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真の技を継ぐ大川組子

家具の生産量日本一の福岡県大川市に300年の伝統を持つ大川組子。中でも仁田原進一さん(58)は2人の息子の辰宏さん(32)・進二さん(30)とともに本物を追求する組子職人として知られる。

組子の基本は三角形の地組だが、中の図柄は百花繚乱。繊細な意匠のひとつひとつが集まってできる建具には、無限の宇宙が宿っているかのようだ。杉やヒノキの木片は繊細に削られ、かつ木の皮一枚残して、一つにつながったまま折り曲げられる。釘を一切使わず、多い時には数万個の木片を、ミクロン単位の誤差もなく複雑に組み上げるのは超高度な技術だ。木片に三組手(みつくで)、ホゾなどの切込み入れ、互いに組み合わせることで強度も出るということだ。曲線さえも自由に操り表現する作品は光で陰影がつき美の極致だ。

今回、熊本地震を乗り越えて春オープンする旅館「源翠瓏」に組子建具を納めた。レストラン棟の8面の戸は壁画のようで圧倒的な迫力だ。しろうとには一見区別がつかない細部にこそ本物と偽物の違いがでるという。後世に恥じない作品作りに努力を惜しまない大川組子職人親子の挑戦を追った。
■取材先
会社名:仁田原建具製作所
住所:831-0005 福岡県大川市向島916-3
電話・FAX:0944-86-4302

取材後記

300年以上の伝統を持つ組子は全国に職人がいますが、さすがは家具の生産量日本一の福岡県大川市の組子職人。厳しい淘汰を生き抜いてきた真の技を持っていました。六角形の地組を基本に釘を使わないで作られた様々な図案の美しさやそれが何百と連なった迫力、陰影の不思議は見事です。

さらに、手間を惜しまず極限まで追い求める仁田原親子の作品は他とは次元が違うレベルの非常に高いものでした。小さな木片を数十個、半分重ねて接着剤で張り合わせているように見えて実は一本のつながった木から削り出しでいるとか、見ただけではわからない細かな丁寧な細工に舌を巻きました。

逆に、だからこそしっかり見る人には深い感動を伝える職人の技と心意気が伝わってきました。今回の取材も、組子の本当の魅力やすばらしさを多くの人に知ってもらいたいという仁田原さんの気持ちがあったからこそ、超高度な技も親切に見せていただきました。本物だけが持つ気品と美しさを折に触れ組子と接する機会があった時に確かめてみたいと思いました。

担当:RKB毎日放送 山田 尚

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