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斬新!そうめん料理を世界へ

ビジネス
殿村高平さん(47)は、長崎県南島原市の手延べそうめんの会社、山一の社長だ。島原半島のそうめんの歴史は370年以上あるが、夏のイメージが強く、売り上げはなかなか伸びていない。これを何とかしたいと、地元の農業高校生と4年前に共同開発したのが「スープ生姜めん」。これが、日本学校農業クラブ全国大会で最優秀賞と農林水産大臣賞を受賞し、シリーズ化され企画は大ヒット。開発を担当した卒業生が2人、山一に入社し新商品の開発にも参加している。

そうめんをもっとポピュラーにしたいと開店した“そうめんカフェ”でも、創作メニューが人気を呼んでいる。海外でも話題だ。シンガポールのマリナ・ベイ・サンズにある和食レストランでは、山一のそうめんがコース料理に使われている。また、同じシンガポールの高島屋でも取り扱われ、折からの日本食ブームにものって話題だ。

その評判を、イタリアの有名なデザイン会社『ベルトーネ』のCEOが耳にし、わざわざ日本に来たときに試食までした。「こんな麺は食べたことがない!」と大絶賛。来年開催のミラノ万博で紹介することになった。次なる一手は『ライト・ラーメン』。いったいどんな“そうめん”料理なのか!?
<取材先データ>
◎株式会社 山一
長崎県南島原市布津町丙1763-1
0957-65-1110◎そうめんカフェ 一高本舗
長崎県南島原市深江町丁4615-2
0957-72-7119

取材後記

手延べそうめんを作って42年になる山一(長崎県南島原市)が、そうめんカフェ(同市)をオープンしたのは6年前。“そうめん料理ってこんなにバリエーションがあるんだよ”って知ってほしいという思いからでした。実際、メニューに載っているものはすべて食べました。そうめんの茹でる時間は、料理によって1分半から2分。絶妙の茹で加減で出てくるコシの強いそうめん料理は驚くほどおいしいものばかりでした(お愛想で言っているのではありません)。本当に斬新で、これまでのそうめんの常識を覆すものです。これは実際に食べた取材スタッフ全員の意見で、後日、家族を連れてプライベートで行ったスタッフもいるくらいです。季節に合わせてメニューはどんどん替っていくし、麺も選べるし、毎回違うバリエーションが楽しめます。この味が、現在南島原でしか味わえないのが残念です。

この常識にとらわれない発想は、地元の高校生たちの発想に触発されたものかもしれません。県立島原農業高校生たちと共同開発した4種類のインスタントの『スープそうめん』シリーズ(H22~25)。最初に発売されたのは『スープしょうが麺』。生姜を練りこんだそうめんをチキンコンソメスープ食べるというもの。社長や地元のそうめん業界は、この商品に非常に驚いたそうです。そうめんを“コンソメスープ”で!? という発想がそれまで、まったくなかったからです。以降シリーズは大ヒット商品となります。それに刺激されたのか、そうめんカフェでも、料理のジャンルを超えあらゆる組み合わせで試してきたようです。また、開発に参加した農業高校生の内、2人の卒業生が山一に入社。今も、製造や開発で活躍しているのは頼もしい限りです。

“そうめん”という名称にもこだわっていません!『ライト・ラーメン』は、そんな殿村社長の思いから創作中のそうめん料理です。世界でラーメンは知っていても“そうめん”は誰も知らないからです。そうめんがラーメンだろうがパスタであろうが、結局、“おいしい麺だ”と思ってもらえばいいわけです。イタリアには、そうめんという麺がありませんし、知る人はいません。だから、“新しい”パスタの一種として、ミラノ万博(来年5月~10月開催)で試食してもらう予定です。この万博には、南島原から麺職人歴60年以上の職人さんに同行してもらうことも考えている社長です。イタリア人は、実演販売が大好きな国民らしいのです。
“手延べ麺”という手法には、頑固にこだわりながら、斬新なそうめん料理を創作していくその柔軟な発想。地域の伝統と歴史を守り、若い力の発想を生かして、独自の展開をすすめる山一は、今後目の離せない会社です。

NBC 長崎放送 中原 暎二

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