちにくい”がウリのタイプには結構使われているそう。カンテンには保湿性があるので、肌に潤いが与えられるということで。あと、医薬用のソフトカプセルの原料とか。寒天の難消化性と食物繊維がいい働きをするのだそうです。体温で溶けないし、胃酸でも溶けません。小腸の酵素でやっとバラけて薬効成分が出てきます。よって必要量の薬剤ですむので副作用も少ない、となるのだそうです。
そんな話を聞いて、「さつき亭」のお料理をいただくと、おいしさもひとしおです。いただいたのは、寒天入りオリジナルソースにくぐらせたソースカツ丼(駒ヶ根名物)と寒天麺のセット。そして、デザートの杏仁豆腐、みつ豆、クリームあんみつ。いずれも寒天入り。

ラジオ祭りでも、おいしいかんてんぱぱブランドの製品が登場すること間違いなし。私のお気に入りはドレッシングと寒天ぞうすい(お湯を注いで2分待つだけ)。「さわやか信州」ブースでお待ちしております。
○かんてんぱぱ(伊那食品工業) → http://www.kantenpp.co.jp/index.html

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